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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
白銀の聖剣と漆黒の聖鞘

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魔王の力Ⅴ

 曰く、「ある日突然、ダンジョンの入り口が変化し、巨大な蛇となって襲い掛かって来た。勇者が倒した魔王というのも蛇を体に生やしていた」らしい。


 本の中に籠められていたものから、心刀はそう読み取ったという。



「バジリスクが魔王の右腕的な存在というのも納得だな。魔王が蛇を従えるか、魔王自身が蛇である可能性があるってことになりそうだ」


「この前、聖剣を抜いた時に現れた魔物も蛇の特徴を持っていたな。もしかすると、魔王と血縁関係がある存在という見方もできるかもな」



 ウッドとマックスが眉根を寄せて、呟く。


 石化の魔眼と猛毒の蛇「バジリスク」に、無数の蛇を背に生やした竜「ラドン」。どちらも蛇自身で合ったり、体の一部になっていたりすることを考えると無関係とは言い切れない。



「逆に言えば、その二体を従えているってことから、もっと強い能力を持っていそうですよね。それにダンジョンが蛇に変化した時に中にいたらと思うと……」



 桜が顔を蒼褪めさせる。


 気付いたら巨大な魔物の胃の中にいたというのは、なかなかに笑えない冗談だ。仮に外にいたとしても、そんな魔物の姿を見たら絶望しかないだろう。



「……魔王の完全消滅。それが難しいと言われる理由の一つは、自らの肉体を変化させて逃げてしまう能力があるからです」


「リブラ枢機卿!? まさかお主、そのことを話すつもりか!?」



 数異郷たちの中から怒声にも似た大声が飛び出る。しかし、リブラ枢機卿は、声の主に振り返ることなく、今まで以上に通る声で言葉を紡ぐ。



「ここまで話が出てしまっては、いずれ真実に辿り着くでしょう。下手な推測で間違った知識のまま対応されるよりは、真実を伝えておいた方が良い。この判断が間違いだと思うのであれば、みなさんの望む罰を受けましょう。無論、枢機卿の座を追われ、処刑されることもあり得るという覚悟が私にはあります」



 一転してリブラ枢機卿が話す気になった。頼もしくもあるが、まだ他に何か危険な内容が控えているのではないかという緊張感が勇輝たちに走る。


 勇輝は枢機卿たちの顔をさっと窺った。


 怒りで顔を歪めている者、諦観して目を伏せる者、渋い顔をしつつ成り行きを見守る者と様々だ。



『わかった、わーかった。一番の当事者は俺様だ。そこから先は俺様が話す。お前さんが悪みたいな雰囲気はごめんだ!』



 リブラ枢機卿が一呼吸して、口を開こうとした正にその時、聖剣が声を大にして割って入る。



『俺様の力で魔王を封印することはできる。だが、アイツは脱皮のように自ら体を捨てて、大地の魔力の中を通って逃げやがる。俺様の力が途切れたら、そこから力を蓄えて肉体を復活させるって形だ。その際に、魔王の力の一部がダンジョンに流れ込んで肉体を持つと、それ単体として暴れ出す。本の中に記述されていたのは、そいつのことだろう』


「待ってくれ。それじゃあ、魔王の完全消滅は――」


『ほぼ不可能に近いな。やるなら、それこそ一撃で消し飛ばすしかない』



 リブラ枢機卿が中断して際に点いた魔法石の明かりが、マックスの顔に影を落としていたが、それがより一層深くなった。


 せっかく世界を救うと息巻いていたのに、始める前から勢いを潰された形だ。



「なぁ、もしも聖剣を使わずにダメージを与えて逃げられたら、どうなるんだ?」


『俺がダメージを与えた分までしか封印の効力はない。それ以外の攻撃だと、復活が早まる可能性が高くなるばかりか、ダンジョンの蛇化も増えるかもな』



 聖剣が言葉を紡ぐ度に絶望が波のように押し寄せる。


 勇者のやることに価値はある。多くの命を救うことができるだろう。人々に安寧を齎すこともできるだろう。だが、それは永遠ではない。どんなに努力し、文字通り血の滲む、血を吐く戦いの先に勝利を掴んだとしても、再び魔王という脅威が現れることを止められない現実があった。

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