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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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存在否定Ⅳ

 渾沌の嗤い声が響くと共に、口や鼻など顔中の穴という穴から泥が溢れ始める。


「あぁ、せっかくフランが減らしてくれたのに!?」

「文句言っても仕方ないでしょ。つべこべ言わずに撃つよ!」


 周りの騎士たちも懸命に魔法を放つが、先程よりもその流出量は多い。

 おまけに魔眼には絶望的な光景が広がっていた。


「赤い……泥!?」


 先程までは黒い泥がメインで存在していたのに、今度は赤い泥が増え始めたのだ。もし、これが予想通りの核ならば、この核から生み出される黒い泥の量は一体どれだけになるのだろうか。想像するだけで恐ろしくなる。

 だからこそ、ユーキは一か八かの賭けに出ることにした。


「身体強化――――限定解除!」


 恐らく、できるだろうと感覚で理解していた。自転車に一度乗れてしまえば、次からも上手くいくように魔法も一度できたことは再現できるはずだ。

 周りの時間の流れが急に引き延ばされ、音が遠くなっていく。その世界の中でユーキはゆっくりと右手を渾沌へ向けた。

 魔力を右腕から人差し指に集めて行くと青紫色の球体が生成される。これ一発で、渾沌の頭半分を消し飛ばすくらいはできるだろう。

 しかし、それができたとしても連発可能な数は六発。どうあっても、今の体積を全て消し飛ばすほどの余裕がない。故に取れるべき行動は限られていた。


「(――――もっと強く。もっと()()()!)」


 一発の弾丸が急速に巨大になっていく。それは即ち、弾に込められたオドとマナ、二つの魔力が指数関数的に増えていることを意味していた。同時にそれは、魔力をコントロールする負荷も増大していることになる。


「(うっ……人差し指が捻じ切れそうだ……!)」


 第二関節が時計回りに動き始めているのを感じながら、それを左手で必死に抑える。

 時間が引き延ばされた分、指や架空神経に走る痛みがより鮮明に感じられ、何度も頭の片隅で警告が響く。こめかみも痛むが、それも普段なら拍動に合わせて痛むところが、ペンチで引っ張られているような継続した痛みに感じる。

 二発目に使うはずの魔力を注ぎ終え、三発目、四発目と進むに連れて、痛みも比例して激しくなってきた。骨が軋み、出力と保持を行っている人差し指は、限界寸前だった。


「(――――圧縮、して、更に込めれば……!!)」


 五発分の魔力を乗せた時には、魔力の弾の大きさも直径一メートル近くなった。膝立ちで構えているため、弾丸に触れた地面が削れて行く。


「――――ユーキ!? 何をするつもりだ!?」


 フェイがユーキの様子に気付き、大声を上げる。他のメンバーの視線も集まるが、既にユーキには聞こえていない。


「ユーキから離れろ! 見えないけれど……多分、通常より大きなガンドを放つつもりだ」


 地面の窪みだけでフェイは、ユーキの用意しているガンドが規格外の大きさになっていることに気付いた。慌ててマリーやクレアが射線から飛び退く。


「あ……っ……!」


 声すら出せない状態だが、ユーキはまっすぐに自分の作る青紫の弾丸の先を見据える。このままでは渾沌の姿が見えない。最後の肝心な場面で慌てそうになるユーキだったが、瞬き一つで魔眼を一度解除する。

 川を挟んで二十数メートル先に横たわる渾沌へと指先が向いていることを確認すると、もう一度瞬きをして魔眼へと切り替える。

 切り替え終わったときには、やはり見えていないためにイメージが崩れたのか、弾の形成が甘くなり、弾ける寸前だった。


「これで……ラスト!」


 狙いがズレない様に最後の一発の魔力と共に圧縮するとガンドの色は青白く輝いた。


「ふきとべえええええええ!!」


 撃鉄が落ちた音が体のどこかで響く。

 ユーキの視界いっぱいに青とも白とも判別できないほどの閃光が溢れ出た。

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