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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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いざローレンスへⅢ

 サクラの言葉に疑問が浮かんだのはフェイだけではなかった。アイリスは読んでいた本から視線を上げ、マリーはぽかんと口を開いている。


「――――あのな。あたしもユーキは凄いなって思うことはあるし、この前のバジリスクを相手にした時だって、役に立てたかは怪しい。だけどさ、あたしたちにできることはやったじゃん」

「あそこで私が襲われなかったら、ユーキさんはあんなことにはならなかったんじゃ……」

「それじゃ、あれだ。運悪く狙われたのがサクラじゃなくてあたしだったら、それはあたしが足手纏いってことになるよな」

「そんなことは……!」


 サクラは反論しようと顔を上げるが、すぐに俯いてしまった。それを見たアイリスは本に目を移しながら呟いた。


「サクラは土魔法。フランは火の魔法。私は水の魔法でそれぞれにできることをした。ユーキにはできないこと。だから一人でも欠けたらできなかった。邪魔な人なんていなかったと思う、よ」


 静かに紙が捲れる音が響く。フランが感心したように口を広げる一方で、マリーはアイリスの本を取り上げた。


「おっと誰か大切な人を呼ぶの忘れてないかな?」

「マリーは言ったら調子に乗りそう。だから、放置」

「いや、あたしだっていろいろ頑張ったじゃん」

「…………」

「何か言えよっ!」


 ジト目で本を催促するアイリスに、マリーは本を取り上げたまま脇腹をくすぐろうと手を出す。馬車が揺れ始めると外から声がかかった。


「マリー。あまり暴れると周りの人が心配する。何かあった時はみんな頼りにしているから、しっかり体力は温存しておいてくれ」

「くっ、アイリス。後で覚えてろよ」


 フェイに諭されて、マリーは肩を震わせながら、ドスンと腰を下ろした。

 そんなマリーに苦笑いをしながら、フェイはサクラへと呼びかける。


「ユーキはそんな心の狭い奴じゃない。むしろ話を聞く限り、サクラさんだからこそ力を発揮できたんじゃないかな?」

「私、だから……?」

「いつだったかユーキと二人で話をしていた時に聞いたよ。この王都で初めて話し掛けてくれたのが君で何度も助けられたって。そして君はゴルドー男爵に襲われた時に助けられ、またその直後に彼を助けている。お互いに何度も助け合っていた関係があったからこそ、土壇場で限界を超えて動いちゃった、というところかな。それに異国の地で同郷の人間は、そこにいるだけで救われることもあると思うよ」


 どこか寂しそうな顔でフェイは御者台へ戻ると、いつでも出発できるように待機状態になる。




 その背中を見ながらサクラは、もう一度ユーキと出会った時のことを思い出してみた。

 自分ばかり助けられた記憶があったが、思い返してみると依頼の受け方を教えたり、魔法を教えたりしたことを思い出す。サクラ自身も留学してきた当初は知らないことばかりで心細かった。マリーとアイリスに出会えなかったら、今のように楽しく過ごせていないだろう。

 自分では大したことがないことでも、相手にとってはそうではないこともある。


「じゃあ、私は……」

「おっと、それは僕には聞かないでくれ。どうせ聞くなら、本人に出会って、直接聞く方がいいと思う」

「そう、だね」


 少しばかり表情に余裕が出たサクラを見て、馬車の中も空気が柔らかくなったように感じた。

 フェイがほっと息をついていると、すぐ横から野太い声が聞こえてきた。


「なぁ、兄ちゃん。聞きたいんだけど、この騎士様たちは魔物退治にでも来られた帰りか何かかい?」

「どうかしましたか?」

「いや、俺たちはローレンスのギルドで受けた魔物狩りの依頼をやろうと思って来たんだが、どうにも魔物が見つからなくてね。もしや騎士様の部隊と場所がかち合っちまったのかと思って不安になったんだよ」


 スキンヘッドの巨漢が親指で後ろを指し示す。その方向には同じように三人ほどの冒険者が不安そうに見つめていた。

 すると確認が済んだのか、後方をまとめていた小隊長が声をかけてきた。


「どうした、フェイ。なんかあったのか?」

「いえ、こちらの冒険者の方が我々が魔物を狩りきってしまって、依頼を完遂できないのではないかと不安で声をかけたみたいです」


 フェイの言葉を受けて巨漢を上から下まで食い入るように見つめた後、肩を竦めた。


「我々は通りかかっただけだ。もし魔物を狩りつくされたというのなら、それは我々ではなく、他の冒険者か、恐ろしい上位の魔物の仕業だろうな」

「はっ。騎士様も冗談がお上手だな。ここら辺にそんなヤバい魔物がいるなんて聞いたことがない」

「奇遇だな、私もだ。もし見つからないようなら、それをギルドに報告すれば満額ではないが、報酬が支払われることもある。引き際を誤らなければ赤字にはならないだろう」

「ご忠告どうも。道中お気をつけてくださいなっと」


 納得したのか男は仲間の下へ向かっていく。大きなハンマーを受け取って、二、三言葉を交わすと、少し離れた森に駆けていく。どうやら、魔物をもう一度探し直すようだ。

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