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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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試練のダンジョンⅧ

 ローブの下から、勇輝に狙いを定めるかのように骨の指を向ける。すると、レイスの周囲に四つの火球が浮かび、瞬時に勇輝へと襲い掛かった。



「勇輝さん!?」



 見た目とは裏腹に、その威力はすさまじく土煙を巻き上げて、爆風は桜たちの元まで押し寄せる。それをソフィアが大剣の一振りで相殺し、眉を顰めた。



「勇者の試練にしては、急に敵のレベルが上がりすぎています。聖剣が浄化作用を持っていたとしても、切り付けようと接近するまでにやられてしまうでしょう」


「ソフィア。そうじゃなくて、彼の心配くらい――」


「心配? そんなものは必要ありません。黄金結界に、常軌を逸した身体強化。どちらか一つだけでも十分に防ぐか、躱すかできる力があります。――ほら、あの通り」



 ソフィアの示す土煙の先には、無傷の勇輝が立っていた。それもレイスの背後へと回り込んでいる。


 それにレイスも気付いたようで、即座に勇輝へと指を向ける。だが、それよりも先に心刀の切っ先が白銀の煌めきを放った。



「――ッ!?」



 レイスが後退り、己の右腕を抑える。その間に、勇輝は地面へと落ちた手の骨をガンドで消し飛ばした。



「悪いな。お前みたいな奴は、一度切ったことがあるんだ。住んでる国は違うけど、本質的には一緒だろ?」



 どちらも人を襲う霊体ならば、多少の姿の違いなど勇輝の前には意味をなさない。切れると魔眼で認識できたのだから切るだけだ。


 レイスは勇輝を危険だと判断したのか、口を開けて吼える。しかし、勇輝は全く動じた様子がない。暖簾に腕押しと言わんばかりに涼しい顔で受け流す。


 人差し指を向けた瞬間、レイスの動きが一瞬止まる。本来ならば、ここでガンドが放たれるのだろうが、勇輝は一言告げた。



「俺を警戒するのは結構だけど、お前の後ろにいるのは聖女様だぞ?」



 直後、レイスの背後で太陽が出現したかのような白い光が放たれる。黒い靄を吹き飛ばし、火に水をかける際に聞こえる音がレイスの体中から響き渡った。


 アルトが唱えていたのは光属性の魔法で、アンデット系に大ダメージを与える浄化の魔法。本人曰く、大抵のアンデットなら一瞬で消滅させる威力があるらしい。それを数秒も耐えているということは、レイスは相当強い部類の魔物なのだろう。


 尤も、勇輝からすれば日ノ本国で遭遇した怨霊の方が、元人間だった分、悪知恵が働き厄介だった覚えがある。



「ア、ガガガッ!?」



 ガクガクと全身を震わせて歯を打ち鳴らすレイスだったが、十秒もすると体の大半が白煙に変わり、形状を保てなくなっていた。下半身は完全に消え去り、残ったのは頭部と左腕のみ。既に首の骨や肩は消えているのに、浮かんだままなのは霊だからなのだろう。


 それを活かしてか、レイスは最後にアルトの方へと左腕を向け――



「――ガッ!?」



 顔面と腕に火球を受けて消滅してしまった。


 完全にレイスの姿が見えなくなり、浄化の光が収まったところで勇輝は感嘆の声を上げた。



「今のは桜が? あの光の中でよく狙い撃てたな」



 桜たちの下に戻りながら、心刀を鞘へと納める。部屋の中に足音が木霊し、冷たい空気が通り抜けていくが、レイスがいた時のような悪寒は無かった。



「あはは、何となくいたなーってところに撃ち込んで起爆させただけだったんだけど、勇輝さんに当たってないよね?」


「怖っ!? でも、桜だしそこら辺は上手くやってくれてそうだから問題ないか」


「も、もちろん、勇輝さんの援護だよ。レイスって、時にはゴブリンキング並みに危険な魔物の時もあるって聞いたことがあるから――」



 桜が慌てて、理由を告げていたが、アルトが杖を二人の間に差し込む。その光景に勇輝と桜の視線がアルトへと注がれる。



「私が同じ立場でも、きっと魔法を撃っていたでしょうから。それよりも、勇輝さん。あなたの武器でレイスを切っていたように見えましたけど?」



 批難というよりは、疑念が籠った視線をアルトは勇輝と心刀に向けていた。

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