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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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失踪Ⅱ

 杖を嬉しそうに撫でるクレアを尻目に、ティターニアは一度姿勢を正して、全員の前に立って礼をする。


「挨拶が遅れました。我が妖精庭園へようこそ。私はここの主である大妖精、ティターニア。ホットスプリングスのティターニア。どうぞよろしくお願いいたしますわ」

「ご、ご丁寧にどうも」


 慌ててユーキたちも姿勢を正して相対する。一通り自分たちも名前を名乗るのだが、ここで全員が気になっていたのは月の八咫烏。正直、どのように名前を呼んでいいか悩んでいたところだ。


「月の八咫烏だ。こちらの者では言いにくいだろう。クロウと呼んでくれればいい」

「何だよ。意外と安直じゃん」

「ここで本名名乗る方がおかしいでしょう?」


 マリーとサクラがひそひそと話す。それが聞こえているのかいないのか、月の八咫烏改めクロウは不機嫌そうに鼻を鳴らした。


「本来ならば、侵入者として追い出すところですが、命を救っていただいた恩人にそのようなことはできません。よろしければ、ここでゆっくりしていかれてはどうですか?」

「あー、嬉しくはあるのですが……」

「ここに七日以上いると出られなくなる、というお話を聞いたのですが、本当ですか?」


 心配になったフランが恐る恐る手を挙げて問いただす。

 先程は伯父の仇と大興奮だったのに、瀕死のハシシの様子を目の前で見て放心――――むしろ気絶に近い――――状態だったフラン。ようやく、意識が元に戻り始めたのだろう。問題となる七日ルールは存在するのかについて酷く怯えている。


「そうですね。長いことここにいると出にくいというのは確かですが、そのようなことはありません。みなさんが望むのならば、いつでもご案内します」

「よ、良かったぁ」


 ほっと胸を撫で下ろすフランだったが、ふと周りを見回すとマリーと目が合った。

 その表情は戸惑い、或いは好奇心の色が見える。


「ど、どうかしました?」

「いや、よく考えてみれば、月の――――いや、あのクロウって、フランの父さん攫った犯人だよな。よく、さっきの発言信じられたと思ってさ」

「あー、それですか……」


 うーん、と唸った後、ちらりとクロウを盗み見る。

 相変わらず仮面の下の表情は伺えず、何を考えているかわからない。先程と違うのは出血が止まったため、仮面を濡らす血が固まり黒く変色を始めているくらいだ。


「……声、ですかね」

「は? 声?」

「はい、声です。みなさんはどう思われるかわかりませんが、私にとっては信用できる声なんです」


 呆然とするマリーは横にいたアイリスに振り返る。


「なぁ、アイリス。どう思う?」

「どう思うも何も……フランは騙されやすい。きっと将来、悪い男に引っ掛かる、かも」

「だよなぁ」

「ひ、酷いですよ。二人とも」

「まぁまぁ、落ち着いてフランさん。まだ、ここが安全と決まったわけじゃないし、騒ぐと迷惑になっちゃう」


 流石にサクラが止めに入るが、三人の方は止まる様子がない。その姿を見て、ティターニアはまるで保護者の様に微笑む。


「……楽しそうですね」

「申し訳ありません」

「いえ、安心しました。迷子だった子があんなにも笑えるようになっているとは思わなかったので。きっと、良い人たちと過ごせたのですね」


 ――――迷子。


 また、出てきたその単語にユーキが反応する。


「そういえば、ここにいる時にも何度か聞いたんですが、迷子って何ですか? それに俺に魔法を使うなっていう話も、どんな意味か聞きたいんですけど」


 クレアとマリーが見た幽霊は十中八九目の前にいるティターニアだ。会話の流れからすると、最低でもマリーとユーキに共通する何かが迷子と呼ばれている要因となっている。


「そうですね。人間の言葉で伝えようとすると非常に難しいですね。『大切なものを失って絶望している人』というのが一番近いでしょうか」

「大切な、もの?」

「えぇ、何か心当たりはありませんか?」


 ユーキが真っ先に浮かぶのは、元の世界のことだ。この場合、まさしく文字通りの迷子に違いない。帰るべき居場所を失っているのだから。

 では、マリーの場合、何を失ったというのだろう。疑問に思っているとメリッサが進み出た。


「マリー様は、その失ったことそのものをお忘れになっています。できれば、触れないで頂きたい」

「そう……忘却もまた人を癒す。時の流れは残酷だけれど、その分、優しくもありますから」

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