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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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サイクロプス討伐戦Ⅵ

 光彩が広がり、目の前の事実を頭が拒否しているのだろう。それは「この階層には自分一人しかいないはず」とでも考えているようであった。そんなサイクロプスの目の前で、新たに現れたサイクロプスは笑った。


「オマえ、ハ……!?」

「苦労したよ。その巨体に化けるには、ね」


 思いきり両手で付き飛ばしたもう一人のサイクロプスは、黒い靄へと覆われ、別の姿へと変化していた。


「うん。やっぱ、こっちの方が動きやすいし、気持ちが良いねー」


 その姿は先ほどケヴィンと話をしていたジェットとそっくりだった。ケヴィンは驚いて、横を見ると本物のジェットは手をひらひらさせて笑っていた。


「いやー。あいつ、俺に化けただけあるな。俺でも同じように近づくぜ。あんなに土埃舞わせたら、背後に回ってくれって言ってるようなもんだよな。まぁ、岩の槍に関してはちょっと避けれるか自信ないけど」


 ゆっくりと倒れ行くサイクロプス。何とか体勢を立て直そうと上半身を勢いよく捻り、地面へと手を付こうとする。その最中、頭上に青い光が瞬いた。

 それを見たサイクロプスは表情を強張らせる。しかし、彼に出来ることはほとんどない。既に体は宙に浮き、受け身も取れるか怪しい。その中でサイクロプスは自分の真下で轟音が響くのを感じた後、目の前が真っ白に染まった。


「よし、後はひたすら攻撃を加えるだけだな」


 ユーキは()()()()()()()を脱ぎ捨てると文字通り姿を現した。

 その指には魔力が充填され、地下の空間へと落ちたサイクロプスへと向けられている。


「やはり、お前は頭がいい。俺の攻撃だけは当たってはいけないと、ずっと探していたからな」

「それでも、この外套を羽織れば姿は見えない、か。まさかドッペルゲンガーのコピーした服を別の人間が着て使うだなんて、よく思いついたものね。おまけに爆破石を地下にいくつもばらまかせるだなんて、自分の魔法にそこまで自信がないの?」

「まぁ、上手くいけばいい程度だよ。本命は姿を見られずに安全なところから一撃で罠に嵌めるのが目的だったんだから、よしということで」


 お札を落とし穴の方向へと放ちながらドッペルゲンガーの女は呆れたように笑った。脳震盪を起こしたのか、サイクロプスは半目で口も開けたまま呆けている。その顔や上半身に紫電が走り、爆発が起こり、岩の槍が突き刺さる。

 もはや一方的な攻撃に勝ちを確信し、奇声を上げながら魔法を放つ者もいた。サイクロプスが穴の淵に手をかけると、どこからともなく剣の雨が降り注ぐ。


「えーっと、これもこれもこれもー! あ、これもいらないから、いっちゃえー!」


 骸骨兵士を狩りに行くと言っていた少女が魔法で剣を投擲して、サイクロプスの指や手に突き刺していく。おれほど深くに達してはいないが、無傷ともいかず苦悶に呻く。


「これで、終わりだ!」


 魔力を溜め込んだガンドがユーキの指から放たれる。閃光が走り、サイクロプスの顔面へと突き刺さる。

 頭部を跡形もなく吹き飛ばすかに見えた一撃は、唐突にサイクロプスから迸った赤い光に飲み込まれた。


「――――どこのゲームのラスボスだよ。変身とか今どきありきたりすぎるぞっ!?」


 剣に宿っていた光がサイクロプスへと移る。その体は真っ赤に変色し、瞳の色も真紅に染まる。噴き出ていた血は止まり、傷が塞がり始める。流石に生徒たちも状況が不利になり始めたと察して、先ほどよりも放つ魔法に魔力が籠るが狙いが雑になっていく。


「コの一撃……受けテみせヨ!」


 ユーキは息を飲んだ。先程の見たオーラの何倍もの光が拳へと集まっていく。慌てて、ガンドで拳を攻撃するが、周りの光に当たると光弾の輝きが薄れ、拳に当たる頃にはマッチのように小さい灯となり果てていた。


「そレだけカ? デハ、こレで終わりダ」


 大きく振りかぶった拳が実際の拳よりも何倍にも大きく見える。慌てて逃げ出す生徒たちだが、このままでは拳が突き刺さる方が先だ。

 思わず目を瞑る中、微かに遠くから詠唱が響く。


「『――――地に降り立つ雫を以て、その意を示せ。すべてを飲み込む、濁流の監獄よ』」


 突如、サイクロプスの足元から水の竜巻が沸き起こる。

 だが、その体は二桁に届こうかと思われる巨体。その体の拘束することは難しく、攻撃を止めることこそできたものの、少しずつ体勢を立て直している。


「コの程デ――――」

「――――では、これはどうかな?」


 腰にまで来ていた水の竜巻が一度、空中へと散開するとサイクロプスの顔を包み込んだ。流石のサイクロプスも顔を水で覆われては一大事。手で顔の周りをはたいたり、上半身や首を振ったりして水を払いのけようとする。

 それでも、水は引くことなくサイクロプスの顔を覆い続ける。やがて水の中に気泡が何度も混じるようになると、痙攣してサイクロプスは後ろへと倒れた。


「いやはや、君たちを追ってきてみれば、こんな大物と戦っているとはね。音ですぐにわかったけど、どういう状況か説明してもらえるかな?」

「オーウェン!?」


 サイクロプスが破壊して入ってきていた空間に、魔法剣を構えたオーウェンと後ろに付き従うエリーが立っていた。

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