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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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火を避けて水に陥るⅥ

 氷の牢獄へと閉じ込めたはいいものの、安心をするには早すぎる。バジリスクは動きが鈍くなっていても巨大な魔物。本気を出せば、氷を割って飛び出てきかねない。水系統の魔法が得意な者は冷却を続けながら、残ったメンバーで土魔法を詠唱し、ため池の上に蓋をするように覆っていく。


「これで氷を突き破ろうとしても簡単には……」

「油断しないで! 金属ならまだしも、たかが土程度じゃ気休めにしかならない。覆ったら硬くして更に重しを増やすんだ!」


 サクラが気を抜きかけたところに、レナを置いて戻ってきたマックスが声を張り上げる。彼自身も魔法を使えるようで、ため池の周りに堤防のように積んだ土を氷の上へと動かしていく。後は時間の許す限り土を盛り、氷の維持をするのみだ。

 一番大変なのは凍らせるまで、凍ってしまえば維持自体は難しくない。それでも大量に魔力を消費したようで、ウンディーネ以外は冷や汗をかき、大分つらそうな表情を浮かべる。


「おい、アイリス。無茶するなよ」

「わかってる。でも――――」


 アイリスは震える杖を地面へと向け続ける。

 その顔を見たマリーはアイリスが何を感じているのかを察した。


「――――バジリスクは、まだ動いてる」


 氷を作ろうと魔力を流しているからこそわかる。それは釣り針に魚が食いついたのが竿を通して手に伝わるように、魔力を通す過程で不自然な何かが流れを遮るからだ。

 オーウェンやエリーもそれを感じているのか、顔色が優れない。特にエリーは今にも崩れ落ちそうなほどに、血の気が引いている。


「か、会長。このままでは……」

「大丈夫だ。動き自体は最初よりも大分鈍くなっている。あと数分持ちこたえれば――――こちらの勝ちだ」


 お互いに声を張り上げ、何とか平静を保とうとするが、ついにエリーの魔力が枯渇して崩れ落ちる。


「エリー!」


 魔法剣を向けたままエリーへと一瞬で駆け寄ると、地面へと倒れ込む寸前で抱きかかえることに成功した。

 魔力の枯渇はアイリスとオーウェンも他人ごとではない。今でこそ何とか活動できているが、オーウェンの言う数分が果てしなく長い。ウンディーネと違い、あくまで人間。その能力には限界がある。

 この場でウンディーネがいるからこそ拮抗しているが、いなかったらと思うとオーウェンはぞっとする。


「あんな巨体を、この少人数で抑えるなど……想像もしたくないねっ!」


 エリーが抜けた分だけ一層魔力を込める。魔力の操作に他人の魔力は邪魔だが、純粋に同じ現象を後押しするだけならば話は別だ。ウンディーネの冷却を少しでも後押ししようとしたところで、()()()()()()()()()()()()が響いた。


「――――っ!?」


 魔法剣を咄嗟に振り回し、背後を薙ぐと鋭い音と共に人影が飛び退く。


「ちっ。そのまま気付かずにいれば楽に死ねたのによ。運の悪い貴族様だぜ」


 全身黒づくめの武装した男が二人。いや、ユーキやアルトたちの背後も含めると十人以上が姿を現していた。


「いきなり住民を移動させられた時にはマズイことになったと思ったが、こんなバケモノを連れてくるとは思わなかった。おかげで仕事がやりやすくなって仕方ねぇ」

「お前たち、わかっているのか!? このバジリスクが解き放たれたら、お前たちはもちろん、他の国すらも無事では済まないぞ!」


 油断なく二人へと剣を向けて、オーウェンは警告するが男たちは、ニヤニヤと嗤うばかりだ。訝しんでいると目の前の男は告げた。


「あぁ、()()()()()()()()()と知ったことか。それに俺たちもプロだ。そこの中に閉じ込められた奴から逃げるなんぞ。いくらでもできる。それ以外のことは、上の奴らが何とかしてくれるだろうよ」


 不意に男が体を半身にすると、その後ろから投げナイフが三本飛んできた。慌てて撃ち落とすオーウェンだが、その内の一本が手の甲を切り裂いていった。


「ま、そういうわけだ。悪いけど坊ちゃんは、お寝んねしてな。永遠に」

「なに……を……」


 数秒と立たずオーウェンの体がエリーの上へと折り重なった。


「これは――――毒、か」

「あぁ、運が良かったな。直撃してれば意識を一瞬で失って苦しまずに済んだのによ」

「いやいや、むしろ運が悪かったの間違いだろ。そのまま、他の奴らが死んでいくところでも見てろや」


 朦朧とする意識の中でオーウェンの頭に泥のついた靴が置かれる感触が伝わる。そのままグリグリとねじられて、髪の毛が数本抜ける音が響くが、どこか遠い出来事のように感じてしまっていた。

 何とか、エリーの体を片手で包み込み守ろうとしたところで、オーウェンの意識は闇へと落ちていった。

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