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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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報酬Ⅵ

 足が地に着くと膝から力が抜けて、ユーキは前へと倒れそうになる。

 両側にいたサクラとフェイが掴んでいたため事なきを得るが、その顔は真っ青になっていた。


「あれだ。もう、君は転移魔法に関わる時には、必ず誰かに掴んでもらっていた方がいい。いつか地面にキスして鼻血を出す羽目になる」

「ちゅ、忠告どうも……」

「フェイさん。そんなこと言ってる場合じゃないでしょう。とりあえず座って! 気持ち悪くない? 眩暈や頭痛は?」

「ちょっとだけ、くらくらするかも……?」


 サクラに促されて、その場に座る。そのすぐ横にマリーとアイリスが姿を現した。

 周りを見ると白い球体が弾けて、続々と他の生徒たちも姿を現していく。そんな中でユーキは後ろから声をかけられた。


「あのぉ、もしやダンジョンから帰還した人たち……で、あっているかな?」


 恐る恐るといった形で声をかけてきたのは、ダンジョンに入る前にユーキたちを引き留めにかかった男だった。


「えーと、あなたは……?」

「ここの出入りの管理をしている者で……生徒が誰も帰ってこないということで、ここでずっと見張っていたんだ。良かった。これで首にならずに済みそうだ」


 ユーキと同じように膝から崩れ落ちた男は、心底安堵した表情をしていた。そんな男にフェイは目線を合わせる。


「お疲れのところ、すいません。城に行って、警備の騎士を数人呼んで来ていただけませんか。ここにいる生徒たちを閉じ込めた犯人を捕まえたので」

「ほ、本当かい? ど、どこにいるんだ?」


 男に問われてフェイは周りを見回した。多くの生徒が歓声を上げる中、地面へ横たわる二人の影を探す。ごった返す中、人ごみの中からフェイはすぐにその姿を見つけ出した。

 後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた札使いの女とエリック。女の方は既に目を覚ましているらしく、ユーキたちが近付くと目を細めて睨みつけてきた。


「この二人です。片方は妙な術を使うので、城に着いて拘束するまでは、ここを動かさない方がいいでしょう」

「わ、わかった。すぐに行ってくる」


 先程とは違い、緊張した面持ちで男は駆けだした。その背を青白い顔でユーキは見送る。

 今回の探索ではかなりフェイが先陣を切ってくれたおかげで何とかなった部分がある。今も気持ち悪さにふらふらしている自分とは大違いだと考えていると、ケヴィンたちがユーキの傍まで歩いてきた。


「やぁ、何とかなったね。とりあえず、今日は暖かいベッドで眠れそうだよ」

「礼を言う。君たちが来ていなかったら、こんなにも早く解決には結びつかなかっただろう」


 ケヴィンとアンドレが礼を言う後ろで、ジェットと体の大きな男は複雑そうな顔でユーキたちを観察していた。


「おい、クレイ。お前、あいつらのことわかるか?」

「いーや。とりあえず髪が赤いのと水色のは知ってるけど、それ以外は特に」


 クレイと呼ばれた男。その巨体も目立つが何よりも目立っていたのは、その横に置かれた盾だ。所々にへこみはあるものの、その防御力が半端ではないことがひしひしと伝わってきていた。


「改めて紹介するよ。うちのリーダーのアンドレ。斥候役のジェット。盾役のクレイ。みんな身体強化をメインで使う魔法使いなんだ」


 ケヴィンに紹介され、戸惑いながらも前に出る二人。その二人をまじまじと見ながらマリーは呟いた。


「身体強化専門ね。他の魔法は使わないのか?」

「まぁ、使えないことはないんだけどねぇ」

「俺たちはいわゆる落ちこぼれ組さ。特定の魔法しか上手く使えないのさ」


 クレイは達観したような笑みを浮かべ、ジェットは自嘲気味に肩を竦める。


「ま、それでも上手く使えば、今回みたいに役に立てるってわけよ。な」

「な、って言われても俺は最終決戦に間に合わなかったからなぁ。おまけにスゴイでかい巨人と戦ってたんだろう? 俺の盾じゃ防ぎきれないなぁ。でも、なんかいいアイテムはいっぱい拾えたよ。急に目の前にたくさん降ってくるんだもん。驚いたよ」

「俺より拾ってるって、本当に運がいいんだよな。クレイは」


 巨体とは裏腹にクレイの間延びした声が、年齢以上の落ち着きを感じさせる。

 思わず二人の話に耳を傾けていると、鞘をガチャガチャ鳴らしながら騎士が一人駆け込んできた。


「狼藉を働いた者がいると聞いて駆け付けたが……そこの二人のことか?」

「そうです」

「簡単に話は聞いている。まずは私の方で二人を運ぶ。詳しい話は夜も遅いから、明日聞くということでもいいかな?」

「俺たちは、構いませんが……」


 ユーキの返事に頷くと、すぐに騎士は寝ている二人を引き起こした。無理矢理立たせたためか、女の顔が苦痛に歪む。


「では、明日の正午。ここに集まってもらえると助かる。それでは――――」

「――――待て」


 二人を連れて行こうと急ぐ騎士にユーキは呼びかける。その背中にはユーキの右手人差し指が付きつけられていた。

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