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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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試練のダンジョンⅣ

 洞窟だった天井や壁が、いつの間にかレンガを組み合わせたような遺跡風の通路の変化していた。視界を灰色とヒカリゴケの灯りだけが占める中、勇輝は眉を顰めた。


 まっすぐな通路の先にある大きな空間。既に魔眼には、そこから漏れ出る異常な光の量を捉えていた。思わず勇輝は足を止める。



「どうしたの?」


「イヤな予感がする。この前のキマイラも大概だったが、この先にも何かヤバそうなやつがいるっぽい」



 肉眼では確認できないが、明らかに何かしらの魔物がいるのは感じていた。果たして、この先に待ち受けている試練がなぞかけなのかと本気で疑問に思ってしまう。



「確か、巨大な獣型の石像がいるらしいですね。こちらを襲って来る様子はなく、不正解だと入口に戻されることもあるとか」


「解答回数に制限でもあるのか……。とりあえず、奇襲は受けないのなら、そのまま進んでも良いけど、ヤバそうならすぐに退却で」



 勇輝は警戒しつつ、ゆっくりと進み出す。自分たちの足音の反響以外に何か音が聞こえないかと耳を澄ませるが、部屋の中にいる者は一切身動きをしていないようで、何とか聞えたのは奥から吹いてくる風の音くらいだった。


 やがて、部屋の入り口に辿り着く。部屋の奥行きも相当なもので五十メートル以上はあるだろう。横幅も二階層の罠の間より広いが、床自体は狭く、両脇が断崖絶壁という言葉がぴったりなほどの底が見えない穴が待ち構えていた。



「……落ちたら、死ぬよな」


「何か急に私たちが小人になったみたい。天井もすごく高いし……」



 部屋に一歩踏み入れる。すると、部屋の中央の道を塞ぐように置かれていた岩の塊が動き出した。


 ヒカリゴケに照らされた白褐色の岩の全体像が明らかになる。首から上が人の顔でありながら、下は獅子。それだけでもどこかで見たことがあると思わせる姿なのだが、勇輝はあえてその名を出さずに観察を続ける。


 その存在の体の大きさからして、部屋の中で動くには大きすぎる。背中から儂のような羽が生えているが、とても羽ばたいて飛べるような広さは確保されていないので、飾り同然だ。やろうと思えば、ガンド一発で粉々にできる自信が勇輝にはあった。



「――この先に進まんとするならば、我が問いかけに答えよ」



 威嚇するでも、飛び掛かるでもなく、ゴーレムのような質感の魔物は淡々と言い放った。男にも女にも聞こえるような声が、部屋の中に木霊する。



「『朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何か』。正しき答えを提示で来たならば、我が身をこの穴に投じて、道を開けよう」



 そのなぞかけに勇輝は目の前の魔物を見上げて唸る。どこからどう見ても、聞いても、自分が知っている存在にそっくりだからだ。



(なぁ、これ、スフィンクスだよな?)


『あぁ? どっからどう見てもそうだろうが。装飾こそ違うが、俺にもそう見えるぞ』



 心刀から返ってきた言葉に少し安心感を覚え、小さく息を吐く。


 スフィンクスは旅人になぞかけをして、答えられなかったら食い殺すという恐ろしい生き物であると伝えられている存在だ。「ギザの大スフィンクス」はピラミッドと共に世界遺産に登録され、多くの人が知っている。



「そうか。そもそも答えが知られていないと、こんな問題解ける人はいないよな……」



 勇輝は答えを聞いたことがあるから、簡単だということができる。しかし、答えを知らない神殿の神官たちからすれば、これほど難しい問題はないだろう。



「これがわからずに、撤退を余儀なくされた神官たちが大勢いたようです。いくら勇者だとはいえ、こんな知識を要求されるなんて――少し求めているものが高すぎると思います」


「で、これは答えても良いやつなのか?」



 文句を言っていたアルトに勇輝が問い掛けると、彼女が動きを止めて瞬きだけを繰り返した。

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