脅威拡大Ⅰ
「馬鹿野郎っ! てめーら、何て事をしてくれてんだ! 面倒ごとに面倒ごとを重ねてくるとは、死にてーのか!?」
「ま、マスター。お、俺たちは別に正規の依頼をこなしただけ……」
「何が正規の依頼だ!? こんなショボい依頼書があるか!? お前も間抜けだが、周りの仲間も揃いも揃って間抜けも良いところだっ!」
髭面の大男が若い男を突き飛ばして仁王立ちしていた。その顔は怒りで真っ赤に染まり、今にでも顔の穴と言う穴から火が噴き出てきそうだった。
「一体、何があったんだ……?」
不思議そうにしているのはユーキたちだけでなく、最初から中にいた冒険者たちも同じようだった。
「あれ? あいつらB級冒険者パーティの奴らじゃなかったっけ? 何であんなギルマスお冠なんだ?」
「さっきの言葉だと依頼書偽造っぽいよ? それか、ヤバい案件に手を出しちゃったのかもね。怖い怖い」
入口近くにいた二人組の男が会話している声が耳に入った。
確かに依頼書は魔法契約の施された羊皮紙を使っている。冒険者のほとんどが知っていることだが、それをわざわざ偽装するなんてことをするだろうか。
「それよりも、さっき持ち込んだ物だ! どこの誰から入手しやがった!? 言わねーなら、ここで血祭りにあげて、冒険者資格剥奪の上、伯爵に引き渡してくれるわ!」
「ひいいいいっ!?」
詰められている冒険者を遠巻きに見る人垣越しに会話を聞いていると、物騒な言葉が聞こえてくる。
「おっかねー。あたしの父さんに引き渡すってことは処刑レベルかよ。何やらかしたんだ。あいつら」
悲鳴を聞きながら、マリーが冗談抜きでドン引きしていた。それはクレアも同じだったようで、ギルドマスターに詰め寄られている冒険者たちの動向を見守っていた。
「それで、当然だが、生死の確認は、とってあるんだろうな!?」
「こ、これが、その証拠でもらった物で……」
仲間がバッグの中からキレイに光る板状のものを取り出した。それを奪い取るとギルドマスターは天井に備え付けられた魔法石の灯りに向けて、光の透過や反射具合を確かめ始める。軽く十秒ほど見た後、手に掴んだそれを尻もちを着いた冒険者の脇に叩きつけた。
「こりゃあ、剥ぎ取ったやつじゃねえ。生え変わりみたいに抜け落ちたやつだ。つまり、アレの親はまだ生きてるってこった。お前さんら、完全に掴まされたな!? おい! こいつらを連れてけ!」
ギルドマスターの一声で後ろに控えていた職員が、その場にいたパーティ五人を取り押さえ、奥の部屋へと連れて行く。
肩で息をするギルドマスターにクレアが後ろからそっと近づいた。
「大変そうだね。そんなにヤバいことでもあったの?」
「うおっ!? 誰かと思ったらクレアの嬢ちゃんか。驚くから気配を殺して近づくなって言ってるだろ!?」
「ゴメンゴメン。それより、あの人たち何をやらかしたのさ」
「いや、流石にそれはここじゃ話せねえな」
ギルドマスターは周りを見回しながら声を潜める。クレアの後を追ってきたマリーとフェイはいいが、アイリスやフランはもちろんのこと、ユーキとサクラに至っては完全に警戒している。
「さっきの、ドラゴンの、鱗?」
「ばっ、オメェさんら、ちょっと来い!」
アイリスの呟きにギルドマスターは表情を一変させ、アイリスの口を塞いだ。誰にも聞かれていないことを確認すると、連れて行かれた彼らと同じ方向に半ば強引に連れて行かれる。
そのまま、問答無用で一室に案内されると、そこはギルドマスターの職務室だった。
「ふぅ。一番小さいから油断してたぜ。嬢ちゃん、この話はあまり外で言いふらさないでくれよ?」
「わかった」
アイリスは解放されて、床に足が着くとトコトコと歩いてマリーの横に並んだ。
「それで、ギルマス。何が起こってるか説明してくれる? 一応、ここにいるメンバーはあたしの友達だから信用してくれていいぜ」
「一応、ギルドカードを見せてもらって構わないな」
「あぁ、フランは商会ギルドで作ったやつだけど構わないよな」
「大丈夫だ」
ギルドマスターは頷くと、提示されたカードを見て頷いた。若干、フランのカードで顔を顰めたが、それ以上は何も言わなかった。
「さて、何から話せばいいか……」
こめかみを中指の関節で押しながら、ギルドマスターは話し始めた。
【読者の皆様へのお願い】
・この作品が少しでも面白いと思った。
・続きが気になる!
・気に入った
以上のような感想をもっていただけたら、
後書きの下側にある〔☆☆☆☆☆〕を押して、評価をしていただけると作者が喜びます。
また、ブックマークの登録をしていただけると、次回からは既読部分に自動的に栞が挿入されて読み進めやすくなります。
今後とも、本作品をよろしくお願いいたします。




