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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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真紅と紺碧の閃光Ⅶ

 轟音と突風が吹き乱れ、気を失っていたマリーとアイリスも目を覚ました。

 バジリスクはどうなったのかと慌てると、その死体が横たわり、草が燃え、ユーキの周りに人が集まっているのが、目に飛び込んできた。


「おい、一体どうしたんだ?」

「マリー、ユーキさんが!」


 様子を見るに、またユーキが何かしでかしたのかはよくわかっていた。城壁に穴を開けるような人間だから今回の作戦も驚くことはないと思っていたが、こんな結末は予想していなかった。


「何か、手伝えることは?」


 アイリスも動揺はしているのだが、まずはユーキの様子の確認を急いだ。


「体全体に重度の火傷と中度の毒。あとは架空神経にダメージが」


 見れば高名な錬金術師作のコートは肩から先が吹き飛び、二の腕が露になっていた。不思議な文様が浮かびあがり、火傷でただれているのが分かる。恐らく、服の下も同じような状態だろう。

 その惨状に思わず目を背けると、手から零れ落ちたユーキの刀が溶けて煙を上げているのが見えた。


「架空神経……不安」

「まさか、前みたく!?」

「前みたいに……? 以前お話に聞いた魔力の暴走なら心配はありません。何故かはわかりませんが、ユーキさんの架空神経は以前とは比べ物にならないくらいに成長をしています」


 ウンディーネが治癒をかけながら答えを返す。

 流石、聖女と水の精霊といったところか。火傷していた皮膚は元のような肌に戻り、あっという間にシダ植物のような火傷痕も消えていった。


「――――危なかった。何とか無事ですね。ソフィア、あちらの二人も連れてきて、その後はうちの騎士二人もね」

「了解しました」

「まだ、あいつらが引き返してくるかもしれない。ソフィアさんはここに残って護衛をお願いできるかな? 僕が連れて来よう」

「では、そのように」


 二人が頷いて場を離れると、入れ替わるようにしてレナが近付いてきた。


「先ほどのは、一体……?」

「私の目にも止まらぬ速さ。驚異的な身体能力の向上。まさか、あの一瞬で?」


 レナの疑問に答えているとも言えない呟きをソフィアは返す。


「あなたの動きも常人離れしていたが、ユーキの動きはその倍以上だった。何か知っているなら、彼の体を治す手助けになるかもしれない。見た目は無事でも中身がやられていることもあるから」


 そう言って腰のポーチからポーションのような物を取り出し、近くにいたサクラに屈んで手渡した。


「危険そうだったら使って、とりあえずソレなら大抵のことには対処できるから」

「レナさん!?」


 言い切ると力を使い果たしたように、サクラへと寄りかかる。

 慌てるサクラだったが、背中が動いているのを見てほっと息を吐いた。ただ疲れと緊張から眠ってしまったようだ。


「彼が目を覚まし次第、試すと良いでしょう。かなり貴重な薬のようですし」

「知ってる、の?」

「えぇ、彼女はエルフですから恐らく――――」


 アルトがポーションを見つめていると、ゴボゴボと何かが湧きたつような音が耳に届いた。

 全員が不思議に思って音のする方向へと顔を向ける。誰もがその光景に目を疑った。


「あ……あ……!」


 それは誰の声だっただろう。誰が声を漏らしてもおかしくなかった。

 バジリスクの炭化した部分がピンク色の肌に変わり、頭のような部分が形成され始めていた。バジリスクを一撃で葬らなければいけない理由は、毒を土地にばらまかないこととは別に、もう一つあった。。

 それは一欠けらでも肉片を残すと、再生してしまうこと。右目は矢が刺さったままだったから再生ができなかったが、これが刀傷だったらすぐに気付けていただろう。

 聖教国の言い伝えでは焼き尽くすとあったが、それは三日三晩、火の魔法で再生できないように灰にしたということだ。


「なんてこと……ここは危険です。早く!」

「どこに逃げろってんだよ! こんな所じゃ、すぐに追いつかれるぞ」


 マリーが慌てながらも、ユーキの体を引っ張り上げる。

 サクラも同じように反対側から肩に手を貸すが、魔力もあまり残っておらず、身体強化をしても運ぶだけの余力が残っていない。


「アストルム様、お逃げください。僅かでも時間を稼ぐことはでき――――」


 その言葉は言い切られることがなかった。


「馬鹿な。石化の魔眼も――――復活している、だと!?」


 バジリスクの黒い両の眼が、その場で固まっていた全員を捉える。

 片眼だった時の比ではない圧が体を通り抜け、全身の自由を奪っていく。


「くっ……ここまでか」


 透明な鱗を炎で輝かせながら、バジリスクはその咢を再び開く。絶望と恐怖、その先にある死への入り口、冥界の門。

 万事休す。誰もが己の死を覚悟して目を瞑った時、天から声が響いた。


「あらあら、かわいい蛇さん。私の愛しいマリーに何か用かしら」


 突如、響いた声にバジリスクが顔を上げる。そこには新月に近い月を背景に一人の女性が浮かんでいた。身の丈ほどの杖を天に掲げ、つばの大きいトンガリ帽子を被り、箒に腰かけたまま、高く、鋭く、言葉を投げかける。


「悪いけど、マリーちゃんに手を出す悪い子には、お仕置きしないといけないわね?」


 暗闇で見えないが、その顔は笑顔で慈悲にあふれ、優しく、温かさに満ち溢れ、何よりも()()()()()


「『焼き尽くせ。貴様に与えるには、地獄の炎すら生ぬるい!』」


 杖を振り下ろすと同時に、地面にいくつもの紅い魔法陣が浮かび上がり、バジリスクを照らす。危機を感じたのか一目散に逃げようとするバジリスクだったが、魔法の発動の方がはるかに早かった。


 ―――――ゴッ!! 


 光の柱とも見紛う白い火柱が天まで伸びる。離れているにもかかわらず、サクラたちの頬は熱くなり、目が眩んで開けられなくなってしまった。

 数十秒。実際はもっと短かったかもしれない、その火柱が消え失せると、溶岩だけが残り、そこにはバジリスクがいた痕跡はどこにも残っていなかった。

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