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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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試練のダンジョンⅦ

 四階層目の広間には何もいなかった。


 また罠が仕掛けられている部屋かと地面を見るが、そこには正方形の石畳は存在しなかった。その意味では、よりリアルな罠が仕掛けられていて、見つけ辛いという可能性がある。


 しかし、勇輝の魔眼には地面に罠らしき存在を示す光は映っていない。むしろ、部屋の奥からこんこんと湧き出るような黒い靄に警戒感を強めていた。肉眼では見えないのに、何かがいるという確信があった。



「何か、嫌な気配がしますね。恐らく、アンデット系の魔物でしょうか?」


「奇遇だな。俺の魔眼もあまりよくない光景が見える。黒い靄が奥の方から噴き出しているんだけど、こういう光景の時には、大抵、よくない奴が出て来るんだ」



 一階層で見た敵もスケルトンだった。それを考えるとアンデット系の魔物が出てくることは不思議ではない。しかし、宗教施設のお膝元のダンジョンに出現する魔物がアンデットとは、洒落にならない。


 浄化の魔法を練習するには、ちょうどいいのだろうが、これをもし狙って作ったとするならば、なかなか冒涜的だ。スケルトンが本物の人骨でないと思いたい。



「入ると同時に出現する可能性がありますね。ここは浄化の魔法で一掃するのもいいでしょう。少し時間稼ぎをお願いできますか?」



 時間稼ぎなどと言わずに自分が倒してしまってもいいだろう。


 そんなことを考えている勇輝だが、ここまで来て、何もせずにいるのも居心地が悪そうだ。ここはアルトに出番を譲るつもりで、勇輝は頷く。



「因みに、先程の魔物は戻って来ていませんか?」


「はい。音沙汰無し。穴の方から聞こえるのは風の音くらいです」



 三階層に異変はなく、戻る必然性もない。


 ソフィアが頷くのを見て、勇輝は前に足を踏み出した。足音が響き、より冷たい空気が頬を撫でる。


 勇輝の魔眼には自分の周りに展開された結界が、わずかに明滅しているのが見えた。



「結界が反応……でも、そこまで強い攻撃、じゃないか」



 そう呟くと同時に、背後から何かが噴き出る音が響いた。まさかの背後から奇襲かと振り返る。


 そこには前から流れて来ていた物と同じ黒い靄が勢いよく噴き出て、帰り路を塞いでしまっていた。



「閉じ込められた!? 今までとは違うということですか。私は後ろを警戒します。あなたは前を!」


「了解っ」



 ソフィアの指示に、勇輝は焦りながら心刀の鯉口を切り、右手に魔力を集める。もしも敵が姿を現すならば、その前兆を魔眼が見逃すはずがない。



「桜、念のため、俺が魔物の出現と同時に前に出る。万が一の時に備えて、火球か石礫の用意を頼めるか?」


「任せて。魔力に余裕はあるから、いくらでも撃てるよ」


「頼もしいな。それなら安心して前に出れる」



 勇輝はそう告げると同時に、前へと駆けだした。既に黒い靄が前方で収束を始めており、そこに魔物が出現すると推測できていたからだ。


 先手必勝。出現と同時に強烈な一撃を与えて完封する。そのつもりで前に出た勇輝だったが、魔物が姿を現すよりも先に靄の中から紅の光が生まれ出た。



「あっぶなっ!?」



 真っ直ぐに顔面へと放たれた火球を躱して、お返しとばかりにガンドを放つ。黒い靄に風穴が空いたかと思えば、竜巻のように渦を巻き始めた。



「……随分とおしゃれなご登場だな」



 瞬きをしている間に黒い靄はローブに変わり、半透明の骸骨がこちらを見返していた。その様子から、勇輝はスケルトンの魔術師版だと推測していたのだが、背後からアルトの声が響いた。



「勇輝さん。それはレイスです! かなり上位な魔物で、物理攻撃が効きません!」



 物理攻撃無効とは穏やかではない。しかし、勇輝は微塵も焦りなど感じていなかった。


 ガンドは残り五発も残っているし、何よりレイスと似たような相手を既に撃破したことがあるからだ。

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