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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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希望を求めてⅠ

『ユーキさん。やはり無理をしない方が……』

「いや、大丈夫。白兵戦は無理でもガンドは撃てる。それに多少は刀を振り回すだけの力も回復してるから」

『それで時間を稼げばいいとでも言うんですか? 多勢で挑まれたらどうにもなりません』


 歩きながらユーキはウンディーネの言葉に小さく言葉を返す。

 昨夜は早く寝たにも拘わらず、体の痛みはほとんど引いていなかった。ストレッチしても休んでも治らない。不思議に思いながらもユーキは外へと向かう。


「多勢に襲われる時点で、万全だろうと危険なものは危険だよ。それに今回は国自慢の勇士が助けてくれるんだから、大丈夫」


 空笑いして、ユーキは外への一歩を踏み出した。

 夏らしくない曇天の下、既にオーウェンとエリーは到着していたようで、暇を持て余していたようだ。だが、遠目から見ても話をしている様子はなく、お互いにじっと伯爵の屋敷を見つめていた。

 ユーキが訝しみながらも近づくと、オーウェンが複雑そうな顔をして話しかけてくる。


「今回も大変な任務になってしまったけど、よろしく頼むよ」

「何があったかは知らないけど、敵対はしないで済みそうですか?」

「……その件に関しては何とも言えないが、こちらに非があったのは事実だ。弁解はしない」


 ユーキの言葉に反論することなくオーウェンは頷いた。

 一度、この二人とは洞窟内で命の危険を感じるほどの戦闘をしている。幸運にも中途半端な形で決着がつくことはなかったが、禍根が残っていないかと問われれば微妙なところだろう。


「ユーキさん。少なくとも、今はもう敵対する理由がありません」

「その理由はいつできてもおかしくないですよ? この任務に旅立つ前に、なぜあんなことになったのかを一度話しておく方が精神的には楽になると思います」


 背後から攻撃されること程、恐ろしいものはない。しかも、それが味方からなら、よほどのことがない限り防ぐことは叶わないからだ。

 実際にエリーに攻撃を受けたマリーに激高したアイリス。この二人が来てからでは遅いと判断したユーキは、独断で先に集合場所へと赴いたのだ。


「――――わかった。君たちが納得できるかはわからないが、僕が意地でも押し通ろうとしたことくらいは話さないといけないね。でないと、つまらないことで、この任務が失敗してしまう」

「後は、マリーにしっかり謝っておいた方がいいです。少なくとも、誰も大怪我をせずに済んだ。そうしてくれるのならば、俺から言うことは何もないです」


 言葉の上では敬語で話しているが、その言葉の端々からユーキの怒り、疑念と言った感情がにじみ出ていた。それを感じない二人でもなく、エリーも無言で頷いた。


「なんだユーキ。先に出てたなら言ってくれよ。フェイが部屋まで探しに行っちゃったじゃん」


 噂をすればなんとやら、ちょうど話題の人物が荷物を両手に走り出てきた。ユーキの下へと駆け寄ろうとすると、その向こう側にいる二人の姿をマリーも把握したのだろう。昨日はエリーと顔を突き合わせることはなかったが今日は違う。近づくにつれてマリーの顔に若干の緊張が見えた。


「あ、あのー……」

「先手必勝っ!!」


 エリーが話しかけようと一歩前出たところにマリーが両手を突き出した。


「「は?」」


 ユーキとオーウェンの声と重なった。

 しかし、二人の視線はお互いに向くことなく、目の前の女子二人へと注がれる。


「あ、ちょ、ちょっと、何を、するん、ですか!?」

「おや、エリー先輩は意外にくすぐりに弱い?」


 笑いながらも途切れ途切れに抗議するエリー。それに対して止めようとする手をかいくぐりながら脇腹をくすぐり続けるマリー。


「いやー、ダンジョンでは色々とあって忘れてましたけど、あたしエリー先輩に魔法でやられたんですよね」

「そ、それが?」

「こりゃ、やられたままではいられないと昨夜ずっと考えた結果がコレです」


 ユーキとオーウェンの頭の上にはてなマークが数個浮かぶ。


「ユーキ君。彼女の言っていること、理解できるかい?」

「いえ、まったく」

「そうか。一瞬、疲れで頭がおかしくなったかと思ったよ」


 男とは思えないさらさらした水色の髪をかき混ぜながらオーウェンは、ほっと息をついた。


「いえ、そこで、納得しないで、ください! というか、あなたも、やめなさい!」

「いやー負けたままなのは悔しいですから、肉弾戦なら勝てるかなと」


 どういう理論だ、とユーキが唖然とする。ある意味、その行動力はどこからどう見てもローレンス伯爵と同レベルにしか見えない。

 何も言えずに見守っていると、マリーは後ろへ起用に回り込み、服の中にまで腕を突っ込んでくすぐり始めた。流石にエリーも表情に焦りが混じり、慌ててマリーの腕を押さえる。


「ま、まって、もう、やめて」

「お、先輩降参ですか?」

「こ、降参するか、ら。たす、けて」

「りょーかいでーす」


 にっこり満面の笑みを浮かべるとマリーはさっと手を引いて、その場に直立した。肩で息をするエリーはオーウェンの後ろへ逃げ込んでマリーを警戒する。

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