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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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真紅と紺碧の閃光Ⅵ

 動悸が止まらなかった。自分の死が怖い。痛みが怖い。

 そんなことよりも、自分の立てた作戦で()()()()()のが怖い。責任感が今更圧し掛かってくる。

 バジリスクの尾が薙ぎ払った岩がすぐ近くを掠めていくが、魔眼を見開いたまま見つめていた。


「せめて……奴の体液を出さずに殺す方法があれば……」


 魔眼にどんなに魔力を込めても見えてくるのは黒、紫、黄の三色のみ。ただ伝わるのは邪悪の一言。

 それにユーキも最悪の推測をしていたことがあった。体液を流さず殺せたとしても、腐敗した死体が結局は汚染源になってしまうだろうということを。

 だからこそ、最初に言ったのだ。時間稼ぎだ、と。

 蓋を開けてみれば暗殺者への対処を怠った挙句、この様だ。何とかしてサクラたちの護衛に回らなくてはならない。少なくとも、ソフィアの近くでは足手まといになるだろう。

 伏せた状態から無理矢理膝立ちになり、自分の体を支える。

 しかし、バジリスクは待ってくれてはいなかった。既に地に投げ出されたサクラたちに向けて、まさに今飛び掛からんとしていた。


「(マズ――――どうしたら――――)」


 頭から急速に血の気が引いていく。鼓動が一拍、跳ねる音と共にバジリスクが口を開けて、サクラたちへと襲い掛かった。


「や―――――」


 瞬間、ユーキの頭に血が上る。

 視界がスローになり、自分の今までの経験を早回しで見せられているような感覚になる。


「(――――俺が今できる最善手!)」


 体中に走っていた痛みが倍増するが、その痛みを無視して魔力を四肢へと叩き込む。心臓の鼓動程度の圧では到底遅い。もっと奥底の根源から一気に押し出すように全身へと力を入れる。


「(やり方は見た。痛みは無視した。後はこれで再現するのみ!)」


 足を踏み出すと共に大地が砕ける。空気の壁が体を打ち据え、意識が置いて行かれそうになる。

 それでもユーキは刀を抜き放ちながら疾駆する。ソフィアがバジリスクへ向かうのを()()()()()、上段に構えた。


「――――らせるかああああああ!」


 轟音と共に紺碧の光が降臨する。

 バジリスクの首が吹き飛び、空を舞った。何が起きたかわからないままバジリスクは口を開けた状態で、その傷口から血を垂らし――――


「させないっ!!」


 ――――ガンド。

 魔力を撃ちこみ、相手を呪ったり傷つけたりする古い魔術。だが忘れてはいけない。このガンドは魔法抵抗のあるミスリル原石を穿つほどの威力があることを。

 更にユーキは残った胴体の傷口に指を向ける。そのガンドの色は紅に染まっていた。


「『――――一条の閃光を以て焼き尽くせ!!』」


 空気が歪み、地面の雑草が風に煽られて波打つ。地上に出現した太陽の如く、人間の体並に巨大化したそれは、大砲でも放ったかのように衝撃波を伴って撃ちだされた。

 初弾はバジリスクの頭を一片も残らず消し飛ばし、次弾は残った体を傷口から数メートル炭化させていた。

 僅かに宙に浮いていた胴体が音を立てて落ちる。地面の雑草にも引火しており、火の粉がぶわっと舞い散った。


「な……!?」


 アルトとソフィアの口からは言葉が出てこなかった。

 魔王の右腕と称されたバジリスクの首を、その太さを下回る只の刀で斬り落とし、あまつさえガンドで頭部を消滅させ、胴を炭化させるなどあり得ないからだ。


「ぐっ……」


 当の本人は胸を抑え、膝をついてそのまま横倒しに蹲る。


「大丈夫かっ!? あつっ!?」


 ソフィアがユーキの体に手をかけると、まるで火で熱した鉄でも触ったかのような痛みが走った。

 すぐにサクラもユーキを助け起こそうとするが、ソフィアが手で制する。


「アルト様。彼に治癒を! ウンディーネ殿もお力をお貸し願えればっ!」

『言われずともそうしますよ』


 マックスを伴って駆け付けたアルトはユーキに両手をかざすと、小さく呟いて手から光の粒子を飛ばす。ウンディーネも姿を現すとアルト同様に両手を向けた。

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