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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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緊急攻略Ⅴ

 二階層も同じ洞窟型で、まさしくゴブリンやオークが出て来る雰囲気があった。しかし、神殿騎士たちの姿はなく、どうやらかなり先に進んでいるようだった。



「放置されていたダンジョンの氾濫の危険性を考えたら、当然の行動だけど……随分と進軍が速いな」


「彼らの本領発揮する状況ですから、張り切っているのでしょう。もちろん、冷静さは保った上で」



 首都であるカルディアにおいて、誰も見たことがない場所の調査をする機会など、ほとんどないに違いない。試練のダンジョンがそれにあたるかもしれないが、三階層のスフィンクスが原因でその先へと進めなかったために、彼ら第五部隊もストレスが溜まっていたはずだ。


 今回の新ダンジョン発見の報告とその迅速な調査。可能ならば攻略も視野に入れた部隊の投入ともなれば、名誉挽回のチャンスとばかりに気合が入るのも無理はない。



「だからって、ダンジョン内の魔物を狩りつくすなんて、やりすぎでは……? いや、安全確保の為なら致し方なしって感じか」


「ここまで狩られてしまうと、一週間くらいは安心して中を歩けそうな気がしますが、油断は禁物です。第五部隊だけで、この階層を全て回るのは無理なので、狩り残しがいると考えて動いた方が良いでしょう」



 不思議なことに、二階層も一階層と同じ構造をしていた。奥へとひたすら続いていく通路と、脇から合流する細道。しかも、細道はご丁寧に分かれ道もなく、終点が見える程度の長さしかない。


 ダンジョンの中を進んでいるのに、あまりにも静かすぎる。それが不気味に思えてならなく、嫌な感覚を後押しする様に不安が勇輝の胸中に広がっていく。



「……流石、第五部隊と称賛を送りたいところですが、少し心配になりますね」



 アルトの呟きが聞こえてくるが、ソフィアはそれには答えずに黙ったままだった。


 沈黙は金なりと言うが、不確定な状況を前に不安を煽るような言葉は部隊を預かる者として、口にするわけにはいかないといったところか。


 何も出てこない道を歩き続けていると、最終的に三階層へと至る階段へ行きついた。



「あれ? さっきは見張りの人がいたけど、今回はいない?」


「おかしいですね。先程と同じようにいるものだと思っていたんですが……」



 桜とアルトが戸惑う中、ソフィアもまた眉根を寄せて、周囲を見渡していた。しかし、魔物の姿はなく、ここで襲撃に合った様子もない。地面や壁が抉れたり、血痕が残ったりもしていなかった。



「下で何かあって、援軍に向かった可能性はありませんか?」



 キャロラインが告げると、多くの黒騎士が次の階層へと向かう階段に視線を向ける。不思議なもので、途端にそれが人を呑み込もうとする魔物の口に見えてくる。


 ここでも勇輝の魔眼は異変を示さず、ただただ、普通のダンジョンであることと、何も魔物がいないことを示しているようにしか見えなかった。



(不気味だな。ここまで静寂に包まれているダンジョンがあったか?)



 一瞬、罠の存在も疑ったが、その気配もない。そうこうしている間に、ソフィアが声を上げた。



「全員。戦闘もほとんどなく、ここまで来られた。このまま、次の階層に進むが問題ないな?」



 その言葉に否定をする者は一人もおらず、すぐに次の階層へと向かう。そこでも魔物の姿は見当たらず、遺跡風の通路に周囲が変化していたのが真っ先に目に入った。



「試練のダンジョンと同じ――もしかして、何かしらの影響で似た構造になっている?」


「可能性はあるでしょう。だからこそ、変に繋がって拡大されないように急がねばなりません」



 形だけが似ているのか、それとも本質まで似ているのか。


 一階層がスケルトン兵の代わりにゴブリンだとするならば、二階層は罠部屋かそれに類するものだったはず。しかし、見張りはオークが出現すると言っていたので、ここにも魔物が跋扈していたに違いない。


 では、第三階層は謎解きがあるのか。それとも、魔物がさらに増えるのか。勇輝たちは緊張しながらも三階層へと足を踏み入れた。

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