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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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生殺しの蛇に噛まれるⅤ

 村長は奥さんに怒られながらも、ことの経緯をぽつりぽつりと話し始めた。


「孫娘とは、毎日昼前に森の中を散歩するのが日課なんです。あそこの開けた道は、父の時代からずっと開拓し続けてきたところで、魔物たちの駆除もしていたので油断していました」

「お嬢さんを攫ったのはラミアという蛇の魔物です。昔からこの辺りにはそのような魔物が?」

「いいえ。この辺りは獣の形態に近い魔物が多いのです。ビッグボアやスケアゴート、後はスカーレットベアあたりが脅威とされるものですが、毎年、若い衆と冒険者を動員して狩っているので、村の近くには近寄って来ないのです」


 村長は首を横に振り、節くれだった指を折り曲げながら魔物の種類を数え上げていく。

 その言葉にアイリスが手を挙げて疑問を呈する。


「ラミアは人間の子供を攫う欲求がある。今までにも似たようなことや不審な点がある、はず」


 そうは言われても、と村長が唸っていると部屋をノックする音が聞こえた。老婆が席を立ってドアを開けると、滑り込むように女の子が入り込んできた。


「さっきの強い人たちだー」

「こらこら、あまりお客様を困らせるでない」


 ユーキのところまで駆けてくると、その膝の上に乗っかって満面の笑みだ。戸惑うユーキの横でサクラが少女を覗き込むようにして問いかける。


「ねぇ、お名前は何て言うの?」

「ハンナだよ」

「良いお名前ね」

「うん。おとーさんがつけてくれたの」


 一見すると微笑ましい会話だが、この場には似つかわしくない空気だ。しかし、何かを感じ取ったのか誰もサクラを止めようとする気配はしない。


「ねぇ、ハンナちゃん。蛇さんに連れて行かれた時に、気になるものとかなかったかな?」

「気になるもの?」


 サクラの言葉にハンナはゆらゆらと前後に揺れながら視線を上に向ける。


「そう。森の奥なのに村にあった物が置かれてたとか、見たことがない物があったとか」

「うーん。あんまりなかったー」


 まだ小さいことも有ってか、サクラの話にも興味を失い始めている。

 何とかいい情報が聞き出せないかと質問をしたサクラだったが、苦笑して両手を上げる。その時、ハンナが思い出したように声を挙げた。


「あ、でも蛇さんは鳥が好物みたいだったよ?」

「鳥?」


 全員が首を捻るが、そんなことはお構いなしにハンナは話を進めていく。


「木に縛り付けられる前にね? ニワトリさんを丸のみにしてたの。他にも白い羽がいっぱい落ちてた。きっと、大好物なんだね!」


 その言葉に村長がガタッと立ち上がった。


「そ、そういえば、ここ一ヶ月で放牧しているニワトリが減っていたはず……!」

「猫などではなく、ラミアの仕業と言うことも有り得ますね。父の領地から、そう言った報告があったこともありますから、ない話ではないかと。ただし、その時にはもっと大きな家畜もやられていたそうですが、被害はありますか?」


 腕を組んでオーウェンが顎へと手を当てる。ラミアが村の家畜を襲うというのは考えられない話ではないようだ。

 村長は考え込んだが、ニワトリ以外の被害は特に報告が上がっていないらしい。牛や馬などの家畜が襲われれば、もっと大騒ぎになっているはずだと言う。


「しかし、餌なら森の中にたくさんあるはず。何故、わざわざ村にまで来てニワトリを……?」

「体を動かなくさせる魔眼があれば、数がたくさんあることが分かっている村に行った方が手っ取り早いからだろ。餌がわらわら囲われてるんだ。あの大きさなら柵を超えるのなんて楽勝だろうぜ。でも、そこまで食料が必要なのか?」

「ラミアが魔眼を使うというのも、あまり聞いたことがないですね。もしかして、特殊個体か何かだったり?」


 疑問点や意見があちこちから出始めたときに、ユーキはぼそりと呟いた。


「――――石化の魔眼」


 その言葉に真っ先に反応したのはフランだった。


「ラミアの魔眼が、ですか?」


 ユーキは頷くと話し始めた。


「俺の読んだ本にさ。そういう能力をもつ蛇が載ってたんだ。蛇で石化の魔眼って言うと俺は()()()が真っ先に浮かぶんだ。本当にいるかどうかはしらないけどさ。確か()()()()()、とか言ったかな?」


 バジリスク。「小さき王」の意味をもつように、その頭頂部の周りには王冠を思わせるような独特な鱗の模様がある蛇だ。そして何より危ないのは、その体質。

 一睨みするだけで、その視界の中の者を石に変える凶悪な邪視。吐く息や噴き出す体液は猛毒であり、植物なら枯れ、生物なら息絶える。

 そんな恐ろしい生物をユーキは本で読んだ記憶があった。その際には、一撃で頭を潰すことで被害を最小限にしたものの、辺りは砂漠と化してしまったという結末だった。


「まぁ、バジリスクがいたから砂漠になったのか。バジリスクが倒されたから砂漠になったのか。そこらあたりは覚えてないけど、要するにすごい危険なバケモノだって話――――どうしました?」


 ユーキが話し終えようとした時、視界の端にいたアルトとソフィアの顔が明らかに青ざめていた。

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