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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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大源と小源Ⅴ

 メリッサがビクトリアにユーキのことを報告しに行っている間、オースティンに付き添われて、みんなで屋敷中を歩くことになった。


「ユーキさん。大丈夫ですか? まだ寝ていた方がいいんじゃ?」

「大丈夫だよ。むしろ、早く体の勘を取り戻さないと何かあった時に困るからね」


 屋敷を回りながら、マリーたちがどこにいるか説明を受けたユーキは、そう答えた。

 緊急時に足を引っ張るのはごめんだった。逃げるにしろ戦うにしろ、体が動かないことにはどうしようもない。体は動くようになったが、どこか寝ているような不思議な感覚がある。

 会話をしながら外へと出ると、ユーキは景色に既視感を感じた。どこかで見たことがある雰囲気だ。周りを見回して、少しずつ自分の背後にあるものが予想できてくる。


「あの……ここって、マリーの実家なんだよ……な?」

「あぁ、そうだぜ!」

「まさか、ね」


 そうして振り返った目の前にあったのは、屋敷ではなく城だった。

 それもそのはず、国境を任された伯爵の家が普通の屋敷ならば、攻め込まれた時の防御力に不安が残るだろう。そこまで攻め込まれたらほぼ陥落同然だとは言え、重要拠点を脆くする理由はないからだ。


「二重の城壁にその前を流れる大きな川。この街を落とそうとするならば、相当手こずることになりますね」

「その通りです。加えて、ここからは街の全景が見渡せます。伯爵の指示が行き届きやすいのです」


 フランの言葉にオースティンは嬉しそうに頷いた。

 ここからは見ることができないが、城壁の向こうには川が流れており、ここを攻めるには橋を渡って正面突破するか川を渡って城壁をよじ登らなくてはならない。


「でも、身体強化とかで無理やり乗り越えてきたら、流石に防げないよなぁ」

「ユーキ。そういうのは誰でも考える。誰でも考えるということは、対策があるってこと」


 アイリスが杖を抜いて小さな火球を放つ。

 そのまま屋敷と言う名の城を囲む壁の上へと進むと唐突に破裂して掻き消えてしまった。


「基本的に城壁の上空は結界が張られているのです。それは魔法だけでなく、物理的な攻撃も防ぐものなのです。こういったものを見るのは初めてでしたか?」

「はい。こういう知識には疎くて……」

「それならば、そういう類の本もご用意しておきましょう。きっとビクトリア様も貸し出してくれますよ」

「そうですか。申し訳ありません」


 そう言いながらユーキは火球が飛んでいった方に向けて、魔眼を開く。

 痛みもなく開くことができてほっとしながら、オーロラのように揺らめく魔力のカーテンに紅の光が当たって弾けるところを視認した。魔法学園の結界は魔眼でしっかりと観察したことがなかったので新鮮な気持ちになる。


「この土地に流れるマナを術式を通して結界にしています。よほどのことがない限り、半永久的に持続するものです。例え破壊されたとしても、小規模なら再生もできますから」

「術式が破壊されたり、魔力が途切れたりしない限りということですか?」

「はい。術式を壊すには中に入るしかないですし、魔力がなくなるとなれば、それこそ天変地異でも起こらない限り無理な話かと思われます」


 サクラの疑問にオースティンは苦笑いで返す。


「何せ、ここで反乱が起こった時でさえ、この街の結界は破られなかったのですからね。ビクトリア様の魔法でやっと罅が入るかどうか、といったところでしたから」

「え、その話初耳なんだけど」


 マリーがオースティンの言葉に食いついた。

 一瞬、オースティンはしまったという顔をしたが、すぐに頭を下げた。


「失礼、言葉を間違えました。ビクトリア様でも罅が入るかどうかわからないだろう、という予想でございます」

「何だ、本当に魔法を放ったことがあるかと思った」

「あのね。お母さんが、そんなことするわけないでしょ? 結界を破壊するレベルでお母さんが魔法を放ったとしたら、ここの人たち全滅してるわよ」


 クレアが呆れたように言い放つが、そこでユーキはサクラに問いかけた。


「あの、さ。魔法学園の結界って、ここと比べるとどれくらい凄いんだ?」

「多分、同じくらいなんじゃないかな?」


 国王を守る最終防衛ラインと外敵を真っ先に迎え撃つ国境。どちらも重要度は高い。それ故に桜は同じと答えたのだろう。そんな返事に勇輝は自分自身を指差した。


「つまり、あれを壊した俺は……」

「あっ……!?」


 ユーキとサクラは顔を見合わせた。ちょっとしたことで魔法学園の結界を壊したことがある身として、改めて学園長に助けられていたのだと実感した瞬間だった。下手をすれば、そのまま処刑されていてもおかしくないことをしでかしていたことを再認識させられる。

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