自由の在処Ⅵ
炎は階段の上の方まで燃えあがり、入ってこようとする骸骨たちを次々に焼いていく。骨が燃えたところで何故効くのかは不思議だが、通用する分には問題ない。
ユーキは通路の後ろから吹き抜けてくる風に押されるように一歩前へと出る。炎が収まり次第、階段を駆け上がり、地上へと出なければならない。
「いやー、ユーキの魔法の威力も大概だよなー。これが魔法を始めたての初心者だなんて言ったら、他の上級生とか自信喪失間違いなしだな」
「前に一度見せてるから、既にしてるかも」
マリーが笑いながら褒めると、アイリスも少し笑みを浮かべながらユーキの背を見つめる。同年代に下手に嫉妬心などをもたずに、そのまま思ったことを言える彼女たちはある意味貴重な存在だろう。
そんな中で不意に階段の上から今まで以上に骸骨たちが押し寄せてきた。多くの者が自らの脚ではなく肋骨や頭蓋骨から着地していき、砕け散っていく。
「こ、今度は何だよ!?」
ケヴィンが怯えながら、後退りすると弱まった炎を割って人影が飛び込んできた。まだ動いている骸骨の上へと飛び降りて潰すとそのまま剣を振り回して、周りの骸骨を吹き飛ばす。
「っと、また会ったな。今の炎はあんたたちのか?」
「アンドレ!」
喜びの声を聞き、アンドレもケヴィンの存在に気付く。近づこうと一歩踏み出て、その場で踏みとどまる。
「さっきから化けてる奴とは出会っていないが、本物だという証拠もないからな。まずは、ここを出る方法を俺は探す」
「それなら、見つけたよ! それに今はドッペルゲンガーたちも解放されているから、気にしなくていいんだ」
「……詳しく聞こうか」
ケヴィンは今までの経緯を簡単に話していく。ドッペルゲンガーを操っていた女を捉えたこと。その女にドッペルゲンガーが化けることで支配権を奪っていること。ここからの脱出方法は偽物の水晶の破壊か、この階層にいるサイクロプスの巨人を倒してクリアすること。
耳を傾けていたアンドレは信じられないとばかりに目を細めるが、拘束されている女と並んでいるドッペルゲンガーを見比べて、ため息をついた。
「――――そういう体で騙す、という可能性も考えたが、君たちが全員ドッペルゲンガーならば襲い掛かった方が楽ではある。そう考えるとその話に乗るのが一番確実か」
「必要ならば、ドッペルゲンガーたちを全て、この闘技場に集められるわ」
「その方が他の者にも説明がつくだろう。さきほど、どこからか逃げてきた生徒の集団と行き違ってな。骸骨の持つ武器を奪って、今はこの街のどこかに散らばっている。下手に遭遇すればややこしいことこの上ない。それにそのサイクロプス。先程見かけたが、大量のドッペルゲンガーと同時に相手をするなんて想像したくないな」
両手を上げて、降参のポーズをするアンドレ。顔こそ冷静を装っているが、ここまで相当無理をしているのだろう。疲労の色を隠しきれていない。
「確かにそうだが、ここにいる全員で纏まったとして果たして、あのサイクロプスに対抗できるのかはわからないな」
「俺の剣では無理だ。そちらの魔法で何とかならないのか」
アンドレの視線が後方の女子たちへと向く。その視線に気付いた三人は首を振った。
「ハッキリ言って無理だな。サクラの魔法でも多分、ケガする程度が限界だろ」
「ここに来ている上級生の方で上級の呪文をできる人がいれば良いのですが、ご存じありませんか?」
サクラの疑問にアンドレは表情を歪める。
「多分、いるにはいると思うが、どこにいるかわからない。ただ、上級はかなり魔力を使う。今の疲労状態で使える奴がいるかどうか。生徒会長や不良野郎ならなんとかできるだろうが……」
ユーキの脳裏に二人の顔が浮かぶ。どちらも知っているが、ここにいる可能性は極端に低い。捕まっていた人の中にもいる様子はなかった。つまり、ここにいる誰かもわからない百人で徒党を組んで戦うしかない。
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