表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

468/2419

早起きは三文の徳Ⅵ

 悶々とする中でユーキがどうしようかと悩んでいると、不意に妙案が思いつく。


「(俺が出て行かなくても、サクラたちが出て行くのを待てばいいじゃん!)」


 自らリスクを背負って出て行く必要などない。そんなことをしなくても、必ず出て行くのだからそれまで息を潜めていればいい。

 そう思いついた途端、ユーキの肩から力が抜ける。後はのぼせない様に、じっとしていればいい。

 岩で後頭部を冷やしながら音を立てない様に息を潜める。

 そんなユーキを嘲笑うかのように、アイリスの口から飛び出た一言に、ユーキの心臓が口から飛び出そうになる。



「サクラ、あの岩冷たくて気持ちいい。潜って熱くなったから、ちょっと行ってくる」

「あ、私も行ってみたいです」

「じゃあ、私も行こうっと」


 ザバザバとお湯をかき分ける音が近付いてくると、ユーキの心臓の鼓動が今までで一番早くなる。

 揺れるお湯に明らかに床と違う色が反射して、それだけ近くに三人が来たことが分かる。覗き見ると僅かに肩が見えた。

 髪の色からして、恐らくフランだろう。岩を挟んで入口側からサクラ、アイリス、フランの順に背を預けているようだ。

 これ以上、アイリスが移動しないように祈りながら目を閉じる。


「(マズイな。三人より長く風呂に浸かってるせいで、くらくらしてきたぞ。立ち上がって冷ましたいけど、この距離だと確実に気付かれる)」


 それでも倒れたら洒落にならないので、岩に体を預けながら徐々に体を湯から出していく。

 体からも湯気が立ち上り、多少ではあるが楽になった。


「(普通、こんなことがバレたら、今後みんなと合わす顔がないよな。そして、確実にフェイにやられる未来が見えてる、マジで!)」


 正直、覗きたい気持ちよりも自己保身の気持ちが勝ってしまっている。どうにかこの場から救われたい。その気持ちだけでいっぱいのユーキの頭の上に、お湯で濡れた何かが落ちてきた。

 その感触を感じた瞬間に、ユーキは全てを悟った。この時のユーキの脳裏に人生で計算したどんなものよりも早く、次の結果が浮かんでいた。


「あ、あっちに行っちゃった」

「もう、アイリス。タオルは投げて遊ばないの。しょうがないなぁ――――」


 飛んでいったタオルを追って、サクラが身を乗り出した先には、顔面にそれが張り付いてしまっているユーキの姿があった。


「――――え?」

「……………………」


 目の前の光景に脳の処理が追い付かないのだろう。サクラの口から間抜けな声が漏れる。


「どうした、の?」


 サクラに拾いに行かせるわけにはいくまいと、後を追ってきたアイリスもまた、サクラと同様に動きを止めてしまう。

 その表情は、困惑とも羞恥とも言えぬ複雑な表情をしていた。


「どうされたんですか? もしかして、こっち側に落ちたとか?」


 二人がなかなか戻ってこないので、反対側から身を乗り出したフランも目の前の光景に固まる。

 三人の中での判断基準としては、男の人がいるけれど(今この瞬間は)裸を見られたわけではないので、悲鳴を上げるかどうかの微妙なラインにいるようだ。

 もし、ここでなんらかのアクションをユーキが起こせば、間違いなく悲鳴が響き渡る可能性が高い。それでもユーキはここで意を決して口を開かなければならなかった。


「見てません! けど、ごめんなさい!!」


 両手を挙げて降参の姿勢を取りながら、ユーキは謝罪する。

 誤解は後で弁解できるが今は謝るのが先決だ。なぜならば、この四人の中で被害があるのはどうあっても、ユーキ以外の三人しかいないからだ。


「三人が来てから、出るに出られずここにいただけです。ごめんなさい!」


 弁解をしながらも最後の締めは謝罪で終わる。目を閉じているため、三人がどんな表情をしているかわからないが、ユーキにはもうこの場では謝ることしかできなかった。

【読者の皆様へのお願い】

・この作品が少しでも面白いと思った。

・続きが気になる!

・気に入った

 以上のような感想をもっていただけたら、

 後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。

 また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。

 今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ