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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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卵返却作戦Ⅳ

 ワイバーンの火球が再び炸裂するが、火魔法による火球がぶつかるとその場で爆発を巻き起こす。

 サクラたちが放つ火球が迫る前に場所を移動し、二発、三発とワイバーンも放つがそれなりの弾幕があるため届くことがない。

 無駄だと察したのか、一度雄たけびを上げると、ワイバーンの機動が素早くなった。巨大な翼をはためかせると、あっという間に火球の弾幕を掻い潜り、馬車へと突進を始める。


「ユーキ!」

「任せろ!」


 クレアの掛け声にユーキが人差し指を向ける。

 ユーキの中で撃鉄は既に上がっているが、その照準が魔眼をもってしても合わしきれない。上空からの滑空で速度がかなり出ているのに加えて、左右への動きが生き物かどうかを疑うレベルだ。もしかすると、人間が身体強化という魔力を使った強化を扱うように、ワイバーンも同じことができるのかもしれない。

 そうこうしている内に、馬車との距離がぐんぐんと縮まっていく。

 それでも短時間の間に左右への移動するタイミングと距離感を掴んだユーキは、次の魔法を避け始めた瞬間にガンドを三連続で放った。

 一発が横を大きくすり抜け、二発目もわずかに斜め上を抜けて行く。それでも、三発目は魔法を避けきって動きが止まった所に、ガンドが顔の上部へと激突した。遠目ではあるが、生えていた角が抉れ、欠片が吹き飛んでいくのが見えた。


「よし! いいぞ!」

「だけど、まだ諦めてないみたい」


 長い首を仰け反らせながらワイバーンは上空へと引き返していく。

 そのまま去るかと思われたが、すぐに首をこちらに向けて旋回を始めた。どうやら攻撃の意思は衰えていないようだ。

 警戒から上空を旋回をしているようだったが、一定以上の高度で追い打ちが来ないことを悟ると、再び滑空しながら攻撃を仕掛けてくる。ドラゴンよりは格下とされるワイバーンのはずだったが、それでも竜種は竜種。人間と見比べたら、どちらが捕食者であるかは一目瞭然だ。

 恐れることなく急降下するワイバーンではあったが、更に今度は火球を吐きながら突っ込んできた。

 ここで慌てるサクラたちであったが、幸いにも火球の魔法による詠唱は済ませている。案の定、こちらが放った魔法と相殺されるのだが、すぐにクレアの声が響き渡る。


「しまった。爆発した煙で見えない! どんどん撃って! 煙の向こうから突進してくるよ!」


 言い切らない内に白煙を突っ切って、ワイバーンの顔が現れた。

 即座にユーキがガンドを放つが、その見えるはずのない魔弾をワイバーンは避けて行く。

 竜種の瞳はガンドすらも見抜くのか、それとも野生の勘だとでもいうのだろうか。三発を避けきって、再装填をするユーキを嘲笑うかのように、口を開いて、その巨躯が降り注ごうとしていた。


「まずい。アイリス、ウンディーネ! 防御を!」

「だめ、あの巨体は止められない!」


 アイリスの悲鳴のような声が返ってくる。

 距離にして百メートルを切った時、誰もが馬車を捨てて逃げざるを得ないと考えた。

 その考えを切り裂くように、フランが思い切り杖に魔力を込めて叫ぶ。


「私の全力を食らいなさい! 『汝、何者も寄せ付けぬ一条の閃光なり!』」


 火魔法汎用初級呪文。それは本来、火球を作り出して放つポピュラーな魔法だ。

 難易度の高い魔法や特殊な魔法になると呪文の詠唱の仕方だけでなく、そもそもの魔法を扱うための杖や指輪と言った触媒を使い分けることも必要になってくる。

 ここでフランという少女が巻き込まれた数奇な運命が作用する。吸血鬼という種族は、「魔力を使いすぎると他人から魔力を血を媒介にして吸い取る」と認識されている。

 彼女自身、血を吸ったことがないためわからないことが多いのだが、魔力の使い過ぎで倒れたことがあり、今はユーキたちのおかげでペンダントから魔力が供給されているのが現状だ。

 ここで魔力を溜め込んだルビーという名のペンダントについて考えて見る。これもまた、()()()()()()としての条件を満たしているのではないか、と。

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