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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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安堵と休息Ⅰ

「うへー。もう疲れたー」


 ユーキは用意されていたベッドへと飛び込むと大の字に寝転んだ。夕食を食べ終えて、明日に備えて後は寝るだけの状態になっている。


「まったく……普段から鍛えてないから、すぐに体が悲鳴を上げるんだ。やはり、君はもう少し鍛え直した方がいい」


 フェイが扉に寄り掛かりながら、呆れてため息をつく。


「いいじゃんか。これでも、ここ数週間で大分体は引き締まって来たぞ。多分、全盛期に近いくらいだな」

「……まるで一生を過ごしたことのあるような言い方だな」

「じ、冗談だよ。冗談」


 思わず口が滑ってしまったユーキだが、フェイはそれほど真剣にはとらえていなかったので安心した。

 もし、ユーキが異世界から来て、しかも若返ったという事実が知られれば、一部界隈からは若返ったという言葉だけで人が押し寄せてくるだろう。

 そして、その場合は集まってくる輩が大抵面倒なタイプが多いことも予想できる。冷や汗をかきながらユーキは苦笑をするのだった。


「それで? 後はサクラたちを待つだけだけど、先に聞いてもいいか? 明日はどうするんだ?」

「そうだね。今日と同じ作業を続けるかな? 一応、明日からは冒険者たちが依頼を受けてくれそうだから、一気にペースが上がりそうだってさ」

「へー。今日は渾沌がおっかねぇ、とか言ってたのによく受ける気になったよな」

「他の場所にいた冒険者が戻って来たのが大きいかな。それに王都でも報告を聞いて、他の街の冒険者ギルドに連絡を入れてくれたのもあるからね。伯爵が言ってたけど、アメリア王女殿下が転移門を使ってくれた影響もある」


 夕食の席をマリーを除くメンバーで食べている際に、伯爵が忙しそうに通りながら現状を簡単に説明してくれた。

 本来は戦争終結が予想された日の午後に到着する予定だった騎士団が遅れることになってしまった。ただ、その援軍――――この場合、援軍と呼ぶに相応しいかは別として――――が来てくれるお陰で、一週間あればかなり修復できる予定だ。

 国境付近ということもあり、国王も流石に今回の事態をかなり重く見ているらしい。


「お二人の力を以てしても倒しきれない魔物が出るなんて、想定外も良いところだからね。報告を聞いた国王陛下はもちろん、宰相様も胃が痛くなったんじゃないかな?」

「そりゃそうだろう。国境が破られかけました、なんて聞いたら戦力を出し惜しむんじゃなかったって、誰だって思う」


 二人で頷いているとフェイの背後からノックが響いた。


「来たけど、入って大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。入っていいよ」


 サクラの声に反応すると、フェイがユーキに変わってドアを開けた。

 サクラとアイリス、フラン、最後にクレア、と思いきや、マリーが最後尾で入ってきた。


「「マリー!?」」

「よぉ、ユーキ、フェイ。元気だったか?」

「いや、元気だったかとか、どう見てもマリーの方がヤバそうだぞ!?」


 特段、眼の下にクマがあるとかげっそり痩せこけているとか、そういう姿は見られない。

 しかし、あの元気が取り柄の彼女の表情からは感情というものが抜け落ちているようだった。


「いや、大したことないぜ。魔力制御の練習を両手でやりながら、母さんの講義を聞いて、更に母さんが放つ魔法を避け続けるとか、さ」

「……マジかよ。いや、でもやりかねないよな。伯爵の奥さんだし」


 いくら何でも無茶苦茶やりすぎじゃないだろうか、と思うユーキの中で、どこか納得してしまう自分がいることに驚いた。伯爵が関わると大抵の常識は打ち砕かれるという覚悟があったが、これからはビクトリアにも同様の心構えが必要そうだと心に刻む。


「ま、あんたが選んだ道だから、仕方ないね。精々頑張って」

「姉さんも一緒にやろうよー。一人だときついんだよー」

「あたしが増えたところで、飛んでくる魔法が二倍に増えるだけだから、やめておいた方が無難ね。だから、あたしの腰に抱き着かない、の!」


 マリーが引き離されると、割と本気で泣きそうな表情を浮かべた。


「まぁまぁ、もし城壁の修理とかが終わったら、俺も付き合うからさ。ビクトリアさんに言っておいてくれない?」

「マジで!? ユーキ、嘘じゃないな!?」

「あぁ、ちょうど、そこの騎士様に鍛錬不足だって言われたところだからな。元宮廷魔術師の修行、一度くらいは経験してみたい」


 元々、運動部だったこともあって、きつい練習は自分の成長に繋がることを身を以て知っている。当然、効率が悪い練習は只の体力の無駄遣いだが、一度も体験せずに批判するのは間違いだとユーキは感じていた。


「さ、マリーの元気も戻って来たみたいだし、本題に入ろうか」


 クレアが手を叩くと、各々部屋のテーブルへと移動を始めた。

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