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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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復興作業Ⅴ

 通りから右に曲がるとアンディの言った通り、フェイとクレア、更に他の数人の騎士たちが瓦礫を退かす作業を行っていた。

 対象の家屋は運の悪いことに壁に石がめり込むどころか、いくつか貫通して柱を折ってしまったらしい。自重を支えきれずに道側へと反って潰れている。取り壊して新しく立て直すしかないレベルだ。


「ここは多いな。まだまだ出てきそうだ。フェイ、ここは後回しにしよう。一度、建物を取り除かないと危なくて中に入りようがない。最悪、必要な物だけ運び出したら、燃やし尽くして灰の中から探すことになりそうかも」

「了解です。次に行きましょう」

「おっと、その前にお客さんだ」


 クレアがユーキたちに気付くと振り返った。


「流石だね。あたしの予想より大分早起きじゃないか。もしかして、手伝いに来てくれたのかな?」

「当然です。何かお手伝いできることはありますか?」

「あるよ。それも数日掛かりの大掃除さ。年度末の魔法学園でも、こんなに大変そうなのは無いかもね」


 フランに応えるようにクレアが親指で後ろを示す。

 その先には、目の前の家ほどではないが大小種類様々な破片が散らかっていた。既に戻ってきた家人によって多少は片付けられているが、それでもかなりの量であることは違いない。


「同時並行でやっているけど、量に対して人が少なすぎる。冒険者が手伝いに来てくれれば、この程度すぐに終わるんだけどね」

「言ってても仕方ない。やれることをやろう」


 そう言ってユーキたちはクレアと共に次の家へと場所を移す。その短い距離を歩く間にフェイが近寄ってきた。


「次の家は潰れてないから城壁の石を見つけるのは楽、と思ったら大間違いだ。ユーキ、君は探すものの大きさはわかっているよね」

「あぁ、両手で持てるこれくらいの石の塊だろ?」


 ユーキは両手で大体の大きさを示す。

 それを見てフェイはニヤリと笑った。


「なるほど、()()()()()()、ね。どうやら、仕事は思っていた以上に早く終わりそうだ」

「……何言ってるんだ?」


 不思議に思いながらもユーキはフェイの後に続いて家の中へと入っていく。クレアは記録係のようなもので家の中には入ってこなかった。


「やるべきことは二つ。壊れている家の場所を把握することと城壁の石を回収すること。ユーキは僕と石の回収。悪いけど、他のみんなは先輩の騎士たちの指示に従って、破損個所を見つけてほしい」

「わかった。フランさん、アイリス、行こう! ユーキさんは無茶しないでね」


 そう言ってサクラたちは先行していた騎士の後ろへついて行く。


「それで俺たちはどうするのさ?」

「やることは変わらないさ。こっちはこっちで石を探しながら破損個所を把握していく。破損あるところに石有りだ。一通り終わったら、今度は彼女たちが探していた場所で石の回収作業だよ」

「石を運ぶのは俺たちだけか」

「先輩たちも大分高齢だからね。何かの拍子に()()()()()を食らいかねない」

「魔女の一撃?」


 反対方向の部屋に入りながら辺りを見回すフェイから飛び出た聞きなれない単語に、思わずユーキは思わず聞き返した。


「あぁ、君たちには聞きなれない言葉だったね。ぎっくり腰だよ。急に重たい物を持つと激痛が腰に走るのさ。まるで魔女の魔法を食らったかのようにね」

「なるほどね、そりゃ一大事だ。一週間は動けなくなるらしいからな。俺たちがその分頑張らないと」


 辺りを見回しながら相槌を打っていると、早速ユーキは想像通りの直方体の石を発見した。

 近寄ってみると壁を貫通してきたらしく、勢い余って床にめり込んでいた。


「お、フェイ。ここにあったぞ」

「そうか。じゃあ、()()()()()()()

「任せとけっ――――ふん!!」


 めり込んでいるため、相当力を入れなければ抜けないだろうと、身体強化を使って引き抜こうとする。

 しかし、思った以上にめり込んでいるのか、はたまた重いのか。石はびくともしない。


「ぐ、ぬぬぬうぬぬうううううう! はぁっはぁっはぁっ……何だこれ!?」

「その石、魔法がかかってるんだ。通常の何倍も重く、そして硬くなるようにね。だから一つ運ぶだけでも相当時間がかかるんだよ。幸いなことに罅が入ったり、割れてしまった物に関しては魔法が解けてしまうのか、かなり重さが変わるんだ」


 床に座り込んだユーキをニヤリとフェイが見下ろす。


「君が来てくれてよかったよ。両手で持てるんだろ?」

「――――あぁ、言ったぜ。今から持ち上げてやるから見とけよ。こんちくしょー!」


 再びユーキが石を掴んで引っ張り上げる。先程は水道の蛇口から水が垂れる程度の魔力を使ったが、今度は手を洗う程度の気分で魔力を流す。

 床が僅かに軋みを上げると、小さい砂利を落としながら石が持ち上がった。

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