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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
第5巻 暗黒の淵にて、明星を待つ

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進撃Ⅶ

 階段を登った先に広がっていたのは、一階と同じような景色だった。幸いなことに、すぐ近くには分かれ道が存在しないので迷うことはないはずだ。


「当面は上りの階段を最優先で見つけよう。途中で気になるものがあったら、随時、そこで考える」

「わかったぜ。とりあえず、攻撃は静かにって言うのは継続でいいのか?」

「……相手にばれているってこともあるけど、今のところはやめておこう。わざわざ自分の位置を知らせる必要はないからね」


 杖を回して余裕そうに構えていたマリーだが、表情を固まらせて目を閉じると、数秒後に真剣な顔に変わった。


「何か聞こえる。多分、さっきの骸骨どもかな。骨が当たる音がいくつも響いてる」

「本当だ。聞こえてくる」

「悠長に話している暇はないけど、そういう突き上げを食らうのは伯爵や団長くらいで十分だ。走るぞ」


 フェイの後に続いて、全員走り出す。代り映えのない通路の壁が通り過ぎていく中で、時折、見慣れない色の壁が何度か目に入った。気になってユーキが振り返ると、通り過ぎてから数秒後に壁が消えて中から骸骨が湧き出ていた。


「え、そういう仕組み!?」

「どうした!?」


 フェイが驚いて振り向くと、勇輝と同じ光景を見たのか、目を丸くする。


「色の違う壁の前を通り過ぎると骸骨が湧き出てくるぞ。迎撃するか?」

「いや、あの程度なら最悪、君がいくらでも薙ぎ払えるだろう。先を急ごう」

「通路で撃てば、まとめて倒せる、よ」

「俺に押し付けないでくれ……」


 ガンドの破壊力を褒められていると言えば聞こえはいいが、今、無闇に使うとダンジョン崩壊の危険があるため役立たずでもある。魔眼で通路の先を見ると、まるで王族の墓に一緒に埋葬された兵士のように等間隔で部屋が並んでいた。


「この先もずっとあるぞ」

「このままだと、私たちの体力が持たないかも……」


 サクラが不安を口にする。この前の階層でも長い時間走って、体力と魔力を消耗している。確かに駆け足とはいえ、長い時間、逃げ続けるのは難しいだろう。


「あー、このまま階段探しなんて面倒だぜ。一気に上まで上がれればいいのに」

「……その手があったか」

「へっ?」


 ユーキは思わず振り返ると、驚いて目が点になっているマリーがいた。そのまま、視線を横にずらすとその先にはサクラがいた。


「サクラの魔法で天井に穴を開けて進むのは?」

「多分、人工ダンジョンだと修復する魔法がかかっているから、開けてもすぐに閉じちゃうか、そもそも穴が開かないと思う」

「そう簡単にはいかないか」

「ユーキなら、いける?」


 話に耳を傾けていたアイリスが、今度はユーキへと視線を向ける。逆指名を受けたユーキが、今度は目が点になる番だった。


「さっき階層の間を撃ち抜いて、まだ煙が上がってる。つまり修復する魔法が効いていない可能性が高い。だから、威力の調節さえ失敗しなければ安全に穴を開けられるかも」

「じゃあ、最悪の場合はそれも考えた方がいい。だよね、フェイ」

「……場合によっては、ね」


 フェイは苦しそうに言った。いつ終わるとも知れないダンジョン、姿の見えない敵、そして自分たちの身の安全。あらゆるものを天秤にかけて判断しなければいけない。それはまだ若い騎士であるフェイには重しとなって心に圧し掛かっていることだろう。

 恐らく、今この瞬間も、伯爵やアンディ、先輩騎士たちに言われたことを思い出しながら最善の道を探し出しているはずだ。


「幸い、敵の数は多いものの、進軍は遅い。それならば、どんどん前に進んで行こう。目的は地上への帰還方法を最優先。次点で行方不明者の発見と救出だ」

「わかった。フェイの言う通りに進もうぜ。困ったときは、ユーキにドカンとやってもらおうぜ」

「えー、結論はそこに戻るのか?」


 肩を落としながらユーキは走る。敵に追いかけられている状況にも拘わらず、マリーは笑いながらユーキの背を叩いた。

 そのまま、緩やかにカーブを描く通路を走り続けると、目の前に先程と同じように分かれ道と階段の上りが現れた。先頭を走るフェイは一度止まり、後ろを確認してゆっくりと階段を登っていく。上からの攻撃を警戒しながら、次の階層へと顔を覗かせるとその顔が曇った。


「また、同じような階層だな。このまま、本当に上がって大丈夫か?」

「一度決めたんだ。行けるところまで行った方が楽になる。それとも、休憩が必要か」

「そっちこそ、ここでへばるなよ。後ろの三人は無理しないで、きつい時は言ってほしい」


 マリーはフェイへとサムズアップする。まだまだ体力に余裕はあるようだ。他の二人も笑顔で応える。五人は階下から響く骨の音を背に、三階通路を駆け出した。

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