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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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三合火局の陣Ⅰ

「――――三合火局?」

「うん。十二支を北から円にして並べたときに、正三角形を描く三つの組み合わせの一つ。寅、午、戌の三つの場合は三合会局の中でも火局と呼ばれてるの」


 冒険者たちもほとんどいない場所まで来たので、周りを気にせずサクラは説明を始めた。


「シャドウウルフを戌に見立てれば三つが揃うし、北西、北東、南の位置も同じになるから……。きっとそれを利用して何か仕掛けるつもりだと思う」

「何かするって言っても、ただ動物が揃っただけ。魔法でも何でもない、と思う」


 アイリスの言葉にサクラは言葉を詰まらせる。


「他にその十二支を使ったものと似た魔法があるのか?」

「もともとは占術の領分なんだけど、十干は天を十二支は地を表しているの。ユーキさんも聞いたことくらいはあるよね?」

「あぁ、庚午とかそういうのだろ? 全部は知らないけど……」


 ある年に生まれた女性は気性が荒いなんて言う迷信まで生まれたくらいだ。多少は聞いたことがあるが、日常生活ではあまり気にしたことがない。ましてや、異国の少女であるマリーたちにはさっぱりわからない話だ。


「だからこれは、何か土地に作用するような魔法だと思うの。しかも、ここまで大規模にやってダンジョンまで氾濫を起こしてるってことは、かなり影響が出ているはず!」

「そうなら、既にここも何かの魔法の影響が出ているかもしれないってことか?」

「わからないけど、最終的にここが攻略地点なら間違いなく入っていると思う」

「マリー、クレア。ビクトリアさんの所に行こう。あの人なら、この土地に長くいるだろうから、異変にも、すぐ気付けるんじゃないかな?」


 二人は顔を見合わせると頷いた。


「そうだな。せっかく来たばかりだけど引き返すか」

「情報は多い方がいいからね。母さんが何ていうかわからないけど何とかなるでしょ」


 元来た道を引き返そうとした時に、ウンディーネの声が響いた。


『街の中の様子がおかしいです。もしかすると、魔物がどこかから侵入したのかもしれません』

「何だって!?」


 ユーキたちは慌てて駆けだす。数十秒も走っていくと冒険者たちの姿が見え始める。

 しかし、城壁を破られた様子はどこにもない。そんな時にイリスが街の方を指差した。


「あそこ! シャドウウルフ!」

「どこかから侵入されてる!?」


 街の路地裏の影でシャドウウルフが一匹、水から上がった後のように全身を揺すって、首元を後ろ脚で掻き始めていた。


「今の内に……!」


 ユーキは躊躇することなく、そのシャドウウルフをガンドで吹き飛ばす。

 一撃で吹き飛んだシャドウウルフだったが、安心したのも束の間、路地裏の影から別の個体が顔を出した。


「ちっ! もう一匹!?」

「おい! 街の中にシャドウウルフが侵入してるぞ! 誰か! ギルドか手の空いている奴らに知らせろ!」

「なんだと!?」


 ユーキの反応を聞いて、クレアが大声で叫ぶ。即座に近くにいた冒険者のパーティが二手に分かれて城門とギルドへ走り始めた。


「あいつら、一体どこから入ったんだ!?」

「あの様子だと、壁は突破されてない。別の、ところ?」

「そうだろうな」


 もう一発ガンドを放ち、シャドウウルフを撃破すると、ユーキはウンディーネに尋ねる。


「そっちで、他にわかりそうなことは?」

『私の感知できる範囲にはないと思います。ただ、あのシャドウウルフ。少し妙なんです』

「妙……?」

『はい、何かこう……城壁の外にいる個体とは似ているようで違うというか……上手く説明できなくて、ごめんなさい』


 今、把握できているのは、このままにしておくととんでもないことが起こるかもしれない、ということだ。ユーキは後ろを振り向いて全員と視線を交わすと城壁から降りられる階段目指して走り出す。

 先程、ギルドを目指して行った二人組を追うように階段を駆け下りて、ユーキは突然、立ち止まった。


「どうした!? またシャドウウルフか!?」

「ごめん、ここからの帰り道、俺、知らなかったわ」


 緊迫した空気の中、全員がその場でズッコケた。

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