表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

556/2419

再戦Ⅴ

 ソフィが手を翳すと水がクロウの体を包み、燻っていた炎を鎮火する。白煙が上がり、水が蒸発する音が響く。

 何とかしてクロウを助け起こしたい気持ちにはなるのだが、そのような余裕はユーキにはなかった。

 魔法を使っていないアンディ、フェイ、メリッサも炎の中から飛んでくるナイフを弾き飛ばすので精いっぱいだ。一人でも欠ければ、全員を守りきることはできない。


「厄介ですね。どこに飛んでくるかわからない」

「おまけに、一撃一撃が重い。本当にナイフなのかっ!?」


 高速で飛来するナイフに、圧倒的に質量で勝るはずの剣が衝撃で吹き飛びそうになる。加えて、相手の投げるモーションが見えないため、一瞬の油断も許されない。明らかに優勢なはずなのに追い詰められている気分にすらなってしまう。


「ユーキ、君は何してるんだ! ガンドさえ撃てば多少は――――」

「――――わかってる!」


 未だにユーキはガンドを撃たずに構えているだけだった。

 どう目を凝らしても、魔眼を開いても炎の中のハシシの姿が捉えられない。連射できる数に限りがある中、無駄撃ちは避けなければならない。最初の一発くらいは当てる余裕があったかもしれないが、その前に一瞬だけ迷ってしまった。


 ――――本当にガンドを撃って大丈夫なのか、と。


 今まで何度も放ってきて、特に問題はなかったはずだ。それがわかっていても、どこかで躊躇する自分がいて、ユーキは構えたまま動けずにいた。

 せめて、一撃の威力を上げて再生を遅らせようと魔力を注ぎ込む。当然、それにも限界は存在していた。これ以上、注ぎ込めばその場で破裂しかねない不安定な脈動を指先から感じる。

 冷や汗が頬を滴り落ち、いつの間にか頭痛が拍動に合わせてこめかみを駆け抜けていた。視界の片隅で、()()()()()がちらつき始める。

 頭の先から不意にふっと感覚が消える。最初に温度が消え、空気が消え、そして鼓動すら消え失せた。時が止まったかのように錯覚する中、炎だけが揺らめいている。

 その炎の中から二本のナイフが飛び出て、それを払い落とそうとアンディとフェイが動いた。意識がナイフへと向いた瞬間、大きな影が炎の中から浮かび上がる。


「――――させませんっ!」


 腕を十字に交差しながら飛び出てきたハシシに、メリッサのナイフが襲い掛かる。左右の手から三本ずつの計六本が迎撃に向かうが、その内二本は地面に、二本は足に、二本は腕へと突き刺さった。

 焼けて炭化していると言い切ってもいい腕が、ナイフごとボロリと抉れ落ちる。動かせることが不思議な足を踏み出し、接近してきた。

 腕の隙間から覗く顔はもはや人とは思えぬ様相を呈しており、前が見えているかどうかすら怪しい。事実、今までは攻撃で危機感を感じさせたマリーへと一直線に向かっていたハシシが進路を逸れて、アイリスへと突進していく。


「くそっ! 止まりやがれ!」


 後先考えずにマリーは魔力を注ぎ込むと、杖先から出ていた炎の色が白く輝き始める。それを受けたハシシの残った腕も徐々に形を失っていく。

 せめて後十秒、否、数秒あればその勢いを止めることも可能だったかもしれない。だが、あまりにも近付かれ過ぎた。既に距離は五メートルを切り、その数秒を待たずしてアイリスの頭を打ち砕くだろう。

 万事休すかに思われたが、まだここにはユーキ以外にハシシへと技を繰り出していない人物が一人いた。


「吹き飛んで!」


 ソフィの展開した無数の水球が青い光の尾を引いて放たれると、ハシシの腹に直撃して爆発する。猪を思わせるような突進も、成すすべなく後ろへと弾き飛ばされる。


「気を付けてください。濡れたせいで火魔法が効き辛くなっています」

「助かったぜ。あのままだったら、みんなやられてた」


 マリーがサムズアップしながら魔法の詠唱を始める。唱えるのは土魔法だ。確実にハシシの体を抉り抜くつもりなのだろう。それを察して、サクラやアイリスも魔法を切り替えた。


「わ、私には、これしかできませんから……」


 フランだけは火魔法しか使えないため、ひたすらマシンガンの様に火球をハシシへと撃ち続ける。

 過剰に込められた魔力が期せずして爆発を巻き起こし、更にハシシを後ろへと押しのける――――かに見えた。


「なっ!?」


 大きく仰け反ったハシシの体がばねでもついていたかのように急に前傾姿勢となり、獣の如く低い姿勢で飛び出した。地面は抉れ、あまりの早さに触れてもいない草花が宙を舞った。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ