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異世界魔瞳探索記「あなたの世界は何色ですか?」~極彩色の光が見える魔眼を手に入れて、薬草採取から魔物討伐まで縦横無尽の大活躍~  作者: 一文字 心
魔王ならざる巨人と聖剣

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試練のダンジョンⅢ

 スケルトンの数は百体はいた。しかし、ソフィアの言った通り、鈍重極まりない動きでほとんど動かない的も同然。


 慌てずに、近い敵から順番に攻撃していけば、攻撃を食らうことなく倒すことができるほどに弱い。果たして、これを鍛錬に取り入れるのは有効なのか疑問が残る。



「それは自分がどれだけ強いかをわかっていないから言える言葉ですね。あなたの運動能力は、一般人のそれを遥かに凌駕しています。普通はスケルトンを身体強化のみで砕くだけでも大変なもの。それを百体、息も切らさずやり終えるのは、それこそ中堅以上の実力が無ければ無理です」


「お褒めに預かり光栄ですけど――この部屋、ヤバくないですか?」



 勇輝たちはスケルトンのいた部屋を通り抜け、次の階層に足を踏み入れていた。


 一階層ごとに一つの大きな空間がある。そこで様々な試練が勇者を待ち構えているというのだが、二階層では正方形のタイルが敷き詰められており、それ以外は何もないように見える。尤も、壁や天井は相変わらず洞窟の様相を呈しており、違和感しか感じられない


 しかし、勇輝の魔眼はその異常性をしっかりと見抜いていた。



「確か、罠の間でしたか? 恐らく、勇者が様々なダンジョンに潜ることも想定して、罠を見抜いたり躱したりできるようにと用意されているとか」


「……試しに、起動してみたいんだけど」


「即死する罠は無いらしいので、大丈夫だと思いますよ」



 アルトの言葉を聞いても、やはり罠ともなれば油断はできない。勇輝は心刀の鞘で明らかに床の下から壁の方へと光が伸びているタイルを押してみた。


 タイルの真上、勇輝の視界を右から左へと棒状のものが風切り音をともなって横切っていく。



「矢を放つ罠、ね。先がトリモチみたいになってるけど、身体強化していなかったら、絶対に痛いだろ……」


「ダンジョンでは死が隣り合わせです。それを『痛い』程度で学べるのならば、安い買い物でしょう」



 ソフィアはしれっと恐ろしいことを言い放つが、桜はそれを聞いて苦笑いを浮かべていた。



「た、確かにそうですけど、もしも勇者さんが一般人だったら、怪我とかしちゃいそうですよ?」



 勇者が必ずしも冒険者から選ばれるとは限らない。もしも戦ったことも魔法を使ったことも無い人が選ばれていたら、今のだけで大怪我をしておかしくはないはずだ。



「流石に星神様も、その辺りは考えて勇者候補を選定されているのでは? 生まれたばかりの赤ん坊を勇者にするとは、誰も考えないでしょうし、冒険者のように戦う力をある程度もっている人の中から選ばれるはずです。……多分」



 魔眼の中には入口から向こう側にある出口までうねりながらも、一続きの同じ色を放つタイルが見えていた。恐らく、それが罠の無いタイルなのだろう。


 勇輝はその最初のタイルに恐る恐る鞘で突き、何も起きないことを確認してから足を乗せる。体重をゆっくりと乗せて、半分以上が移ったところで一気に飛び乗った。



「……俺の魔眼で安全なタイルはわかるから、後をついて来てくれれば大丈夫だと思う」


「勇者はそんな便利な眼は持っていないでしょうから、実際はここでかなり時間を使うことになりそうですね」



 勇輝の後に桜、その後ろにアルト、ソフィアと続く。


 小さな靴音が反響し、罠のタイルを踏んだのではないかと誤認しそうになる中、一分と経たずに部屋の出口へと到達できた。



「さて、問題の三階層ですね。今のところ、三階層は仕掛けを解く知識や発想力が問われると言われていますが――」


「――調査隊が入った時は、『なぞかけ』を出されたようで、それが分からず撤退したとか」



 なぞかけ――すなわち、クイズを出されるということだろう。そうなって来ると、この世界の知識に疎い勇輝としては、突破できる自信がない。


 そう考えると、星神様とやらは冒険者のように知見が広く、遠くまで旅をする実力者を選んでいるという推測も、あながち間違いではないように思えた。

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