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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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寸陰、日を跨ぐⅡ

 一瞬、何が起きているかわからなかった。

 体中が痛いのは仕方のないことだ。聖女護衛の為に鍛えたソフィアと違い、自分はまだ訓練したての新米だ。筋断裂や骨折で済めばいい方だとは思っていた。

 それよりも恐ろしいのは体中、内も外も火傷したかのような痛みに覆われる。永遠と思われるような苦しみが続くかに思われたが、体中を冷たいものが吹き抜けていく度に痛みは治まっていった。

 誰かが近くで話をしているのはわかるが、耳をやられているのか上手く聞き取ることができない。声を出そうにも舌どころか、指一本動かす気力が残っていなかった。

 諦めて体を休め、届く声に意識を割くこともやめる。暗い視界の中で、心地よく体を流れる魔力に身を任せた。





「確かに彼がバジリスクの頭部と胴を消し飛ばしました」

「遠目で見たけど、かなり出力があったわ。何の魔法かわかるかしら?」


 ソフィアだけでなく、周りへと視線を向ける。するとサクラがおずおずと答えた。


「その、ユーキさんはガンドを得意としていました。だから今回のもガンドなんじゃないのかな、と」

「魔法学園の城壁に穴を開けるくらい、強い」


 二人の言葉を聞いて、ビクトリアは唖然とした。それもそうだろう。ガンドの本来の威力は気分を悪くする程度、伝承クラスで心の臓を止めるレベルの話が存在するが、それでも眉唾ものと思われているからだ。


「……二発目は炎が上がっていたようだけど?」

「前に見たときは、ガンドの要領で火の初級魔法を使った時に、凄い威力になってたから、それなんじゃないかなぁ」


 マリーが思い出しながら呟くと、流石に嘘ではないと思ったのかビクトリアも頭を抱えた。どうにも勇輝が色々とイレギュラーらしいことを理解したようだ。


「なるほどね。他にわかりそうなことは?」

「断言はできないですが、彼は私の技を真似ていました」

「と、いうと?」


 ソフィアの言葉に愉快そうにビクトリアは反応する。魔法を扱う者の中でもトップクラスに君臨したものとしては、新しい情報に敏感に反応してしまうものなのだろう。


「どうやってかはわかりません。少なくとも、あれだけの出力を得るには、それ以外に方法が浮かばないものですから」

「そういえば僕も聞きたいと思っていたんだ。いくら聖剣を使っても、あれだけの動きをするのは相当な鍛錬を積んだってだけじゃ説明がつかない。それなりに自分も鍛えてきたからわかる」


 マックスがソフィアの言葉に食い気味で割り込んでくる。

 彼が並走しようとした時、ソフィアはあっという間に置き去りにしてバジリスクへと突っ込んでいった。それこそ一瞬で消えたのではと思わせるくらいの加速。

 冒険者の中でA級を目前とするレナ同様、様々な冒険者を見てきたからこそマックスにはわかったのだろう。目の前の黒騎士は頭一つ飛びぬけている、と。


「そうですね。私もあなたの立場なら同じ言葉を口にしたでしょう」


 自分の力を純粋に認められるのは悪い気分ではないはず。だからこそ、彼女は自分が今から口にしようとする言葉が、彼女自身にとって重いものであるという雰囲気を纏っていた。


「私は、究極技法(アルテマアーツ)の一つ。魔力制御(マジックバレル)最大解放(フルオープン)が使えます」

「ほう」

「究極――――技法?」


 聞きなれない言葉にサクラたちは首を傾げる。逆にビクトリアは感心したように目を細めた。


「天性の才能をもつ。或いは長年の修練の果てに辿り着く奥義みたいなものです。聖女のような固有(ユニーク)ではなく、誰もが辿り着ける可能性をもちながらも、その身に宿すことがはるかに難しい。故に究極(アルテマ)

「私の場合は幸運にも才能の一欠けらがあったようで、修行の最中に開花したものです。その使い道は魔力を溜め込む制御を外し、身体強化を極限にまで高めるというものです」


 その言葉を聞いてマックスも納得がいったように頷いた。彼女のやったことは一種のごり押しだ。身体強化に回す魔力が多ければ多いほど、その力も大きくなるのは当然のこと。子供のかけっこに大人が混ざるような差が生まれるのも、その出力差のためだ。

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