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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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開戦Ⅱ

 轟音が何度も響く中、ユーキは目を覚ました。


「おい、大丈夫か?」

「フェイ……お前こそ大丈夫かよ?」

「僕はウンディーネに治療してもらったからな」


 そう告げたフェイは、軽く咳き込む。また、血を吐き出しているのではないかと心配する勇輝だが、どうやら無事らしい。


『大丈夫です。このコート見た目よりも丈夫にできているんですね。腕を牙が貫通しているかと思いましたけど、これなら酷い打撲程度で済みそうです』


 ユーキは起き上がるとコートの袖をめくってみた。

 フェイの持つ魔法石の灯りが広範囲に渡って痣になっている腕を照らし出す。


「うえっ、見ない方が良かったかも……。それで、俺はどれくらい気を失ってた?」

「そんなに時間はかかっていない。五分程度だ。ウンディーネが治療してくれたおかげだな」

『私がいなかったら、骨にもひびが入ったままでしたからね。内出血も治してあげていいんですが、数日間激痛が走りっぱなしになるので、やめておきました』


 ウンディーネが誇らしげに言うが、ユーキとしては今も激痛なのであまり変わらないと思った。

 左手では確実に剣を振るのは難しくなってしまっている。もし、噛みついた場所がコートからはみ出ている左手首より先だったら、腕時計事磨り潰されていたに違いない。それを思えば、痛みだけで済んでいるのはマシな方だろう。


「それよりユーキ。アレ、どう思う?」

「どうもこうもない。間違いなく、敵の攻撃だろうな」


 北東部からの断続的な轟音と火柱をユーキとフェイは見つめる。

 炎が弱まる瞬間、城壁の影が見えることから破られてはいないが、それでもあれだけの攻撃を同一カ所に続けて受けていれば、決壊するのも時間の問題だ。


『一度、伯爵邸に戻りましょう。手負いの状態で行っても足を引っ張るだけになりますから』

「それもそうだな。周りにはシャドウウルフたちはいるのか?」

「下の道にはいるかもしれないけど、屋根までは登ってきていないね。流石に一度に仲間がやられて、死体も転がってるんだ。本能で逃げだしたんだろう。起点とやらも破壊されて、防衛命令みたいな縛りも解けていると思う」

「やっぱりダンジョン化してたのかもな。それなら納得がいくよ。いってぇ……」


 ゆっくりと立ち上がりながら顔を顰める。腕だけでなく、体中をぶつけたせいで、体を動かすと必ずどこかに痛みが走る。


「ま、バジリスクと戦う前の時よりはましだな。って、おい。なんだ!?」

「まさか、その状態で戻るつもりかい? 君を待っていたら陽が昇ってしまう。さっさと戻るぞ」

「お、お願いだから、そんなに高く跳ぶんじゃないぞ。お前だってケガ人なんだから――――」

「――――お望みならしてあげるけど、今は時間がない。舌を噛むなよっ!」

「ひぃっ!?」


 起点破壊に躍起になっていた時は我慢できていたが、一度切れた緊張の糸はなかなか元には戻らない。フェイの速度はだいぶ抑えられたものだったが、それでも今のユーキにとっては恐怖以外の何物でもなかった。

 数分間、ジェットコースター気分を味わいながらフェイにしがみ付いていると、いつの間にか伯爵邸に戻ってきていた。


「ユーキ、無事だったか」


 最初にユーキたちの帰還に気付いたのはマリーだったが、すぐにユーキの様子に苦笑いする。


「おいおい。まるで母親にしがみ付くガキじゃねえか」

「マリー。勝手に僕をコイツの母親にしないでくれるかい?」

「おっと、失礼。それで、ここに戻ってきたってことは任務は完了したってことでいいのか?」

「あぁ、彼が破壊できる場所は全て潰したようだ。実際、ここに戻ってくるまでに見て来たけど、シャドウウルフの数はそんなに増えていなかった」


 元々、伯爵邸近くの起点は潰し終えていたものが大半だった。故に、最初の進撃以降は徐々に数を減らしていき、ブレイズウルフを数度撃退してからはほとんど襲撃がなかったらしい。


「ユーキは、大丈夫?」

「あぁ、ちょっと魔力使い過ぎたのと左手を食い千切られそうになったくらいで、痛み以外は何ともない。それより、外側の城壁で爆発が起こっているけど何か知ってるか?」


 アイリスに無理した笑顔で応えながら、状況を知る物を見渡して探す。

 するとマリーの後ろからクレアとサクラとフランが駆けてきた。


「良かった、メリッサから聞いたよ。街中のヤバそうなところ、全部破壊し終わったんだって?」

「あぁ、そうなんだ。それで帰ってくる途中に北東方面の爆発を見たんだけど……」

「そっちは父さんたちが対応している。だけど、余り状況は良くないみたいだ」


 クレアは唇をかみしめた。

 あの伯爵がいるにも関わらず、状況が良くないということにユーキとフェイは驚きを隠せなかった。

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