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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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脅威拡大Ⅱ

「あいつらは、流れのB級の冒険者パーティでな。そこそこ魔物の討伐数が多く、デカい魔物も何度か狩ってるのは確かだ」


 ギルドマスターの口ぶりからするに、そう言った記録もしっかり残っているのだろう。だからこそ、詰められていたことが勇輝たちは気になった。


「そんな、彼らが一体何をしたというんですか?」

「『依頼書の偽造・不正譲渡に関連する禁止行為』及び『不注意による危険行為』ってところだな。アイツらが持ってきた依頼書は、ギルドが作った物じゃない非合法の物だ。(たち)の悪いことに内容や注意事項、報酬はギルドが提示するものとほぼ同じだ。一見するとギルド職員でも見逃しかねないな」

「そんなこと普通の奴ができるのか?」

「無理だな。少なくとも、作ったのはあいつらじゃない。あいつらに取引を持ち掛けた第三者がいるはずだ」


 一刻も早く、その存在を見つけないことには対処の仕様がない。だが、それ以上に焦っているのは、もう一つの理由からだった。


「それで? その依頼書だけじゃないんでしょ? ヤバい話って言うのは」

「あぁ、依頼書の内容は『ワイバーンの卵の納品』だ」


 一瞬で、周りの空気が凍り付いた。

 唯一、状況を把握できないユーキがギルドマスターへと問いかける。


「それのどこが危ないんですか?」

「お前さん。それなりに冒険者ランクが高かったはずだが、ワイバーンの生態を知らないのか? いや、そもそも、冒険者じゃなくてもワイバーンの恐ろしさはわかるだろう?」

「いや、二ヶ月くらいになったばかりで……。おまけに記憶もいくつか事故で無くしてるので」

「むっ、そりゃあ悪かった」


 目を丸くしてユーキを見つめたギルドマスターは軽く謝罪して、説明を始めた。


「ワイバーンは基本的に群れるが、子育てに限っては雌の仕事だ。それに関しては群れのワイバーンどころか番の雄ですら関わることは許されない。そんな中で卵を盗られた場合、雌のワイバーンは死ぬまで卵を追いかけてくる。文字通り命懸けでな」

「他のワイバーンは……?」

「いや、幸いなことに親の雌だけだ。だからこそ、こういう依頼には注意事項として必ず書かれていることがあるんだ。ワイバーンの卵捕獲の際は、()()()()()()()()()()()()()、とな」


 ユーキは先ほどのギルドマスターの怒り具合に納得がいった。

 アイリスがドラゴンの鱗だと思ったのは実際はワイバーンの鱗。それも殺したものではなく、生え変わりで落ちていたものだ。


「つまり、納品された我が子を探して、ワイバーンが襲ってくる可能性がある?」

「ご名答」

「うわぁ……」


 ユーキも遅れて、周りの凍り付いた状況を把握した。ギルドマスターが知っているかどうかはわからないが、下手をするとこの街は蓮華帝国とワイバーンを同時に相手にして生き残らなければならない。

 いくら魔法によって上空にも結界が張られているとはいえ、ワイバーンを防いでいられるほどの強度があるかわからない。ドラゴンほどではないにしろ、それなりの火力を持っていてもおかしくないからだ。

 ユーキは以前に出会った老いた火竜を思い出しながら身震いした。金属を溶かす炎のブレス。それだけでも脅威度は普通の兵士よりも格段に跳ね上がる。


「あの、ギルドマスターさんって、例の国のことはわかってるのかな?」

「さぁね。父さんとギルマスは仲が良いけど、ギルド全体となると複雑になってくるんだよね」

「あまり話さない方が、いい?」


 サクラたちがこそこそと話す様子を見て、ギルドマスターも何か勘づいたようだった。


「なるほど、嬢ちゃんたちにフェイもいるってことは、つまり()()()()もわかってるってことだな?」

「ってことは、まさか?」

「もちろん。蓮華帝国の挙動なら俺の方にも色々と入ってきているぜ。既に伯爵からの要請で監視する冒険者を雇ったり、付近の魔物を一掃して後方から襲われないようにしたりな」

「なるほど、それで……」


 フェイはいくつか思い当たるところがあった。

 街に向かう途中で魔物を探していた冒険者。その他にもシャドウウルフを狩る時に何度かすれ違った冒険者もいる。恐らく、王都からの通信でビクトリアを経由して冒険者ギルドに依頼していたのだろう。

 もしかすると、ビクトリアが試験と称してマリーたちに魔物を狩りに行かせたのも、裏にはそういう事情があったからではないのだろうか。


「伯爵からしたら余計なお世話かもしれないがな、この戦争は間違いなく起こる、というのが俺の予想だ。だから、あまり無理をするんじゃねえぞ?」

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