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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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失踪Ⅲ

データが消えていたーーーーーーーー。もし、次の話と整合性が取れていなかったら(直したつもりですが)ごめんなさい。

 優しく見つめるティターニアの前に、クロウが今度は進み出る。


「すまない。こちらも疲れている。立ち話をするのもいいが、どこかで休ませてもらいたい」

「そうですか。それでは、こちらへどうぞ。人の足だと十分くらいで辿り着けるところでゆっくりできる場所がありますので」


 そう言うとティターニアは、透明な羽を羽ばたかせて体を浮かせる。


「うわぁ、ちょっとあれ良いな……。私もやってみたい」

「やめておけ。ここに来るまでに言った通り、力加減を間違えた妖精に打ち上げられかねんぞ」

「うっ……」


 目をキラキラさせるサクラにクロウが釘を刺す。

 誰もが足に疲労が蓄積していたが、最後の一頑張りとティターニアの招く方へと向かって進み始めた。アンディは先頭を二名の騎士に任せ、クロウと並んでハシシの警戒。残った騎士の内、ハシシに吹き飛ばされた二名が復讐とばかりに足を掴んで引きずる。


「大丈夫ですか?」


 心配するフランに騎士たちは、笑顔で頷く。


「任せてください。あばらが数本逝ってるかもしれませんが、伯爵の扱きに比べればまだまだです」

「――――あんたら、普段どんな訓練してんだ」


 クロウがハシシを見張りながら、ドン引きする。

 そんな中でフェイがクロウの所へ近寄ってきた。その後ろにはフランやマリーといった他のメンバーもいる。


「何だ?」

「僕たちの目的はユーキを確保したことで、ほぼ完遂できた。感謝する。後はクロウ、あなたの目的だ。僕たちに手伝えることは?」


 捲し立てるように話したフェイ。その様子はどう見ても緊張しているようにしか見えなかった。

 再び、何か考え込んだクロウ。十秒ほどかけて悩んだ結果、首を振った。


「いや、特にないな。それにここに俺の目的のものが確実にあるというわけではない。それに本来、俺たちは敵同士。あまり馴れ合わない方がいい」

「じゃあ、さっきの約束通り。父の居場所を教えてもらってもいいですか?」

「……俺の話を聞いていたか?」


 いつの間にかクロウを挟んで、フェイの反対側に並んでいたフランのぐいぐいくる様子に、思わず頭を抱えるクロウ。

 しかし、約束したのは自分自身だ。それは否定できない事実。仕方ないと言わんばかりに、ため息交じりで答え始めた。


「俺のアジトにいる。どこかは言えないが」

「無事なんですね?」

「わからん。が、生きているのは確かだ。少なくとも、我々の組織は殺すつもりも実験動物にするつもりも毛頭ない」


 その言葉に安心したのか。フランが膝から崩れ落ちる。慌てて、クロウが腕を取り支える。


「おい、こんなところで座り込むな」

「その、ほっとしたら腰が抜けちゃって……」

「くっ……おい、お前。足腰の鍛錬にはちょうどいいだろ。背負ってやれ」

「え? 俺!?」


 急に指名されたユーキはびくりと肩を震わせる。

 そんなユーキのフォロー――――というよりは面白半分だろうが――――マリーがクロウに笑いながら言い返す。


「でも、原因はあんたにあるんだから、あんたが背負うべきだとあたしは思うんだけどなぁ」

「マリー、あんた命知らずにもほどがあるんじゃない?」


 クレアが止めに入るが、アイリスがマリーの言葉を引き継ぐ。


「フラン。ユーキとクロウ、どっちがいい?」


 選択を迫られたフランだったが、意外にもフランはクロウの方を見つめた。

 流石に焦る様子を見せるかと思ったが、それを見つめ返すようにクロウもまた動かない。


「一応聞くが、何故だ」

「えっと、ユーキさんに背負われる可能性って、これからもあると思うんですけど、クロウさんに背負われる可能性って限りなくゼロに近いですよね。だったら、今の内に経験しておいた方がいいかなって?」


 その理由にはクロウだけでなく。周りの他のメンバーも唖然とする。

 だが、意外なことにそれに真っ先に納得したのはクロウ自身だった。


「……そうか、わかった。さっさと乗れ」


 そう言うや否や、フランの前で屈んで背を差し出す。

 両手が肩を超えるのを確認して、彼は一気に両足をもって引き上げて歩き出した。


「まったく、これだから商人は……。だいたい、俺はお前の親を攫った男だぞ。どこに信用できる要素があるのかさっぱりだ。因みに言っておくが、そこの気絶している男は、お前の伯父の事件とは無関係だからな」

「えぇ、私が本気になるために嘘をついたんでしょう? 冷静になって考えれば、それくらいわかります」

「……面倒な親子だ」


 その愚痴を聞いて、フランは嬉しそうに微笑んだ。

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