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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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凱旋の一歩Ⅵ

 その後は比較的和やかなムードで会話が弾む中、御者台の方からフェイが声をかけてきた。


「一度休憩を取ります。何かある場合は、お知らせください」

「じゃあ、ちょっとお花摘みに」

「あ、私も」


 次々に女性陣が消えていく中、ユーキは馬車を降りて背伸びした。

 いくら、快適になるように魔法が幾重にもかけられているとはいえ、同じ姿勢で座っているのは難しい。

 背骨や肩から小気味よく音が鳴り響くのを感じながら、青空を見上げる。大きな雲が空をゆっくりと流れていき、肌を刺すような陽の光をかき消すように、涼しい風が吹き抜けていった。


「なぁ、フェイ」

「なんだい? 悪いけど、僕はさっきの話の続きを言うほど口は軽くないぞ」

「バレてたか」

「当然だろ? 君みたいな浅はかな考えは、すぐにわかる」


 御者台に座ったまま、周りの様子を見て警戒するのを怠らない。

 まだ若いはずなのに、よく集中が続くものだと感心する。


「でも、そこを俺たち通るんだろ? 警戒しておくなら、ちゃんと知っておいたほうが良くないか?」

「――――その必要はない。特に、君の場合はね」

「何でだよ?」


 仲間外れにされたようで、どこか納得ができない。そんな雰囲気を醸し出すユーキにフェイは振り向いた。その顔は真剣そのもので、ユーキもこの話がふざけ半分で聞くことができるものではないと感じた。


「ユーキ。世の中には知らなきゃいけないこともたくさんあるけど、それ以上に()()()()()()()()こともある。知ってしまえば、後戻りができないからだ。君の場合は、特に性質(たち)が悪い。いや、()()()()()()()と言った方がいいかもしれないね」


 一度、言葉を区切った後、フェイは自分の中で結論に納得がいったのか、頷いて話を続けた。


「そうだね。僕から言えることは、魔眼を使わない方がいいってことかな。特に夜の間は、ね。納得ができなくて構わない。これは僕からの忠告であり、お願いだ」

「そうか。そこまで言われたら仕方ないよな。わかった。緊急事態にならない内は、使わないようにしておくよ」


 流石にユーキも共にローレンスの街を駆け抜けた戦友に言われては頷かざるを得ない。

 クレアとマリーの話は気になるが、追及するのはやめることにした。精々できることは、あのドクロマークの示す意味を予想することくらいだろう。


「――――ユーキ。ドクロマークの意味を考えるだけなら大丈夫だろう、って思ってないか?」

「おい、いつから人の心を読めるようになったんだよ」

「言っただろ。君の考えていることくらい、すぐわかるって。顔に出過ぎなんだよ。『ドクロマークって何の意味があるんだろう』って」

「マジか。俺、そこまで顔に出やすい性格だったっけ?」


 思わず両手を頬に当ててしまう。

 鏡があったとしても普段見慣れない――――しかも十年以上前の――――顔をどうやって判断するのか、という問題はあるが。


『ユーキさんは、切り替えが早いですからね。真剣かそうでないかの判断ならわかりやすいですよ?』

「じゃあ、今の俺はどっちの顔だった?」

『真剣な方だったと思います』


 ウンディーネの言葉にユーキは堪らず問い返す。


「じゃあ、俺が真剣に『よし、フェイの言う通りにしよう』って思ってたかもしれないだろう」

『そこは……フェイさんからすると信用がない、ということかと』

「うん。ほぼ正解」

「嘘だろ!? 一緒に戦った仲じゃないか!?」


 短かったとはいえ戦友だと思っていた相手に、信用がないと言われれば、こんな反応にもなるだろう。

 ショックを受けるユーキの後ろで戻ってきた女性陣が不思議そうに声をかける。


「どうしたのユーキ? お馬さんになりたい、の?」

「違うんだよアイリス。ちょっと、ショックなことがあって思わず跪いちまっただけなんだ」

「そっか。ユーキも大変だね。よしよし」


 頭を撫でられて励まされる十六歳は、客観的に考えるとどう考えてもダメ人間にしか見えなくなり、ウンディーネの言う切り替えの早さで立ち上がった。


「わっ、びっくり」

「よし、女子たちも戻ってきたし、フェイ! 俺たちもちょっと鷹狩りに――――」

「――――僕はいいから、一人で行ってこい!!」


 フェイの投げた採取ナイフがユーキの足元に突き刺さった。

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