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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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斯くして翡翠は蒼天に消えるⅢ

 帰り道を歩くサクラにマリーが声をかける。


「あのさ、サクラ。うちの母さんが何か暴走しちまってごめんな」

「ううん、いいの。多分、私よりもビクトリアさんの方が、きっといろんなことを知ってるだろうから」


 振り返らずにサクラは魔法学園の方へと進んで行く。マリーからはその表情をうかがい知ることができない。唇を噛みしめるマリーの横で、フランはサクラとマリーを交互に見ながら慌てるばかりだ。


「ア、アイリスさん。どうしよう。なんかよくない雰囲気です」

「どうも、できない。ユーキはローレンス領。私たちは王都。とてもじゃないけど会いに行ける距離じゃない」

「でも、マリーさんのお母様は箒で飛んできてましたよ?」

「元宮廷魔術師の魔力を総動員すれば、音すらも置き去りにできるくらい早い」


 アイリスはフランの問いに答える。

 宮廷魔術師は、その名の通り国に召し抱えられた魔術師のトップだ。特にその中でも国王に認められ、進言することすらも許される。どの時代にも様々な規定が設けられたが、共通するのは強さであった。

 今でこそ大きな国がバランスを保っているが、他にも様々な国家が存在している。国土が小さくとも魔法技術が優れた国家も存在すれば、そもそもどこに国があるかもわからないようなエルフの国も存在する。

 何より、この世界における脅威は人間ではなく魔物だ。時折、現れる魔王などはその最たるものといえるだろう。


「ハッキリ言ってレベルが違う。冒険者で言うならA級を子ども扱いにするくらい」

「確かにあの火柱を見たら、否定できませんね」


 言葉こそ発したものの、詠唱ではなかった。それほどまでに使い慣れた殲滅級の火魔法。自分たちが使う魔法との歴然とした差に、驚嘆だとか嫉妬だとかいう感情は浮かんでこなかった。


「いや、でもこの状況なら、上手くいけばローレンス領に赴くことも可能化もしれないね」


 フェイが呟くとサクラの歩みが止まった。マリーも遅れて立ち止まると、フェイに問いかける。


「どういうことだ。フェイ」

「今回の件で陛下は魔王の復活に対して、更に警戒を強めることになる。そんなときに一番邪魔なのは、()()()()()()()()()()()?」


 少し挑発気味にフェイが問いかけると、マリーは腕を組んで唸った。

 数秒後、彼女は腕を解いて腰に手を当てて宣言する。


「わからん!」

「……聞いた僕がバカでした」

「なんだと。フェイ、ちょっと最近生意気だぞ? 昔はもっと優しかったのに」


 間合いを詰めるとフェイのほっぺたを掴んで両側に引っ張る。

 マリーの腕をタップして降参を示していると、サクラがいつの間にか近づいて来ていて、マリーの腕を掴んだ。


「フェイさん。続けて」

「ひゃ、ひゃい!」


 口を開かせたまま答えた為か、変な声が漏れ出る。

 口の端を擦りながらフェイは声を潜めて、説明を始めた。


「この場合、最悪のパターンは魔王に対応している間に他国に攻め入られることです。魔王の討伐が始まってしまえば、協力を余儀なくされますが、その前ならばあくまで当事者国だけの問題です」

「じゃあ、魔王を倒してから何とかすればいいのでは?」

「兵を多数失った所で戦争に行く力が残っていれば、ですがね」


 国民の厭戦感情、財源・食料確保、被害地域の援助。考えれば考えるほど、人手と金が消えていく。そんな中で奪還作戦は諸刃の剣だ。


「だからこそ、陛下が考えるのは一つ。魔王が復活するまで侵略をさせないこと。だからこそ、ローレンス伯爵は自らの領地。つまり、対蓮華帝国として壁となるべく、帰還をすることになると考えられます」

「ということは、それに一緒について行けばいいとでも?」

「それはわからないですね」

「魔法学園の授業はどうするんですか?」


 せっかく通えるようになった魔法学園を休学してまで行くのは、フランにとっては悲しいことだ。だからといって、ユーキのことを放っておくこともできない。


「可能性としては、一度帰省するようにお触れが出る可能性もあるとは思います。戦争も当然だけど、魔王討伐は貴族や騎士には名を上げるチャンスですから。何らかの表向きな理由をつけて、各領地で準備をさせるでしょう。跡継ぎの子息には色々と引き継がなければいけないことも有りますし、ね」


 手をパンと叩くとフェイの口元に笑みが浮かぶ。


「そういうことで、マリーお嬢様。そういうことがあった時は、どうですか?」


 マリーの視線がサクラと交差する。

 お互いに見つめ合った後、サクラが口を開いた。


「もし、その時にはお邪魔してもいい?」

「もちろん。嫌って言っても連れて行くぜ」


 マリーの返事を聞いて、サクラはレナに渡された小瓶をぎゅっと右手で握り込んだ。

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