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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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三者択一Ⅳ

 村長曰く、「攫われたのは孫娘で、散歩中に茂みから大きな影が飛び出て、そのまま森の奥へと消えていった」ということらしい。背中から倒れて、悶絶していた間の出来事だったので、魔物の鱗のような光沢のある肌しか見ることができなかったという。


「森の中で鱗のような肌というと、蛇でしょうか?」

「ひぃっ!? 蛇ですか? 私、ああいうの苦手なんです」


 サクラの言葉にフランが辺りを見回しながら怯える。

 今現在、歩いている森は起伏がほとんどなく、鬱蒼とした変わり映えのない景色が続いている。ユーキも正直、蛇は苦手な部類だが、どちらかというと百足や蜘蛛、ゲジゲジと言った素早くてわさわさ動くものの方が苦手だ。いずれにしても森の奥深くに行くのはユーキも好んでいくことはない。


「確かに、我々もどちらかというと苦手な部類です。しかし、そういった嫌悪感を消し去るのも、生き残るためには必須ですからね。頑張りましょう」


 護衛騎士の一人、キャロラインは口元を緩ませながらフランの肩に手を置いた。

 茶髪で整った顔とは裏腹にゴツゴツとした掌が、一瞬だけユーキの目に映った。ユーキのような数週間程度の素振りでは、決して作れない戦士の手だった。


「私は蜘蛛が苦手だし、あの子なんかセミすら触れないからさ」


 そう言って指差した先には、くしゃみをするオリーブ色の髪を結った女性がいた。もう一人の護衛騎士、レベッカである。二人とも城で会った時とは違い、本物の冒険者のように振舞っている。

 唯一、部屋の中などの誰も見られていないときの方が騎士らしく、無言で直立不動になる。昨夜はあまりのギャップにフランも恐怖を感じたと、学園組だけで集まった際に話してくれた。

 そうこうしている内に村長に言われた場所付近へと差し掛かる。道幅は五メートル以上もあり、散歩道と言うには、むしろ広いくらいであった。


「聞いた話だと、ここら辺りということですが、何か痕跡は残っていないでしょうか?」


 エリーが片膝をついて地面を観察するが、柔らかい土とまだ色が抜けてない何枚かの葉があるばかりで、見つけられるのは人と思われる足跡くらいだ。


「うーん。せめて、魔物の種族くらいは知っておきたかったけど、仕方ないか」


 フェイが残念そうに呟く横で、アイリスがオーウェンに問いかけた。


「鱗をもってて、生息地が森や山、知能があって、ある程度討伐が難しい魔物って知ってる?」

「君は攫った魔物が強く、そして賢いと判断したみたいだけど、それは何故か聞いてもいいかな?」


 オーウェンは即座にアイリスへと質問を返す。


「ただ強いだけなら村長も一緒に食べられていた。でも攫っただけなら、後から来る援軍を餌として食べるという知恵を働かせても、おかしくない、よ」

「なるほどね。そうなると真っ先に浮かぶのは、やはりドラゴンやワイバーンかな。ただ、その可能性は限りなく低い。現実的に考えて()()()だろう」


 その言葉にちょうど真後ろを歩いていたソフィアが頷いた。


「そうですね。それならば、子供を攫うという特徴も説明がつきそうです。上半身は人間、下半身は蛇。そして、その種族の一番の特徴は常に人間の子供を狙っていることです。子供を攫って、最初は自分の子供のように可愛がる。そして、一晩経った後は餌として食い殺す。そういう種族と聞いています」

「へー、そんな酷い化け物がいるのなら、さっさと殺してやらないとな」

「ラミアの始祖は元々、人間の女王だったと聞きます。神の怒りを買って、呪いをその身に受けたのだとか」


 悲しそうにソフィアが呟く横で、茂みがガサガサと音を立てる。

 全員に緊張が走り、各々の武器へと手をかけて抜き放つ。茂みの揺れが少しずつ大きくなると、魔法が使える者は杖を向けて、詠唱を始めた。


「『――――汝、何者にも映らぬ一振りの刃なり』」


 牽制にマリーが風の魔法を茂みへ放つ。まるでハリセンか何かを叩きつけたような音と共に、茂みの葉が何十枚と裂けて、宙を舞った。直撃していたら、血飛沫の一つでも上がりそうなものだが、そんな様子は微塵もない。

 やがて茂みの揺れが収まると風の魔法が通り過ぎて空いた空間に、ウサギが一匹顔を出した。

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