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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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蛇の道は蛇Ⅳ

 地面へと視線を落としていたソフィに、遠くからマリーの声が届く。


「おーい。何してんだー? さっさと行こうぜー」


 その声にはっと顔を上げると全員が振り返って、ソフィを待っていた。

 ウンディーネとして近くにいたというのに、何故か何年も会っていなかったかのように感じる。


「友達がお呼びですよ。行ってあげてください」


 ティターニアは微笑みながらソフィの背中を押す。


「そうですけど……ティターニアさんがいないと、ここから出られないですから、一緒に行きましょう」

「あらら、そうでしたね。すっかり忘れてました。でも、まずは一足先に行ってあげてください。彼女もそれを望んでいそうです」


 そう言われてソフィは顔をキョトンとさせるが、ティターニアが言わんとしていることを理解して頷いた。

 自分の一番のお友達。それは時が過ぎても変わりはしない。ソフィはマリーの下へと一目散に駆けだした。





「いいのー? 行かせちゃってー?」


 近くを飛んでいた妖精の一人が見送るティターニアへと問う。

 それにティターニアは嬉しさと寂しさの両方が混ざった表情を浮かべた。笑顔で迎えるマリーと抱きしめられるソフィ。その姿を見届けて一歩踏み出す。


「子供はいずれ親の元を去る。それは私が保護していた子供たちも同じこと。その時が来たまでです」

「もっと遊びたかったー」

「次はいつ会えるのー?」


 他にも何人もの妖精が周りを飛びながら残念そうに呟く。

 まるで久しぶりに出会った親戚が帰る時の子供たちの反応だ。人間の生活にほとんど触れたことがない妖精たちであっても考えることは同じようで、ティターニアはどう返答すれば妖精たちが静かになるか考える。

 そんな彼女がユーキたちの近くに進んで行くとソフィが振り返った。


「大丈夫です。またいつか会える時が来ます」


 ソフィに未来予知の力はない。それでも彼女は確信していた。

 生きてさえいれば、例え忘れていても会いたいと思った人に必ず出会えるということを知ったから。


「そうですね。あなたが言うなら、間違いありません。それまで私たちは気長に待つとしましょう」

「では、ティターニア殿。お疲れのところ申し訳ありませんが、外への案内をお願いしてもよろしいですか?」

「もちろんです。少し力を使い過ぎたので徒歩の移動になりますが、大丈夫ですか?」


 そう言われてアンディは一度、全員の顔を見渡して頷いた。


「大丈夫です。よろしくお願いします」

「そうですか。それでは、ついて来てください」


 ティターニアの後ろをアンディが進み、すぐに動けないフェイやユーキ、マリーたちを囲むように騎士が配置される。最後尾にはフランやメリッサが来ていたが、騎士がその後ろに来ることはなかった。


「メリッサさん、後ろで大丈夫ですか?」

「はい。むしろ私にとってはこの方が後ろの気配を感じ取りやすいのでありがたいです」

「メリッサさんって、メイドさんですよね?」

「もちろんです。この姿を見てメイド以外の何と仰るのですか?」


 先程の戦闘を見られても白々しくメイドであると宣う姿に、フランの口からは乾いた笑いしか出てこなかった。

 間違っても暗殺者なんて言葉を口にしてしまったらどうなることか。冒険の最中に冒険をすることなかれ、とは冒険者ギルドで真っ先に言われる言葉であったが、まさかただの会話でそれを想起しそうになるとはフラン自身思ってもいなかっただろう。


「フランさん。女性の秘密には同性であっても軽々しく踏み入ってはいけませんよ。さもないと――――」

「――――さもないと?」


 ハシシや肉塊と戦闘を繰り広げた時と同じくらいの威圧感を受け、フランは僅かにメリッサから距離を取る。目を細めたメリッサは、数秒間歩きながらまっすぐ前だけを見ながら歩くと、軽く吹き出して笑いだした。


「――――冗談ですよ。ただ、伯爵から護身・護衛用にと教えてもらっていただけの技です。大したものではありません」

「な、なーんだ。てっきり私、アサシンギルドとかの方かと思っちゃいました」

「本職の方は、そもそも私の様に堂々と表を出歩かないでしょうから」


 緩くなった空気にフランは危ないキーワードを口走るが、メリッサは気を悪くすることなく笑顔で返答する。そんな楽しそうな笑い声が後ろから聞こえてきたからか、前の方も少しずつ緊張が取れ、行きとは反対で暖かな雰囲気に包まれ始めた。

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