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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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勇者の行方Ⅲ

 ギルドのホールへと足を踏み入れると、すぐにユーキに声がかかった。


「ユーキさん。具合の方はいかがですか?」


 受付嬢のコルンが書類と羊皮紙の束を抱えながら心配そうに顔を覗き込んできた。

 相変わらず、ピコピコと動く不思議な耳に視線を奪われながらもユーキは頷いた。


「はい。ちょっと鈍痛はありますけど、だいぶ良くなりました」

「そうですか。それは良かったです」


 コルンがユーキから半歩離れるとサクラが尋ねる。


「あの、さっきの人たちはどうなりましたか?」

「どうなるもこうなるもありません。冒険者資格は停止、一年間程、どこかで強制労働させられるでしょうね。つい最近、警告してあげたばかりなのに……」

「他にも何か?」


 コルンの言葉の端に引っ掛かる物があったのか、ユーキが尋ねるとコルンは一瞬悩んだ後、声を潜めて告げた。


「一応、冒険者の個人の情報は言いふらすべきではないのですが、あなた方が同じような目に合わないためにお教えしますね。彼らは恐喝行為で金銭を巻き上げていたんです。地方にあるダンジョン内で起こったことですが、モンスターと戦闘中の初心者を援護して、戦闘終了後に難癖付けて金銭を要求する、っていう手口です」


 ユーキはそれを聞いてすぐに疑問を口にした。


「でも、そうすると初心者の人はすぐにダンジョンに来なくなる。同じ手法で稼ぎ続けるのは不可能では?」

「そこなんですよ。我々も気付くのが遅れた原因は。契約の術式で毎月、その金額を納めるように騙されていて、おまけに口外できないように縛っていたんです」


 ダンジョン内に大金を持っていく冒険者はほとんどいない。だから金貨一枚、いや銀貨十枚を請求されても、ほとんど払えないだろう。そこで後で払うことを条件に契約の羊皮紙に名前さえ書かせてしまえば、後は勝手に金が舞い込んでくる。契約内容は文章を指で隠すなどして誤魔化したのだろう。


「契約の羊皮紙も安くはないのですが、一枚を何度も使いまわして連名で書かせて節約すれば、最終的にどこかで利益に変わりますからね。犠牲者が三桁に届いてたら、月に大金貨一枚。百万クルともなれば、それなりに五人でも遊んで暮らせますね」


 コルンは荷物を抱え直すと声のトーンを元に戻して微笑んだ。


「ではくれぐれも、そんな詐欺まがいな行為に巻き込まれないよう気を付けてくださいね。因みに、そういう『口外できない』『知らせてはいけない』の契約でも、冒険者ギルドではそれを見抜ける人員も雇っていますので、無言で受付に立ってくれたら、交代して呼んで来れますから安心してくださいね」


 そう言うと来た道を引き返し、ギルドの奥へと消えていく。

 ギルドも色々と対策を考えている者だと感心していると、不意にユーキの横から人影が現れた。


「へー。そういうのもあるんだ。全然知らなかった」

「うおっ!?」

「何だよ。人をお化けみたいに。あたしでも傷つくことはあるんだからな」


 マリーが頬を膨らませて抗議するとユーキの後ろからフェイとアイリスがやってくる。


「ユーキ。もう大丈夫なのか?」

「あぁ、おかげさまでね」


 腕を軽く回してアピールするが、筋肉痛のような痛みは取れることがない。それでも顔を顰めることなく、ポーカーフェイスを貫けたのはユーキ自身よくできたものだ、と思っている。むしろ、フェイの方が眉間に皺を寄せ、痛みをこらえているかのような表情だ。

 一体何事かと考え込む暇もなく、アイリスがユーキの前に進み出た。


「ユーキ、さっきはありがと」

「気にしないでくれ。仲間がピンチだったら助けるっていうのは、お互い様なんだし」

「この前も、助けられた。助けられてばっか」


 しょんぼりと落ち込むアイリスの頭をユーキは撫でる。


「俺に呪文を教えてくれたり、水や氷の魔法でみんなを助けたりしてるんだから、もっと自信をもてって。俺には俺の、アイリスにはアイリスにしかできないことがあるんだから」

「そう……なら、頑張る」


 アイリスが鼻息荒く、意気込んでいるとフランがいないことにサクラが気付いた。


「あれ? フランさんは?」

「あぁ、彼女ならね……」


 フェイの視線を追うと柱の陰に隠れて、こちらを光のない瞳で見つめているフランがいた。

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