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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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存在否定Ⅴ

 地面と城壁、それらを削りながら弾丸ではなく、レーザーと表現すべき閃光が駆け抜ける。

 それは魔眼を持たない他の人の目にも鮮明に映っていた。

 一瞬で駆け抜けた攻撃は触れた物体の周囲で雷の蛇を生み出し、焦げ跡を残していく。渾沌も例外ではなく、閃光の海の中で瞬く間に穿たれ、焼かれ、焦げていった。

 ユーキには無限にも思えた時間だったが、実際の放出時間は三秒にも満たなかった。


「――――はぁっ!! はぁっ!!」


 光が止むと、息苦しさと気持ち悪さが襲ってきて、いつの間にか膝をついていた。

 目の前に銀色の流れ星が幾つも流れ、視界を認識することができない。


「ユーキさん。これをっ!」


 サクラが慌てて魔力を回復させようとポーションを差し出すが、指が震えて掴むことすらおぼつかなくなっている。誰の目で見ても焦点の合わない顔で体を震わせていれば、ユーキの状態が悪いことくらいは容易に想像がついた。


「貸しな。こういう時は飲ませ方っていうのがあるんだ」


 ギルドマスターが支えるのをサクラに任せてポーションを持つ。

 ユーキの顔を上に向かせると唇の上に水滴を乗せるように少しずつ落としていく。


「本当は悠長にやってる暇がないんだが、一気に入れたら咽ちまう。急いでいる時こそ落ち着いて、だ」

「あ、ありがとうございます」

「構わんさ。それより、さっきの化け物がどうなったかを見ていてくれ。今のでも生きていたら相当ヤバいぞ」


 慌てて、サクラが視線を戻すと既に風魔法で土煙が晴れていくところだった。

 渾沌がいたところには、すでに体と思える場所はなく。黒い水たまりが残っているだけだった。


「――――攻撃を続行しろ! 黒い染み一つ残さず燃やし尽くせ!」

「「「了解!」」」


 伯爵の声にギルド職員やまだ残っていた騎士たちが応え、攻撃を再開する。

 魔法の炸裂音が響く中でユーキは頭痛を感じながらも体を起こした。


「お、坊主。俺の顔が見えるか? 言っていることが分かるか?」

「……はい、なんとか」

「よしよし、それじゃあ、このポーションを飲んどけ。それか、そこの彼女に口移しでもしてもらうんだな」


 にやにやと笑いながらギルドマスターは、ユーキにポーションを押し付けて、伯爵の下へと歩いていく。


「かの、じょ?」


 ユーキが顔を見上げると顔を真っ赤にしながら、サクラが見降ろしていた。


「ゆ、ユーキさん。今はそんなこと言ってる場合じゃないので、早くポーションを飲んで!」

「ごふっ!?」


 ポーションの瓶をひったくられたユーキは、そのまま口に突き刺される。

 数回咽込んだ後、瓶を外して体を起こす。


「な、何するんだっ!?」

「そ、それより、渾沌の状態を見ないと!」


 サクラは聞く耳を持たず、どこか誤魔化すようにユーキを引っ張り上げた。

 色々と文句を言いたい部分もあったが、ユーキも渾沌の状態は気になっていたので、素直に従うことにする。


「次! 撃て!」


 城壁の上から聞こえる掛け声と共に、魔法が放たれていく。

 マリーやクレアも続けて放っているが、流石に魔力が空になったらしい。息も絶え絶えになっていた。


「よぉ、さっきの一撃。すごかったな。下手すりゃ、母さんといい勝負できるんじゃないか?」

「ほんと、マリーの言うとおりね。おかげで、あっちの国境線まで届いてるんじゃない?」


 ガンドが抉った跡を見ながらクレアはため息をつく。

 マリーよりはだいぶ余裕があるようだが、それでも疲労の色は隠せていなかった。


「まったく、君って奴は末恐ろしいよ。刀を振るより、ガンドを撃ってるだけの方が強いんじゃないのかい?」

「悪いね。ガンドだけじゃ、万が一の時に大変だろう?」

「そうかもな」


 フェイとどちらからともなく拳を突き出してぶつける。


「とりあえず、お疲れ。ケガはないか?」

「こっちのセリフさ。僕より君の方が傍から見たら怪我人に見えるよ。それで? 僕たちはどうする? 僕は何もできないけど、後処理で手伝えることがありそうだから残るけど」


 その言葉にユーキは周りを見渡す。

 何とか歩けるようになったフランと支えるアイリスが合流したことを確認して、目の前の攻撃地点を見つめる。


「そうだな。ポーション飲んで、少し様子を見ようか。下手するとまだ生きてそうだし」

「このまま、みんなに任せて帰るのは気が引ける。どうせなら、最後までもうひと頑張りかもね」


 そも声を聞いて、サクラがポーションを全員に配り始めた。

 念には念を。伯爵の言う通り、一欠けらの肉片、一滴の体液すら残さない様にしなければ、安心して今日は寝付けないだろう。

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