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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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復興作業Ⅲ

 マリーがビクトリアに連れて行かれたのは昨日だ。最低でも十二時間は経過している。


「まさか、あのままずっと寝ずに特訓とか、そういうことはないよな……?」

「マリーのお母さんなら、有り得る」


 この親にして、この子あり。逆に言えば、マリーの性格から逆算するとあり得ない話ではない。

 そうとは言え、若い年頃の体は眠ってこそ成長するものでもある。無理のさせ過ぎは、逆に体を壊しかねない。

 そんな心配をユーキが口にすると、サクラが大きくため息をついた。


「それ、ユーキさんに一番当てはまると思うんだけど」

「俺はいいの。とりあえずマリーが行けるかわからないけど、顔だけでも合わせてから行きたいなぁ」

「その必要はございません」

「「「わぁ!?」」」


 ユーキのすぐ真後ろから声がかかり、アイリス以外の体がビクンッと跳ねた。

 振り返るとメイドの一人。メリッサが佇んでいた。


「おはようございます。皆様、昨日はお疲れさまでした。ご無事で戻られたようで何よりです」

「ど、どうも……。それより、メリッサさん? 必要がないというのは?」

「申しあげたとおりです。現在、マリー様はビクトリア様のご指導を受けておりますが、同時に規則正しい生活も送っています。皆様方が心配するような不眠不休の特訓ではございませんので、ご安心ください」

「じゃあ、マリーは今、何をしてる、の?」


 アイリスが問うとメリッサは淀みなく答えた。


「ビクトリア様の私室でお食事をとられた後、今は講義を受けながら魔力制御の練習をしておられます」

「え、講義を受けながら……ですか?」

「はい、フラン様。ビクトリア様曰く、『時間が足りなさすぎるから一緒にやった方が早い。いずれ、できるようにならないといけない技術なんだから、今覚えた方が得でしょ?』とのことでした」

「あはは、マリーも学校で面倒だから一緒にやっちゃえっていう時があるけど、お母様も同じこと言うなんて、ね」


 サクラも苦笑をする当たり、実際に学園での生活で言っていたのだろう。それも一度や二度ではないらしい。


「私からマリー様には、皆様が街の修繕の為に出ているとお伝えしておきます」

「よろしくお願いします。それでは、俺たちは行きますので」

「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ」


 メリッサの見送りを背に、ユーキたちは一先ず街へと向かうことにした。


「でも、大丈夫ですか? マリーさん、昨日の時点で大分ヘロヘロでしたよ?」

「マリーのお母さんは元宮廷魔術師。多少の無理なことはするけど、基本的に悪い人じゃない。そもそも、マリーやクレアのことが大好きな人だから、大丈夫」

「アイリスって昔からマリーと一緒にいるんだよな。それだったら、ビクトリアさんの人柄も知ってるだろうから大丈夫じゃないか? ――――大丈夫だよな?」


 ユーキが坂道から見える街の様子を見ながら言う。

 街の中は一見無事に見えるが、よく見ると壁に穴が開いていたり、一区画が丸ごとなぎ倒されていたりと、かなり損害を被っている様子が見えた。ダンジョンに出てくるような魔物で、しかも体高数メートルに近い巨体であれば、こういう状態にしてしまうことも可能なのだろう。

 むしろ、この程度の被害で済んでいるのが奇跡であると勇輝は考えていた。ここに不死身の化け物である渾沌が侵入していたら、それこそビクトリアの最大魔法で街ごと吹き飛ばさざるを得なかった。


「うん。無茶苦茶難しいことを要求したり、やらせたりするけど、怪我人とか病人はあんまりでない」

「……出ることには出るんですね」


 フランは何を想像したのか、夏だというのに両手で体を抱くようにして震えた。


「こう、魔法を使って気絶するまで魔力を出し尽くして、魔力酔いに慣れる、とか。後は、身体強化を使わずに魔法を避けるとか」

「……前半は良いとして、後半は関係あるの?」

「魔法使いたるもの、魔力を使い切ってしまった時の対応も考えておくべきなのだ、って言ってた」

「なんだろう。言ってることは正しいんだけど、スゴイ根性論な気がしてきたぞ?」


 もしやアイリスが言っている以上に、ビクトリアの特訓はスパルタなのではないだろうか、という疑問が浮かぶが、確かめる術はない。

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