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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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真の姿Ⅵ

 上から迫って来る炎の天井を気にせずに突っ込む。


 元々の身体強化による足の速さで、ブレスに飲み込まれる前にラドンの下に辿り着くことはできただろう。しかし、それよりも先に勇輝へと意識を集中させていたラドンの顎にグラムが勢い良く叩きつけられた。



「やっぱり脆い。ドラゴン名乗るには百年早いんじゃない?」



 天へとブレスが逸れ、その間に勇輝は心刀を握って跳躍する。


 魔眼で見ても把握できない弱点。それならば、生物が持つであろう当たり前の急所を狙うのみ。ラドンの首――正確にはそこに流れているであろう頸動脈――を断ち切らんと心刀を切り上げる。



「ちっ、まだ重いな」



 身体強化で膂力が上がっているとはいえ、まだ、両断できるような感覚にはならない。


 それならば、と質ではなく数で攻めることを勇輝は決意し、足の裏へと魔力を集める。そこに風も一緒に集めるような気持ちで踏み抜くと、空中でも強い反動が返って来た。


 来た軌道をそのまま戻りながら、傷をつけた場所に向かって、もう一度、心刀を振り抜く。



「これは私も負けていられないな」



 一撃目では血管にまで届いていなかったようだが、二撃目を重ねたことで緑の血が勢いよく噴き出始める。そこに、ソフィアがグラムを振り被って勇輝と空中ですれ違った。


 ――まさかの、三撃目。


 しかも、邪竜を討ったとされる聖剣の一閃。当然、その威力はすさまじく、首の三分の一が確実に切れて――いや、抉れていた。それが決め手になったのか、ラドンが完全にバランスを崩して横たわる。



「二人とも! 今から魔法を撃ちます!」



 桜の声が響き渡った。ソフィアはそのまま空中を跳び、勇輝は地上を駆けてラドンから離脱。直後、桜の周囲に展開された無数の石礫が天高く射出された。


 放物線を描いて落下し始めたそれは次々に背中の棘へと突き刺さり、粉砕していく。時折、残った棘が雷を放つが、すぐに地面へと吸収され、どこにも被害を及ぼさずに終わる。


 その光景を見ながら勇輝は桜の魔法に見入ってしまった。



(最初に撃ち出すところで魔力を使って、その後は重力に引かれる速度を利用。加速よりもコントロールに魔力を割いて、命中させてるのか)



 ただ、魔力を籠めるだけではなく、繊細なコントロールを見せつける桜。式神を操る中で身に着けた空間把握能力と魔力制御の能力の高さに、勇輝だけでなく騎士たちの中からも感嘆の声が上がる。


 石礫の雨が止むと同時に、アルトがソフィアに呼びかける。



「治療は全員終わりました。今は少しでも早くその背中の棘を破壊しながら、攻撃を加え続ける必要があります。私の護衛を最小限にして、攻勢に出るべきです」


「――いえ、それならば、周囲に展開している黒騎士で十分。キャロライン、決してアルト様から離れるな!」



 そんなことは百も承知とばかりに、キャロラインは神殿騎士と共に触手の頭部を切り裂く。


 残っている触手は数える程度だが、鎧を着ていない桜やアルトからすれば十分脅威だ。一噛みで腕の一本を軽く持っていかれるだろう。



「私だって、治療以外にもやれることはあるんですからね!」



 そう告げたアルトが桜の持つ杖と同じくらい大きな杖を振りかざす。すると、次の瞬間、ラドンを包む光のドームが形成される。



「本来は、魔物避けの魔法ですが、ちょっと浄化魔法と混ぜれば、こういうこともできるんです!」



 完全にラドンがドームに包まれると、皮膚全体が焼かれているように焦げ始める。もちろん、ラドンは悶えて逃れようとするのだが、機動力は右半身にしか残っておらず、実質、逃れる術がない。



「周りに誰もいないからいいものの、いたら大惨事――って、背中の棘から放電されていない? まさか、光魔法は吸収できないのか!?」



 冷静に考えれば火、水、土、風は基本属性魔法とされ、光属性はそれに当てはまらない。まさか、魔物の吸収能力の例外になっているとは思わなかった。

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