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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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侵食するダンジョンⅠ

 第五階層の光景は、今までの洞窟型とも遺跡型とも異なる様相を呈していた。


 地下にあるにもかかわらず、天には青い空が見えている。白い雲が風によって流され、太陽の光が降り注いでいた。


 その光景は以前に勇輝と桜は見たことがあった。



「魔法学園のダンジョンと……同じ?」



 魔法学園にも人工的に作られたと言われるダンジョンが存在している。様々な要因が重なり、階層間の移動がめちゃくちゃになったそのダンジョンを、勇輝たちは最下層まで辿り着き、弱体化しているとはいえボスを倒しきっている。


 その際にボスを迎え撃った場所と今いる階層の様子が酷似していた。


 周囲に存在する円形の壁。その上には観覧席のようなエリアが階段状に続いている。それはローマの闘技場を思い起こさせた。



「……もしかして、同一人物が、ここと魔法学園のダンジョンを作ったとか?」


「それは考えづらいですね。このダンジョンは初代勇者様が魔王を討伐された後に、とうじの枢機卿たちが創ったと聞いています。その頃にはファンメル王国はあったかもしれませんが、そこまで行う余裕があったとは思えません」



「じゃあ、俺たちみたいに中に入ったことがある人が伝えたとか、設計図がどこかに流出していたとか……?」



 いくら枢機卿たちが優秀とはいえ、たった十二人でダンジョンを作れるはずがない。必ず、それに携わった人員がいる。そして、強制契約でもしない限り人の口に戸は立てられない。何かしらのきっかけで、情報が流出するのは世の常だ。



「因みに、勇輝さんたちがいう魔法学園のダンジョンですが、そんなに似ているんですか?」


「似てるというか、そっくりというか……。こういう円形の闘技場で、階層ボスをみんなで総攻撃して何とか倒し切ったんだよね」



 桜の言葉に勇輝も頷く。その階層ボスは、ダンジョンの管理人を名乗る一つ目の巨人を模したもので――



「そういえば、あのサイクロプス。自分を神だって名乗ってたよな。そうなると、人工じゃなくて、神造ダンジョンだったりするのか……?」



 人間が創ったダンジョンに後からサイクロプスが来たという可能性もあるが、日ノ本国で出会った彼の兄弟である、もう一人のサイクロプスはダンジョンを作っている最中だった。そう考えると、魔法学園のダンジョンも神と名乗るサイクロプスが創ったと考えるのが自然だろう。



「なかなか、興味深い話ですね。サイクロプスと言えば、一つ目の巨人で有名ですが――アレと関係があるのでしょうか?」



 ソフィアが引き攣った表情のまま、ある一点を見つめていた。その声音に嫌な予感を感じた勇輝は、恐る恐る彼女の視線を追う。すると、そこには、かつて階層ボスとして現れたサイクロプスと同じ位の大きさの巨人が闘技場の外から歩いて来る姿があった。



「なっ!?」



 大きさは最低でも十メートルを超えている。ただし、サイクロプスとは明らかに異なり、目は二つ。頭髪や髭も生えており、まるで無人島に長年住んでいたような風貌にも見える。体は筋肉質で見方によれば原始人のように見えなくもない服装だ。尤も、その場合は、手に握ったツルハシがかなりミスマッチな形になってしまう。


 ソフィア同様、全員が言葉を失っていると、その巨人の黒い瞳が勇輝たちの方へと向けられた。



「ほう? ここに来たということは、次代の勇者が生まれる時が来たか」



 人の言葉を話すどころか、勇者と言う単語が飛び出てきたことに驚きを隠せない勇輝たち。そんな中、巨人は闘技場を軽くジャンプして飛び越えて来る。着地と同時に轟音と地響きが起こり、勇輝たちは体が数十センチ浮き上がったような気がした。もしかすると、本当に浮いていたかもしれないが。



「わ、私は今代の聖女のアストルム。あなたは、何か勇者についてご存じなのですか?」



 アルトの問いかけに巨人はツルハシを立てかけると、その場に胡坐をかいて座りこんだ。

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