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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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サイクロプス討伐戦Ⅳ

 五つのパーティが闘技場円周に作られた岩の槍を駆け上がり、跳び移ってくる。その中にはアンドレの姿もあった。


「アンドレ!」

「ケヴィン! 奴が来るぞ。負傷者への対応は任せた。俺はここから魔法で殿の援護をする」

「じゃあ、あと一パーティくらい来るんだね?」

「いや、()()()


 アンドレの言葉にケヴィンが息を飲む。あのバケモノ相手に一人で殿を務めるなんて、命知らずにもほどがある。本来は何人かで順番に魔法を使いながら足止めをしなければならないのに、それも一人では敵わない。ケヴィンが責めようと口を開くとアンドレは手で制した。


「お前も知ってるだろ。こういう場所で、単独行動が得意なすばしっこい奴を」

「まさか……」


 ケヴィンが何かに気付くと、すぐ近くの生徒から声が上がった。


「来たぞ! 詠唱を始めろ! 撃って撃って撃ちまくれ!」


 ケヴィンが目を向けると、そこには振り下ろされる剣を余裕で躱しながら、地面や屋根、時には建物の壁を走り抜ける男の姿が目に入った。剣が届かない距離へと逃れると、俺はここにいると言わんばかりに仁王立ちして、サイクロプスを睨みつける。


「はっ! デカいのは図体だけ。頭の中身はそこまでじゃなさそうだ。これなら、あのドッペルゲンガーを相手にした方がよほど面倒だなぁ、おい!」

「ジェット!」


 それはドッペルゲンガーと相討ちをしたと思っていたジェットであった。

 言葉が通じたのか、サイクロプスは走る速度を上げる。ジェットもまた走り出すが、正面からは魔法が何十という単位で襲い掛かってくる。そのほとんどはサイクロプスへと着弾していくが、僅かに逸れたり、剣で弾き返されたりした魔法がジェットへと牙をむく。

 紙一重の回避を見せながらジェットは闘技場の前まで辿り着くと岩の槍を駆け上がって、一息にジャンプして最上階へと降り立った。


「よぉ、ケヴィン。アンドレから聞いたぜ。なかなか面白いことになってるそうじゃないか。おまけに面構えがかなり男前になってやがる。こりゃ、()()()()()()()()()()()()

「まさか、クレイも!?」

「あぁ、聞いて驚け。あいつ数時間前まで自分のそっくりさんと睨めっこしてたんだとよ。今、こっちにゆっくり向かっているだろうから、辿り着く前に終わらしちまおうぜ。あいつ、絶対悔しがるから」


 仲間との感動の再会を果たし、テンションの上がりきっているジェット。その後方に目をやると、体中に黒い焦げ跡と細かい傷を刻まれながら、サイクロプスが右肩から左わき腹までを斜めに剣を構えて、盾にしながら進んできていた。その様子を見てジェットは目を細める。


「なるほどね。確かに腕力と防御力には自信がありますって体してるもんな。とりあえず、作戦を始める前に削るだけ削っておきたい――――」


 ジェットが言い終わる前に青い閃光が視界の端で瞬いた。サイクロプスも一瞬のことで何が起きたか把握は出来ていないだろうが、攻撃が放たれたことは反射的に理解したらしい。防御に使っていた剣を動かして迫りくる光弾へと翳す。

 剣へと光弾が直撃した瞬間、甲高い音が鳴り響いた。予想以上の衝撃に耐えられなかったようで、剣が僅かに傾くと、その腹に沿って光弾も流れていく。それでも完全には受け流しきれず、その光弾はサイクロプスの左肩を掠めた。

 鮮血が舞い、その後方で巨大な土煙が昇る。魔法を放っていた生徒たちは、体が硬直した。サイクロプスに至っては、自分の左肩をまじまじと見つめ、何が起こったかを理解しかねているようだ。だらだらと流れ落ちる血と遅れてやってきた痛みに、やっと自分が「傷」を負ったことに気付く。

 サイクロプスが光弾のやってきた方角を見ると()()コートを羽織った人間が指先を突きつけていた。





「――――遅い」


 二発目が放たれるとサイクロプスも今度は剣で完全に防ぎ切ろうと硬く柄を握り込んだ。だが、それを嘲笑うかのように剣の腹で軽い破裂音が響く。あまりの軽さに疑問を感じる間もなく、今度は太ももへと激痛が走った。


「今だ! どんどん攻撃を続けろ! チャンスだ!」


 アンドレの声が響くとそれに呼応して、多くの魔法が膝をついたサイクロプスへと襲い掛かる。警戒した二発目には魔力を込めずに、連射で本命の三発目を放った結果、魔法学園側が有利な状況になる。

 しかし、ユーキは喜んでいなかった。むしろ、その逆。力をそれなりに込めたのにもかかわらず、皮膚を裂く程度で、太ももに至っては貫通すらできていない。


「なんだよ、あの剣……」


 遠目で見ても規格外だったが、近くで見ればその恐ろしさがよくわかる。触れたら最後、何もかもを切り裂くような殺気を剣自体が放っているようにしか見えない。ユーキのガンドも剣に当たった瞬間、魔力が激減したのが見て取れた。

 彼我の戦力差は圧倒的。それならば膝をついている今が好機であることには違いない。アンドレの掛け声にユーキも自身を奮い立たせ、今の内にサイクロプスに痛手を負わせようと構えた。

 その時、巨大な一つ目を閉じる瞼が開き。ユーキの方へと瞳を向けた。多くの火球と不可視の刃が降り注ぐ中、サイクロプスは剣の届かぬユーキへ向けて、両手で剣を振り上げた。

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