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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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寸陰、日を跨ぐⅣ

 村人を全員連れての大移動。眠ったままのユーキを、マックスとウッドが交代で背負いながら道を行く。

 村のほぼ全てを灰に帰したというのにも拘わらず、村人の表情はどこか晴れやかだった。


「みんな、これからが大変なのによく笑ってられるな」

「逆だよ。死んでいたら大変だと思うことすらできない。彼らは困難が待ち受けていることを生きる喜びとして受け入れる力があるだけだ。まぁ、国の支援がかかることを考えれば、そこまで難しくはないし、残った食料や畑も多い。数年で元に戻すことはできるだろう」


 二人は目を細めながら、道の先に見える村の入り口へと視線を向ける。

 先に逃げた女子供たちが歓声を上げて出迎えていた。多くの者が涙を流し、家族と喜びの抱擁を交わそうと走ってくる。


「そういや、俺たちの依頼人はこっちから来る予定だったな。もしかしたら、足止めを食らってるかも」

「この場合、依頼はどういう扱いになるんでしょう」


 後ろで聞いていたリシアも不安そうに呟く。せっかくレナのA級昇格に水を差すかもしれないと考えると深刻な問題ではある。


「何の依頼を受けていたんですか?」


 ユーキを心配してついて来ていたサクラたちの中からフランが尋ねるとウッドが前を向いたまま答えた。


「護衛依頼みたいなもんだな。学者の調査に付き合って、調査中の安全確保がメインだ。さっきの村の森だから、数日早かったら危ないところだった」

「なるほど、だったら当分は無理そうですね。この場合は、事情を話して依頼を取り下げてもらうのが、賢明ではないでしょうか。恐らく、兵が派遣されて一帯が立ち入り禁止になると思います」

「それなら依頼失敗扱いにはなりませんね。良かったぁ」


 リシアがほっと溜息をつくが、昇格予定の当の本人は至って冷静で、何も気にしていないようだった。まだバジリスクの魔眼の効果が残っているため、彼女は弓と矢筒だけを背負い、残りの荷物は回復したキャロラインとレベッカが持っている。


「別に私は、その程度のことを気にしない」

「A級の名に傷がついたら困るでしょ。せっかくの昇格なんだから、もっとそういうことも気にしてよ」

「そういうのを考える時間が、無駄だと思う」


 レナの返答に怒りながらも、リシアは笑って話をしていた。よほどレナの昇格が嬉しいのだろう。

 元々、昇格が確定していたこととはいえ、彼女の会話の中には大抵レナのことに関するものが混ざっている。


「あの、サクラさん。大丈夫? ボーっとしているようだったけど……」

「え? あ、うん。ちょっと考え事をしてたの」


 フェイに声をかけられるまで、ずっとサクラは黙ったまま歩き続けていた。いつもならばマリーやアイリスが話し相手になっているはずだが、ビクトリアが二人と話をしているせいで話す機会が少なくなっていた。

 だが、サクラの意識はマリーたちよりもユーキへと向いていた。


「この前はちょっと戦っただけで倒れたのに……。あんな戦い方をして無事なはずがないよ……」


 しかし、ウンディーネに問いかけてきても、外も中もある程度回復しているはずだと返ってくる。隣村までの道中で何度も確認をとったが、それでも答えは一緒だった。


『サクラさん。聖女とウンディーネである私たち二人の治療を受けたんですから、並大抵の毒は解毒しますし、大抵の怪我は治ります。恐らく、胴が真っ二つになるレベルでなければ、ほとんど治るでしょう』

「(それでも、何かありそうで心配なの)」


 思念を飛ばして来たウンディーネの言葉に返事をするも、サクラの目にはただ背負われて運ばれていくユーキの姿しか映っていない。その姿を追いながら、どこかに異常がないかずっと探している。最初は他のメンバーも見ていたが、最後まで目を離さなかったのはサクラだけだった。

 そのまま、前を進むウッドたちに着いて行こうとすると横から声がかかる。


「おや? 君たちはこの前の患者さんたちじゃないか」


 誰かと振り返ると、王都の冒険者ギルドでユーキに治療を施した男。ギャビン・サリバンが立っていた。

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