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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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前兆Ⅷ

 いくつかの店を回った所で、広場の一角に集まってユーキたちは話をしていた。


「鍛冶屋だけじゃなく、防具に薬屋。雑貨に至るまで品不足が出始めていた。これは本格的にヤバいんじゃないか……?」

「どうだろうね。後で父さんに確認してみた方がいいかもしれないけれど、先手を打たれた感は否めないぜ」


 マリーがため息をつきながら広場を見渡す。

 道行く人の顔を見ていると横にいたクレアが同じようにその視線を追う。


「前に来た時と街の様子は、そんなに変わっていないように見える。ある意味不気味だね」

「こういう時の潜入は冒険者が一番手っ取り早い。けれど怪しい動きをしていたら流石に連絡があるはず」

「ギルドが裏切るわけないし、別の方法で……? 住民の誰かを脅すとか」


 お互いに気になる点を挙げて行くが簡単に結論が出るわけでもない。決定的な証拠が欠けている中で、せめて糸口を見つけようと考えを巡らせる。


「とりあえず、ユーキの代替の武器が見つかったのは良かった。まぁ、刀の方は王都に戻った時か、和の国に帰った時に買うと良いさ」

「そうだな……」


 ユーキは腰に差した剣を僅かに揺らした。

 結局、魔眼で探した中で光が一、二番目に強い物を選ぶことにした。重さも取り回しも最初に手に入れた剣に近いため、それなりには使えそうだった。

 当然、良い武器であることは製作者が一番わかっているらしく、それなりの価格設定もされていたが。


「一度、冒険者ギルドに寄っていこうぜ。何か情報が得られるかもしれないからな。それが終わったら飯でも食って、街巡りだ。ちょっと城壁の向こう側も見ておきたいしな」

「そういえば、城壁の向こうには川が流れていて、渡るのが難しそうですけど、その先はどうなってるんですか?」

「上流で別れた川がいくつか続く平原さ。あっちの方の川は橋を作ってないから、攻めてくるときは苦労するぜ」


 マリーがニヤリと笑う。

 重装備の上に、下手をすると馬などを失いかねない。疲労困憊しているところを打って出て良し、守って良し。どちらの戦法をとってもいいだろう。


「水攻めの心配は?」

「こっちの方が土地が高いから洪水の心配はないし、逆に水を止められてもこっちは川の水をそこまで使っていないからね。むしろ、自分たちの首を絞めるだけだと思うよ」


 フェイが真っ先に、その可能性を否定した。

 ここを攻めるならば、かなり遠回りをした上で背後から大軍を送り込む必要がある。そんなことをしていれば越境した時点で、王国側の援軍が来るのが先になるらしい。


「流石に、蓮華帝国の軍力を半数以上ここに集結させるほどの余裕はないですからね。フェイさんの言う通りです」

「え、何で、そんなことが言えるのさ」

「蓮華帝国の国土のほとんどが、作物育ちにくい場所なんです。だから糧食が大軍を長期間動かせるほど用意できないというのが実情なんです」


 商人として培ってきた他国の地理情報からの推測だ。かなり寒冷な地域で、庶民の中には冬場に死者も大勢出ることがあるという。


「軍の中には、開墾と農作物を専門に育てたり研究したりする部門があると聞きます。だから、あちらの国では、軍人になって食べ物を安定して食べられるようになるために志願する人が後を絶たないそうです」

「そうなんだ。じゃあ、軍事力が強いというのは……」

「はい、他国に比べて軍所属の人間が圧倒的に多いということです。実際の中身は農民と一緒ですから」


 サクラの言葉にフランは頷いた。


「それでも戦闘になったら強い、らしいです。攻め落としたところの物は一つ残らず略奪し、そのまま進軍を続けて国を一つ攻め落としたこともありますから」

「百年前にあった戦争だね。小国とはいえ、三十日で全ての拠点を攻め落とした戦いだ。住んでいた人は、みんな殺されたか奴隷にされたか、いずれにしても聞いていて楽しい話じゃないね」


 クレアの眉間に皺が寄る。

 今度は自分たちの街に、その侵略が起ころうしているとなれば無理もないだろう。雑踏のざわめきの中で嫌な沈黙が続く。

 そのまま歩き続けていると、冒険者ギルドの前まで辿り着いていた。


「さっ、ここがあたしたちの街の冒険者ギルドだ。王都ほどじゃないけど、それなりに儲けているから、結構豪華だぜ」


 マリーが誇らしげに胸を張ったところで、ギルドの中から怒声が響いた。

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