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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第7巻 黒白、地に満ちる鬨

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いざローレンスへⅡ

 第一王女アメリアによって開かれた転移門を潜ってから一時間が過ぎた。

 行軍速度は早く、身体強化を馬に施しているのか、ユーキが見たら自動車と見紛うばかりの速さだった。そんなスピードで走っていれば、すれ違う人を轢いてしまいかねないものだが、見通しが良いので通る人物がいても事前に避けてくれていた。

 加えて、現在通っているのは基本的に冒険者や商人、軍所属の者しか使わない道だ。主要目的は二つあり、今回の場合のように急いで王都との行き来をしなければならない時に使うため。もう一つはその近辺の魔物を狩るためである。

 今回すれ違ったのも魔物を狩りに来ていたり、道の整備修繕をしていたりした冒険者たちだった。

 ちょうど五組目の冒険者パーティをすれ違った辺りでアンディが伯爵へと声をかける。


「伯爵。些か飛ばし過ぎではないですか? 行軍病が出てしまえば、全体的に見て大きな遅れにつながるかと」

「そうだな。流石に陛下に貸し与えられた馬を潰してはお叱りではすまないかもしれん。後で宰相の爺の小言を聞きたくはないからな。……休憩を三十分程とる。それまでに馬の状態も万全にしておけ」


 アンディが手を挙げると速歩から常歩に少しずつ早さを落とし、数分かけてゆっくりと止まった。


「負傷者がいるか確認。各隊、報告後は見張りを立てて休め」

「了解」


 アンディが後方へと伝令を飛ばしながら、隊の全体を見守る。

 少しばかり急いでいるが、騎士や馬たちの様子を見る限り、後数回は同じペースでも行けそうであった。運搬用の馬車が心配だったが、風と地の魔石を使った浮遊魔法のおかげで負担はほぼないと言っていい。

 国王は笑って使用を許可したが、横にいた宰相の胃の痛そうな顔は忘れられない。落ち着いたら、それなりの謝礼を考えることが必要になる。伯爵辺りは気にしなさそうだが、こういうところを態度で示しておかないと他の貴族に何を言われるかわかったものではないのだ。

 ため息が出そうになるのを抑えつつ、アンディはマリーたちがいる馬車の方に視線を向けた。御者を務めるフェイと目が合うが、特段気になる表情ではなかったので、頷いて伯爵の下で報告を待つことにした。





 一方、目を向けられたフェイは、表情こそ普段のままだったが、背後から感じていた雰囲気に顔が引き攣らないようにするので精いっぱいだった。


「あの……サクラさん。このお菓子とか食べませんか?」

「大丈夫。ありがとう」


 先程からフランが話しかけているが、どこか上の空と言うか。心ここにあらずと言うか。つまるところ、空気が非常に重い。マリーも何度か話し掛けようとは試みているが、自分の母親が原因なだけに話し掛け辛い。そして、アイリスは読書に夢中。

 結果、マリーとフランの助けを求める視線がフェイの背中に集中するわけだが、ここで一言でも話そうものなら、近くの先輩騎士から鋭い視線が飛んでくるのである。これを数日続けることを考えると胃が痛くなりそうだ。


「これなら、まだ伯爵と模擬戦をやる方が気が楽かも……」


 肩を落としながら御者台から降りて馬へと補給を行う。

 背後からの視線が感じられなくなり、ほっとしながら馬車を見る。


「地の魔石を使った磁力による浮遊で振動を軽減。風の魔石を使った浮遊で重量の軽減。二重付与された馬車か。これを作るにのにどれだけかかるのやら」


 もし、これを壊したとしたら、とてもではないが弁償しきれない。それを自分が操ることになったときは手と足が震えてしまった。

 自身も水を飲みながら周りを見渡す。幸運なことに魔物も少ないようで、あまり気を貼らなくて済みそうだ。そう思っていた矢先、サクラの声が馬車の中から聞こえてきた。


「私って、ユーキさんの足手纏いなのかな?」

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