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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第6巻 蒼天に羽ばたく翡翠の在処

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雷霆の枷Ⅵ

 街へと繰り出すと、相変わらず聖教国の聖女のために、掘り出し物を見つけようと奔走する冒険者たちの姿が目に入った。

 王都の素晴らしいところは、街中至る所を流れる水のおかげで熱気が幾分か抑えられているところだろう。小さな子供や休憩中の従業員は、路地裏の水路へと足をつけて涼む姿が見られる。

 そんな中、ユーキたちはメインストリートを歩きながら店を見回っていた。


「そういえばさ。サイク……この前貰った宝石はどうする?」


 サイクロプスと言いかけた言葉を飲み込んで、マリーはサクラたちに問いかけた。


「ルーカス先生が言ってたみたいに、何かアクセサリーにしてもらおうかなって」

「そうなると宝石職人とか彫金師あたりに直接お願いするか? ストレートに宝石店とかで依頼するのもありだけど……」


 周りを見渡しながら、後ろからついて来ていたフランが声のトーンを落として呟いた。


「アラバスター商会みたいにデカいところだったり、名前が通ってる店じゃないとすり替えられたり無くされたりするから大変ですよ。金貨数枚程度なら泣き寝入りすることもありますが、今回は一品ものです。店選びは慎重にしないといけません」

「じゃあ、それも含めて探さないと、ね」


 アイリスがニコニコしながら前を歩く。恐らくは色気(アクセサリー)より食い気(甘味)なので、間違いなく彼女が探しているのは甘味処だけだろう。

 それがわかっているのか、マリーは思わず吹き出しそうになるのを堪えて、肩を震わせていた。


「そういえば、アラバスター商会の近くにある空き地に新しいお店がオープンしたらしいです。そちらに行ってみるのはどうですか?」

「情報の早さは商人として大切だもんな。流石はフラン」

「いえいえ、そんな大したことじゃないですよ」


 フランの薦めに従って、その場所へと向かうことにする。アラバスター商会は正面の門を潜ってメインストリートの左側にある。目的地は、その西側。裏道へと入って一、二本進んだ先にあった。


「あそこは薬草とかの自生地だったけど、流石に土地を買われたら採取できないな」

「学園にはいっぱい生えてる。採ってもすぐ生える。問題、なし。それじゃ、近道する!」


 アイリスが意気揚々と真っ先に建物と建物の間にある道へと滑り込んだ。路地とはいっても様々で、場所によっては、アラバスター商会やギルドのようなところへ荷物を届けたりする必要があるため、馬車二台が横に並べるような広さの路地も存在する。逆に人がすれ違えない程度の小さな路地も存在するのだが、アイリスが曲がっていったのは、一歩間違えるとスラムに繋がるのではないかと思う程、人通りが少なく暗い道だった。

 一つ二つと奥に進むと完全に人通りがなくなり、メインストリートの騒めきもどこか遠くの世界のことのように思える。

 今は人が数人横に並べば道が通れなくなる程度だが、さらに奥へ行くと二人並べる程度の道が広がっていた。夜中に通れと言われれば、何かこの世ならざる者がいるのではないかと思ってしまうような不気味さだ。

 幸い昼間なので闇という恐怖は、そこまで襲ってこないが、気味が悪いのは否定できなかった。冒険者というには小汚く、浮浪者にしては使い込まれながらも手入れされた武器をもっている人間が数人いればなおさらだ。


「よお。姉ちゃんたち、あんたら、もしかして魔法学園の生徒だったりしなかったり?」

「そう。早くデザートが食べたいので、そこをどいて」


 そんな輩がアイリスの目の前を塞ぐ。茶交じりの赤毛の男がにたりと笑いながら後ろに目線を送る。控えていたスキンヘッドの男と緑のパンダナをした男が二人。ゆっくりと退路を塞ぐように現れた。


「最近、面白い噂を聞いてな。魔法学園のダンジョンで掘り出し物が出たとか」

「おい、いきなり何だよ。おっさん」

「お、おっさん!?」


 マリーの声に仁王立ちしていた男が一瞬、アイリスから視線を上げる。そのまま、ユーキたちを嘗め回すように見回した後、その視線はユーキとサクラで止まる。わずかに目を細めると無精髭の生えた口が僅かに震えた。


「まぁ、いい。話を戻すと、だ。お前さんたちも、ダンジョンに入ってるんじゃないかと思ってね。情報が欲しかったんだよ。もう少しすると魔法学園のダンジョンも俺たち冒険者に解放されるからよ」

「悪いけど、俺たちはまだ一年生だし、ほとんど関係ないかな」


 ユーキは呆れた顔で返事をしながらも、前後の確認をした。前に三人、後ろに二人。

 一見、後ろに逃げれば楽そうではあるが、アイリスが捕まる可能性が高い。

 そう考えるのも、明らかに囲んでいる五人は、確実にこちらを食い物にしようと企んでいるようにしか見えないからだ。

 生憎と普段と同じように武装はしていない。サクラたちは杖があるからいいが、ユーキは指輪の発動体のみ、フェイに至っては完全に丸腰だ。

 魔眼が認識する光が現実の体よりも先に動く現象を利用して、目の前の男たちの動きを先読みしようとユーキは考えた。体の中を巡る魔力を魔眼へと集中させていく。


「――――っ!?」


 瞬間、後頭部まで貫通するような痛みが奔り、視界が白く染まった。

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