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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第8巻 深緑の妖精庭園

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復興作業Ⅱ

 短いとはいえ戦争直後ということもあり、朝食は簡素な物しか置いてなかった。もしも、ここが伯爵の屋敷でなければ、もっと質素だったかもしれない。


「(おかずがあるだけ十分幸せだよな……)」


 腹八分目にも満たない胃が文句を言うが、お腹を擦ってユーキは門へと向かう。


『確か、みなさんで破壊された城壁まで行くんですよね。でも、私たちにできることなんてありますか?』

「サクラたちなら土魔法とかで塞ぐことはできるし、俺だったら警備や運搬の手伝いぐらいはできるからね。ギルド経由で行けば、何かしらの依頼が出ているかもしれないし、やれることはやっておかないと」


 ウンディーネと会話しながら集合場所へと向かうと、既に門の側にフランとアイリスが立っていた。二人とも、戦争があったとは思えないほどの元気の良さを感じさせる声で挨拶をしてくる。それに手を上げて応えながら、勇輝は二人の下へと近づいた。


「おはよう。アイリス。調子はどうだ?」

「私は大丈夫。それよりもユーキやフェイの方が、心配」


 昨日はフェイもユーキも魔力をほとんど使い果たし、フェイに至ってはユーキを背負って街中を駆け巡ったのだ。その疲労は半端ではない。恐らく、フェイの体は筋肉痛を飛び越して、筋断裂位の痛みに届くほどだろう。


「まぁ、こうやってここにいるから、それほど問題はない。ところでサクラとマリーは?」


 ユーキは辺りを見回したが、周りにはメイドが数名移動しているくらいだ。


「あ、あの、サクラさんは、ちょっとまだ……」

「あぁ、もしかして寝てるのかな? 朝弱いみたいだし」


 以前、早起きして活動しようとした時に、寝坊した彼女の部屋に行った時のことを思いだす。寝ぼけて抱き着かれてしまった事件となってしまったが、今回は同じような失敗をするわけにはいかない。

 フランたちにサクラを呼んできてもらおうかと思案していると、ちょうど駆け足でサクラが走ってくるのが見えた。


「ごめんなさい。待たせちゃって」

「大丈夫、大丈夫。俺も今来たところだしさ。でも、朝ごはんはちゃんと食ってきた方がいいんじゃないか?」

「え?」


 ユーキはサクラの反応に、おや、と首を傾げた。

 てっきり、サクラは寝坊して、朝ごはんも食べずに走ってきたのだと思っていた。食堂で出会ったのはフランのみ。アイリスは既に部屋へと戻ったと聞いたので、マリーも一緒に帰ったのだろうと勝手に思い込んでいた。


「私、ごはんはちゃんと食べたよ?」

「あれ? 起きたばかりじゃなかったの?」


 そうなると、いつ起きていたんだろうかという疑問が浮かぶ。

 しかし、その答えはすぐにフランから帰ってきた。


「あの、確かにサクラさんは起きるのが遅かったですけど、私たちと一緒にご飯を食べましたよ?」

「……もしかして、ユーキさん。私がずっと寝てたと思ってたの?」


 サクラの非難めいた声に勇輝は思わず狼狽える。


「あー、うん、まぁ、その……はい。寝坊したのかと」


 様々な方向に目を泳がせながら、言い訳を考えようとしたが、正直に頷くほかなかった。


「ユーキ。サクラは確かに朝に弱いけど、今日は起きてたよ。一応」

「ちょっと、一応って何、一応って」


 サクラが腰に手を当てて、いかにも怒ってますと胸を張る。

 僅かに揺れた胸に視線が下がりそうになるのを何とか堪えて、ユーキはアイリスへと視線を移した。


「サクラ、食べてる時も、頭が上下左右、いろんな方に行ったり来たりしてた。起きてたとは言い辛い、かも」

「うっ……」

「しかも、ご飯食べた後、危なっかしいから部屋に連れて行ったのも私」

「うっ……!?」

「その後、ベッドにそのままダイブしたのも、見た」

「ううう……」

「それで、今遅れて来たのは、フランから部屋で壊れた城壁で何か手伝おうって話を聞いたから。ちゃんと朝ご飯中に話したのに、聞いてなかった」

「うぐぐぐ……」


 アイリスの口撃に、手も足も出ないサクラ。両手を握りしめて、何かを耐えている。


「外に出るのに髪の毛がばくは――――」

「だめ、それは言わないで!」


 アイリスが教授のように理由を述べるたびに、立てていた指の数が五本目になろうとしたとき、唐突にサクラがアイリスの口を塞いだ。


わはった(わかった)いああいかあ(言わないから)はあして(離して)

「絶対!?」


 サクラが念押しするとアイリスは、刻々と首を上下に動かした。

 恐る恐る手を離すとアイリスは、いつもの顔でサクラに言った。


「――――以上。サクラが寝ぼけていたのは事実、である」

「……はい、認めます」


 しょんぼりと肩を落としたサクラであったが、ユーキは疑問が一つ浮かんだ。


「あれ? じゃあ、マリーはどうしたの?」


 その言葉にアイリスだけでなく、フランもサクラも黙ってしまった。何とも言えない空気に勇輝は全員の顔を順番に見て、何事かと一歩下がってしまう。


「え? なんか聞いちゃいけないこと聞いた?」

「ううん。そうじゃなくて……」


 サクラは言い辛そうに、とある砦の一部分を振り返る。


「まだ、マリーさんはビクトリアさんに連れられて行ってから……戻って来てないんです」

「……え゛!?」


 ユーキも思わずサクラの見上げた方を見つめた。

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