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調査開始Ⅱ

 ダンジョンの方はわからないことも多いということで、アルトは街の方の調査について話題を移していく。



「街の方に関しては、実質、街の案内になりそうですね。マックスさんたちを案内した際には特に何も見つかりませんでしたが、勇輝さんの魔眼や桜さんの異国の知識でわかることもあるでしょう」



 ファンメル王国で説明されたことと同じ内容がアルトの口から零れる。



「アルトたちの視点からで怪しいと思ったところはないのか?」


「むしろありすぎて困るという感じでしょうか。街の中には至る所に星神様を祀る像はもちろん、勇者や聖女を模した像もあります」



 当然と言えば当然の答えだ。星神を祀る国の中心地にして、聖女と勇者にまつわる話の原点。むしろ、無い方がおかしい。



「付け加えさせていただければ、像だけでなく壁画や本もあります。勇者に関係なくとも、昔からある噴水や遺跡も多数ありますので、調査する場所に困ることはありません」



 ソフィアが困り顔でため息をつく。


 ここの建物に辿り着くために緩やかとはいえ、坂道をずっと上がって来た。その中で見えた街の光景からすると、とてもではないが一日、二日で見て回ることなど不可能だろう。


 彼女がため息をつきたくなるのも理解できる。



「一応、確認ですが、俺たちが一週間後にファンメル王国に戻るというのは――」


「もちろん、存じ上げております。だからこそ、明日からはポーションを飲んででも街を巡っていただきますので、覚悟しておいてください」



 ソフィアの鋭い視線に、その台詞が冗談ではないことを察する。歩き疲れて筋肉痛になろうとも、無理矢理引きずり回される光景が頭の中に浮かんだ。


 魔物討伐やダンジョン探索の方が遥かに疲れるはずなのに、勇輝も桜も顔を引き攣らせることしかできない。



「ソフィア。あんまり、二人を脅すのもそこまでにして。そんな風に歩き回ったら、まずは私がダウンしそうだから」


「その時は、私が背負って行きますので」


「ぜっっっっっったいに、やだっ! 後で街の人たちに何て言われるかわかったものじゃないもの」



 勇輝たちに話す時とは違い、仲のいい友人と談笑するようなやり取りに思わず顔から力が抜けていく。


 微笑ましく見守っていると、アルトの顔が急にこちらへクルリと向けられた。



「とりあえず、明日は街を歩き回る。明後日か、その次の日にダンジョンの様子を見て、四日後は聖剣を抜けるかどうか確かめる。いいですね?」


「わ、わかった。そんなに意気込まなくても大丈夫だって」



 急に捲し立てるものだから、勇輝は両手で落ち着くようにアルトへジェスチャーをする。しかし、アルトは持っていた杖の柄を撫でながら笑みを浮かべた。


 今までの経験上、この種の笑みが自分にとってあまりよろしくない出来事の前兆であることは容易に予想ができた。



「それで? 二人の婚約に至るまでの恋バナ。教えてもらえますか?」



 身を乗り出して目を輝かせるアルトに、勇輝と桜は顔を見合わせる。


 そもそも、恋バナと言われても、意識し始めたのがいつなのか、お互いにじっくり話したことがないのでわからない。何となくは察していたのだが、想像で勝手に話すのも失礼だと、口籠ってしまう。



「もしや、お二人とも互いがいつから恋心を抱いていたとか、気付かれなかったけどこんなアプローチをしていたとか話したことが――ないのですか?」



 ソフィアは目を丸くしながら、問いかけて来る。それに勇輝たちが頷くと、黒騎士隊隊長をしている彼女とは思えないようなテンションで話し始めた。



「それはいけません。そういう仲になったからこそ、お互いの想いを伝えあうことが大切なんです。ぜひ、ここは私たちの前で気兼ねなく、過去のあれやこれやを語りつくしてください」


「いや、気兼ねするって」



 勇輝がツッコミを入れると、アルトも顔を立てに振って呆れたように注意を促す。



「そうよ。無理に聞くのは良くないです。あくまで、話せる範囲で、お願いをする立場ですから」


「いや、それでもダメだって」



 この後、アルトたちは標的を勇輝や桜に交互に移しつつ、話を聞こうと躍起になってしまった。それが中断したのは外からのノックの音。すなわち、夕食の呼び出しがかかるまで続いたのだった。

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