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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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いざローレンスへⅤ

 後ろの騎士たちの視線を浴びながら、慌ててアンディは馬の手綱を握り直した。


「待ってください。それって、いつの話ですか? まさか宮廷魔術師時代ですか?」

「おう。あいつは学園を卒業と同時に宮廷魔術師になったんだが、その数か月後に俺が伯爵になるきっかけになった、ローレンス領奴隷反乱事件だ」

「確か、奴隷解放運動と称して蓮華帝国のスパイたちが侵略戦争を起こした件ですね」

「あぁ、あの時は酷かった。俺でもよく生きてたなと思ったからな」


 当時のローレンス領に入り込んだスパイが、奴隷たちを縛る魔法の契約書を何らかの方法で片っ端から破棄し、暴動を扇動した事件だ。当時いた多数の奴隷の前には訓練された騎士も多勢に無勢。たった数時間で多くの騎士が倒れ、辺境伯は暗殺されるという大事件に発展した。

 当然、蓮華帝国は知らぬ存ぜぬを貫き通し、ファンメル王国側もそれ以上追及することはなく、緘口令を引いた。それでも、多くの者が蓮華帝国の仕業であると確信しているようだ。


「冒険者として活動していたあなたが、一人で全員を生け捕りにした。普通は信じられないですよね」

「それで、だ。その話には続きがあってな」


 馬の早さを僅かに上げつつ、伯爵は言葉を紡ぐ。心なしか、眉間に皺が寄り始めていた。


「当然、暴動や反乱の類があったとわかれば、侵略戦争をする側からすれと願ったり叶ったりな状況だ。攻め込まれるのは時間の問題だっただろう。辺境伯は即座に王都へと連絡を取ったところ、送られてきた人物がビクトリアだったわけだ。さて、ここで問題。ビクトリアの考えた解決方法は何だと思う?」

「そうですね。やはり今の陛下の国民への優しさを考えると……無傷で捉える魔法でも使ったのでは?」


 伯爵は鼻で笑うと首を振った。


「逆だよ逆。領土も何もかも一撃で吹き飛ばそうとしたんだよ。()()()はな」


 普段は類を見ないほどの仲良し夫婦なのにも拘わらず、昔を思い出しているこの一瞬だけ、伯爵の目に剣呑な光が宿った。


「さぁ、人の恋話は終わりだ終わり。とりあえず、少年の為にもさっさと怪しそうなところを見回って、急ぐぞ」

「…………」


 アンディはスピードを上げた伯爵について行くべく、手綱を振るった。

 伯爵の言葉には半信半疑で、頭の中が混乱していたが、そこは騎士として瞬時に気持ちを切り替えて行く。空は青く晴れ渡っているというのに、二人の心の中には淀んだ雲がかかっているかのような面持ちだった。

 しばらく進んで休憩を挟み、また進む。何度も繰り返すうちに伯爵たちはローレンス領の村の一つに辿り着いた。バジリスクが出た村ほどではないが、広大な耕作地以外にも近くの森から得られる果樹などで作った酒や風味づけされて飲みやすくなったポーションが特産だ。

 騎士たちも酒を飲みたい衝動に駆られるのを抑えて、聞き込みをした後に夕食をとる。そこで情報を共有した後に早めに寝て、朝日と共に出発する予定だ。

 こんなことも想定されているため、この街道沿いにある村にはある程度の人数が雑魚寝できる部屋が用意されている。普段は冒険者などにも貸し出しているが、今回のような場合は伯爵たちの貸切だ。

 見張りを十人ほど立てた後、交代制で眠る形になる。





 そんな中でマリーたちは一部屋に集まって、床よりはマシ程度なマットのようなものの上に横たわっていた。


「この調子だと明日の晩には着きそうだな」

「特に問題なく進んで来れたけど、大丈夫ですか?」


 フランが不安そうな声を上げる。対して、ここは自分の家の庭のような物だとマリーが得意気に口を開いた。


「いや、もう少し進んだところにダンジョンがあったはずだ。父さんが本気になれば、一時間で潰せる程度の天然のダンジョンだ。冒険者とかを寄せるために残してあるらしい。後は騎士団の新人に経験を積ませたりとかね」

「お手軽、そう」

「そこが狙われるってことはない?」


 呑気なアイリスに対してサクラは心配そうにする。そんな中、マリーは手を振って否定した。


「ないない。騎士団が間引きを定期的に行ってるはずだし、中にいるのは巨大なネズミとかワームくらいさ。外に出てきたとしても、他の魔物の餌になるくらいかな」

「じゃあ何事もなく、領地に着けると良いね」

「まぁ、あったとしても父さんたちだけで何とかなりそうだけどな」


 月が出てからしばらく話していたが、眠気が勝ったのか少女たち四人は、いつの間にか夢の世界へと旅立っていた。

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