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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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蛇の道は蛇Ⅲ

 ユーキはティターニアに言われたことを理解できていなかった。

 ただ、その言葉にどこか体が軽くなったように感じた。


「一体、どういうこと――――」

「――――いずれわかる時が来ます。それまで、自分を大切にしてあげてください」


 問いかけてもティターニアは話をはぐらかしてしまう。呆然としながらも、ユーキはすぐに我に返った。今はサクラやアイリスを妖精庭園の外に運ぶのが先だ。

 ユーキはサクラへと手を差し出そうとして、その先にある彼女の表情に一瞬びくっと肩を跳ね上げる。


「むー……」


 怒っているというわけではないが、どこか不機嫌そうな顔でユーキを見つめていた。


「サクラさん。何か、怒ってらっしゃいます……?」

「怒って、ない……」


 どうやら、サクラ自身もどういう感情なのか整理できていないようで、ユーキに言われてジト目だった目がぱっちりと開かれる。何度か瞬きを繰り返すと、青白かった頬にやや赤みが指す。


「ユーキ、とりあえず僕はアイリスを運ぶ。サクラさんのことは任せるぞ」

「お、おう……。ってことでサクラ。来れるか?」


 お姫様抱っこでアイリスを抱き上げたフェイに促されるまま、ユーキはサクラへと背を向ける。学園のダンジョンで一度背負っているので、気絶されているよりは運びやすい。

 しかし、向けられた背に対し、サクラはぼそりと呟く。


「私は背中なんだ」

「え? なんか言ったか?」

「ううん、なんでもない。もう少し、こっちに寄ってくれる?」


 近寄ったユーキの首へと腕を回す。交差して、首に触れる瞬間、その腕が躊躇したように止まる。ユーキが不思議そうにサクラへと顔を半分向けると、そのままキュッと絞められた。


「ぐえっ!?」

「おいおい、ユーキ。しっかり持ってやれよ」

「しま、締まってる!」


 腕を何度か叩くことで解放されたユーキは、前のめりに倒れそうになる。肩で息をしていると、その背中にサクラがもたれ掛かった。


「やっぱり、怒ってる?」

「何のことかな?」

「絶対、怒ってるって……」


 これ以上、詮索をするともっと酷い目に遭いそうな予感がしたユーキは、表情を強張らせながらサクラを背負う。背中に感じる膨らみに鼓動を逸らせてしまうことに罪悪感を感じるも、それを無視してサクラへと声をかけた。


「サクラ。どこか痛かったり、苦しかったりしないか?」


 緊張してしまい、自分が変な持ち方をしていないか問うが、背中から返答はない。

 微かな振動から生きているのはわかっても心配になってしまう。


「サクラ……?」

「安心したのか、眠ってしまったみたいですね。大きな傷とかもないので、気にしなくても大丈夫ですよ」


 フランに促されて、ユーキは納得して前へと足を進める。その先にはアンディやフェイ、騎士の人たちが待っていた。声を聞く限り、どうやらティターニアを先頭に道案内をしてもらう予定らしい。





 道案内を行うティターニアはソフィと話をしていた。


「大妖精であるあなたがわかって、何故、私にはわからないのでしょう?」


 ユーキの背中を見送りながらソフィは純粋な好奇心として問いを発した。それに対してティターニアは一瞬考える素振りを見せた後、ソフィに微笑んだ。


「そうですね……。私は妖精で、精霊であったあなたには力で劣るでしょう。しかし、生きた年月は私の方が上です。年を重ねることでしか理解できないものもあるということでしょうね」

「そうですか。残念です。ユーキさんの力になれるかと思ったのですが」

「その気持ちがあれば十分ですよ」


 そう呟いたティターニアはソフィの前に進み出ると真正面から見つめた。ソフィもまた、その真剣な表情を見つめ返す。


「保護するためとはいえ、あなたをずっとここに縛り付けてしまいました。事故とはいえ、あなたの人間としての力も少しばかり吸収していたことも謝罪させてください」

「いえ、気にしないでください。もし、ここで私の体が保護されていなければ、きっと私は水精霊として、自分が何者かも思い出せずに世界を彷徨い続けていたでしょう」


 ソフィの脳裏に祖父であるルーカスの顔が浮かぶ。

 水精霊として会った時は、精霊の知識として人である祖父を疑ってしまった。偉大な魔法使いである祖父であれば、もしかしたら自分が孫であることに気付いていたに違いない。それにも拘わらず、祖父は笑顔で見送った。

 ティターニア越しに見えるユーキとサクラの姿が、どこか遠い昔に背負われていた自分を重ねてしまう。


 ――――早く、王都へと戻ってルーカスと話をしなければ。


 その想いが胸を満たすどころか、溢れそうで仕方なかった。

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