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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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真の姿Ⅱ

 幸いにも、「攻撃に耐えて」の一言が周囲の命を救った。多くの騎士たちは回避か防御に成功しており、壊滅的な被害には繋がらなかった。



「治療をします! 誰か、援護を!」



 ただ、全員が無事だったわけではない。盾を持っていなかった黒騎士は鎧の一部が吹き飛び、酷い火傷を負っていた。また、ある神殿騎士は盾で耐えたものの、衝撃の受け方が悪かったのか、腕があらぬ方向へと曲がってしまっている。



「あまり長くは持ちそうにない。何か手はあるか?」


「俺のガンドは連射しても六発が限界だ。ラドンの体を全部消し飛ばすには、少し弾数も魔力も足りない。もっと巨大な魔法で消し飛ばすか、独立して頭部が動かないよう細かく高速で切り刻むか」



 どちらにしても勇輝には難しい。前者はラドンが大きすぎてガンドでは仕留めきれず、後者は魔力を全開で身体強化に回しても魔力切れになる方が早い。


 そこで勇輝は肩越しに背後を振り返った。この場において、魔力の予備があり、土属性魔法を得意とする者がいる。



「桜! 岩の槍とかで、こいつを圧し潰すとかできるか?」


「ぜ、全部は無理だけど、今刺さっている大きさの二倍ぐらいだったらできるかも」



 ラドンの体に既に刺さっている岩の槍は二本。ただし、それも半ばで折れ、ラドンが動くたびにボロボロと崩れ落ちていく有様だ。仮に二倍の大きさの岩の槍を命中させたとしても、動きを制限する程度にしかならないだろう。


 せめて、心臓のように弱点があれば一撃で仕留められる可能性もあるのだが――



「そういえば、こいつ中身はどうなってるんだ?」



 口がたくさんあるのは百歩譲って良いとする。何せ、先日はキマイラに出くわしたところだ。そこまで驚くことではない。しかし、こうまでして頭部がたくさんあると、明らかに食道や胃と言った器官が複雑に絡み合っているようにしか見えない。それとも、魔法を放出するだけの特殊な部位なのだろうか。


 勇輝は軽く手を閉じては開いて、緊張をほぐす。



「ソフィアさん。あの一番大きな腹の口の中に、俺のガンドを放ったらどうなると思う?」


「それは……背中を貫通するのでは?」


「もし、あの強力な攻撃が放たれる直前に着弾したら、不発になるどころか、体の中を逆流して自爆とかしちゃいそうだなって」


「そんなバカなことが――」



 しかし、ソフィアは途中まで否定しかけて、口を噤んだ。その時間はほんの一瞬だったが、彼女の中で納得できる部分があったらしい。小さく頷いたソフィアは、勇輝の考えを指示し始めた。



「私の魔力も半分を切っている。こうなったら、賭けのような方法で活路を見出すことも必要なはず。攻撃はそちらに任せて、私はタイミングを掴めるようサポートに回ろう」


「え、本当にやるのか?」



 驚愕する勇輝に、ソフィアは前へと進み出て笑う。



「このまま手をこまねいて、アルト様を狙われても困るのでね。やれる手段は思いついた時にやっておく方が良い。黒騎士隊の隊長としての訓練は失敗だが、現実にはこういった戦況もあり得るはずだ」



 そう告げると、ソフィアはラドンに向けて加速する。新しく生まれたばかりの脚を切り捨てたかと思えば、ラドンの背中に飛び乗った。


 周囲の頭部を薙ぎ払い、その背にソフィアはグラムの刃を突き立てる。


 当然、ラドンはその痛みに天を見上げて吼える。長い首が仰け反り、恐ろしいレーザーを放つ腹の口が露になった。


 しかし、それは同時に二つの問題を引き起こす。一つは、切り捨てた十数本の触手が地面に落ちるなり痙攣を始めていた。その内、ラドン本体とは独立した動きを始めるに違いない。



「させるかっ!」



 そんな触手頭部に魔法を撃ち込んだのは、反撃を見計らっていた黒騎士たち。神殿騎士が盾となり、その陰から詠唱した魔法を飛ばしていた。

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