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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第2巻 漆黒を歩む者

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食卓の剣劇Ⅰ

さて、活動再開します。前ほど早くはありませんが、よろしくお願いします。

 伯爵の指示に従い、ユーキが迎えを待っていると。アンディではなくフェイが宿を訪れた。

 アンディ曰く、「同年代で仲良く来るといい」とのことだそうだ。フェイ自身は道を探しながらだったので、迷惑もいいところだろう。

 それでも、会場にはしっかりと時間前に到着したあたりにフェイの真面目さが表れている。


「それじゃ、僕は一度失礼するよ。中にいればそのうち始まるから」


 ユーキを広間に案内したフェイは、入ってきた扉を戻りどこかに行ってしまった。ユーキは手持ち無沙汰になって辺りを見回す。特に豪華な装飾はされていないが、壁などに飾り付けられた剣や盾などから威圧感のようなものを感じた。


(伯爵が使い続けてきたものかどうかはわからないが、年季が入ってそうだなぁ)


 なんとなく、そんなことを考えながら目を部屋の中央に向ける。既に長机の燭台には火が灯り、料理の準備が進められている。長いテーブルの先には主が座る席があり、質素ながらも威厳のある装飾が施されていた。


(さすがは伯爵。俺みたいな一般庶民には縁のない場所だから――――居心地が悪い)


 メイドや執事のような人々が行き交う中で邪魔にならないように扉の側の壁に寄り掛かって苦笑する。時折、メイドが席へ案内しようと声をかけてくるが、手を顔の前で振って遠慮した。正直なところ、ユーキとしては一人でこんなところに座らせされていたら、落ち着かないなんてものではない。


「お、ユーキは来てたか。早いな」


 呼ばれて振り返るとマリーが立っていた。ユーキは挨拶を返そうとして、言葉に詰まってしまう。


「な、なんだよ。その顔は?」


 何も言わず見ているユーキに不安に思ったのか、マリーが眉をしかめる。ユーキの視線はマリーの服へと注がれていた。

 普段見慣れている魔法学園の制服ではなく、ドレスを着ていた。この部屋と同じように豪華な装飾とは言えないが、それでも十分マリーの魅力を引き立てているといっていい。

 真紅のドレスに簡素なレースをあしらっているが、同じ赤系統でもマリーの髪ほどに鮮やかな色ではない。だからこそ、マリーの髪の色をより引き立てているとも言える。


「いや、普段と違うマリーに少し驚いただけだよ。よく似合ってる」

「へへっ、そんなこと言っても何もやらないぜ。それに着飾ってきたのは、当然、あたしだけじゃないからな」

「ん? それは、どういう……」


 ユーキの言葉は、マリーの後ろを親指で指し示す形で止められた。その視線の先を追うとアイリスとサクラがこちらに来るところだった。


「ん。着てきた」

「えーと、その、大丈夫かな?」


 アイリスとサクラは、それぞれ水色と桃色のドレスを着飾っている。装飾はほぼマリーのものと一緒だ。

 アイリスはトテトテと可愛らしく歩き、サクラは周囲の目を気にするように恐る恐る進んでくる。三人が同じ場に揃うと、ユーキは思わず感嘆の声を上げた。三人それぞれのタイプが違うせいか、各人の個性がより際立っている。

 もし、学園の男たちがユーキを見たら両手に花どころかお花畑にすら見えただろう。それほどに彼女たちは輝いて見える存在と化していた。


「ほら、ユーキ。見惚れてないで何か言ってやれよ」

「あ、そ、そうだな。――――二人ともよく似合ってるよ」


 マリーに促されて言葉を出すが、若干の緊張と放心状態にあったせいで上手く言葉が紡ぎだせなかった。その言葉を聞くとアイリスもサクラも少しばかり顔が赤くなったように見えた。


「うん。ありがとう。サクラと一緒に、マリーの昔の服を貸してもらったけど、とてもいい服」


 アイリスは両手でスカートを摘まんで揺らす。おもむろに一回転すると、スカートが大きく舞い上がった。


「私、こんな立派な服なんて着たことないから少し恥ずかしくて……。でも、ユーキさんが褒めてくれたから、ちょっとだけど自信がもてたかも。ありがとう」


 一方、サクラは両手の人差し指を合わせて目を泳がせる。どうやら、まだ恥ずかしさは抜けていないようだ。


「前に来た時にこういう服着ようって約束したんだ。まぁ、あたしのだからサイズが若干あってないかもしれないけど、良く似合ってるって」


 マリーは後ろから二人の肩に手を回して笑う。そのまま、ユーキの方を向いてニヤッと口角を釣り上げた。微妙に目が意地悪そうな光を宿している。


「こうしてユーキを驚かせることにも成功したんだ。ただ着るよりも面白くなったじゃん」


 そういうとサクラも少しだけ頬から力が抜けた笑顔を浮かべた。その顔に思わずアイリスとユーキも微笑む。


「さて、騎士の人たちは、こっちに向かってたから、後は父さんとアンディ。学園長とフェイが来れば食事ができる。こんな所に突っ立ってないで座ろうぜ!」


 マリーは宣言するや否や、アイリスとサクラの手を引っ張って歩く。アイリスとサクラが足をもつれさせながら慌ててついていくのを見て、その後ろを苦笑しながらユーキも歩いた。


「さて、この後、普通に食事ができればいいんだけれど」


 ほんの少しだけ、ローレンス伯爵のデタラメ具合が心配になるユーキではあった。だが、マリーもいるから大丈夫だと言い聞かせる。ふと前を見ると、マリーがサクラの正面を指差すので、そちら側へと回り込む。


「ごめん。あたしの横に座らせようものなら、父さんが暴れちゃうから許してくれ」

「確かにそれは困る。まぁ、招待された側だからなにも文句はないよ」


 そう告げて、示されたサクラの隣へと座る。真ん中に伯爵、向かって右側にマリー、サクラ、アンディ。左側にアイリス、ユーキ。恐らくユーキの右側にはフェイが座るのだろう。

 残りの人が来るのを談笑して待とうとしていると、騎士の人たちが入ってくるのが見えた。

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